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11年越しのコンサート クミコさん「石巻は特別な場所」 公演直前、震災に遭遇

 東日本大震災後から継続的な被災地支援を行うシャンソン歌手のクミコさん(68)は8日、マルホンまきあーとテラスで、「わが麗しき歌物語Vol・5愛しかない時~石巻特別公演」を開いた。コンサートを控えた石巻市民会館の楽屋で震災に遭遇し、津波から避難した経験を持つクミコさんは「石巻は私にとって特別な場所。ここで歌えるのは感無量」と語り、11年越しで実現した石巻公演で、魂を揺さぶる圧巻の歌声を披露した。

 「11年間延期されたコンサート。皆さんと会え、打ち震えるような喜びです」とクミコさん。市民会館での公演はまぼろしとなったが、11年越しに石巻のステージに立った。

 第1部で「接吻」「わが麗しき恋物語」「INORI~祈り~」などヒット曲を次々と披露した。第2部は美輪明宏さんの「ボン・ボヤージュ」をはじめ、「愛の讃歌」、「百万本のバラ」など世界中で親しまれる名曲を圧巻の歌唱力で届けた。

圧巻の歌声を披露したクミコさん

 曲間で発災当時、市民会館の裏山に逃げたことやラジオから聞こえてきた「石巻・女川壊滅」などの情報に絶句したことを回顧。数日後、東京に戻ることができたが、しばらくうつ状態に陥ったことにも触れた。

 「私は東京で暖かい布団で寝られるのに石巻の皆は寒さに震えている。罪悪感で、申し訳なくて」と当時の心境を吐露。同年6月に再び石巻を訪れ、避難所や仮設住宅で歌を披露した際、住民は温かく迎えた。「逆に私の方が励まされた。私を救ってくれたのは石巻の皆さん」と感謝を口にした。

アンコールで石巻シャンソン愛好会と共演

 アンコールでは、石巻シャンソン愛好会の会員ら約20人も共にステージに立ち、フランスの反戦歌が原曲の40周年記念曲「愛しかない時」、坂本九さんの「上を向いて歩こう」の2曲を歌唱。ロシアに侵攻されたウクライナへの思いも寄せた。

 クミコさんは「ここで歌えたことは人生の大きな出来事。これからも石巻は私にとって特別な場所。皆さん本当にありがとう」と結び、鳴りやまない拍手がホールを包んだ。

 市は、クミコさんをいしのまき観光大使に任命しており、齋藤正美市長から任命状が手渡される一幕もあった。【山口紘史】

◆ クミコ 茨城県水戸市出身。早稲田大学卒業後、「世界歌謡祭」に日本代表で出演。昭和57年、銀座のシャンソン喫茶・銀巴里で歌手デビュー。平成22年にはNHK紅白歌合戦に初出場した。翌年3月11日に初めて訪れた石巻で震災に遭遇。以来、募金や仮設住宅での無料コンサートなど継続的な支援活動で寄り添い続ける。





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