見出し画像

目からウロコの川柳集 お魚の魅力 リズムに乗せて 著者は水産技術センター所長

 「ムキムキの 海の男が カキを剥き」「ババガレイ 煮付けなめたら だめだっちゃ」。魚介類の特徴や魅力を17文字に詠み込んだ川柳集「宮城発!お魚川柳」がおもしろい。作者の木立時雨(こだちしぐれ)こと千田康司さん(59)=石巻市在住=は、県水産技術総合センター所長で日本さかな検定1級を有する、魚介類を知り尽くした人だ。今年の全国豊かな海づくり大会主会場となる石巻で、川柳を通して海の生き物たちに関心が高まることを期待している。【平井美智子】

 「地元の魚をこよなく愛する水産人」を自称する千田さんが、同書を出版したのは5年前の平成28年3月。その前年に、知人に招かれて関西で講話をしたのがきっかけだった。

 まだ福島第一原発事故による水産物の風評被害が問題になっていた頃で、参加者の一人から「宮城の魚は絶対に食べない」といわれ、ショックを受けた。「魚好き人間としては、何とかしなければ」と一念発起。震災後に始めた川柳と写真、エッセイを〝魚介類〟という一つのテーマで組み合わせて、その魅力を伝える手段として川柳集を作った。

お魚川柳 千田さん 右向き

「魚食文化と川柳の楽しさの普及につながれば」と千田さん

 同書に登場する魚介類は約100種類。サンマやカキなどは複数あるが、川柳もほぼ同じ数で、1句ごとに解説のほか、特徴やエピソードなどに触れている。各ページの表情豊かな魚の写真は、執筆当時に仕事の関係でよく通った石巻魚市場で撮影したものがほとんどだ。

「メロウドを 玄人(くろうと)がする 一夜干し」
では「この柔らかい白身魚は一夜干しでうま味を凝縮させるに限る」とうんちくを傾け、
「カキ食えば 金になります 被災地の」
では、五七五のリズムに乗せて復興支援を呼び掛ける。子どもたちにも楽しんでもらおうと
「シラス飯 沖食べたきを 示すらし」
といった回文川柳もある。

 出版から5年、震災から10年が経ち、風評被害もなくなってきた。一方でサンマの激減、イワシの大漁など海の様子が変化。これまで石巻地方では見ない魚も店頭に並んでいる。

 地元の魚食文化に影響を与えることが懸念されるが、「魚種が変わっているからといって毛嫌いしないで、今獲れているものを味わってほしい」と千田さん。そして「川柳は海のように広く自由。ぜひ皆さんも魚で1句作ってはいかが」と川柳を通して多くの人が海に目を向けることを願っている。

 「宮城発!お魚川柳」は定価1400円(税別)。購入は新葉館出版(06-4259-3777)まで。


現在、石巻Days(石巻日日新聞)では掲載記事を原則無料で公開しています。正確な情報が、新型コロナウイルス感染拡大への対応に役立ち、地域の皆さんが少しでも早く、日常生活を取り戻していくことを願っております。



最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。皆様から頂くサポートは、さらなる有益なコンテンツの作成に役立たせていきます。引き続き、石巻日日新聞社のコンテンツをお楽しみください。