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「堤防と水辺空間」②課題 住民の参画欠かせず

石巻市には、旧北上川や中瀬のほか、北北上運河、雲雀野海岸など貴重な水辺空間が多く、古くから水運で栄えてきたことをうかがわせる。水辺空間を生かしたにぎわい作りは震災前からあった。平成23年2月策定の「いしのまき水辺の緑のプロムナード計画」もその一つ。川に親しみながら安全、快適に散策できる遊歩道の整備を目指したもの。現在は新たな河川堤防や先月改修工事を終えた北上川・運河交流館などを活用して推進していく方針だ。

 住民が川や海にこだわるのは、いにしえから水辺と共にまちを発展させてきた歴史があるからであり、石巻人の矜持とも言える。だからこそ河川堤防を作る際も地域の声を聞く協議は何度も慎重に行われた。結果、堤防から望む川沿いの景観はこれまでの石巻にはない見事なものになった。特に中央の堤防一体空間は石巻の新名所に位置付けても遜色ない。

 課題は堤防をどう活用し石巻の活性化につなげるか。またリピーター獲得へ、どうすれば「また足を運びたい」と思わせられるかだ。

 市から堤防一体空間のエリアマネジメント業務を受注する㈱街づくりまんぼう街づくり事業部の苅谷智大部長(36)は「堤防と水辺空間を『楽しい』が享受できる場にすることが大事。ただ川が美しい、きれいだけでなく、五感を使って『おいしい』『温かい』などの感覚がセットになれば、それは思い出に残る。観光客が再度足を運ぶ契機にもなる」と話す。

 現在、同事業部は堤防空間を使ったイベントを随時企画し、昨年はミニ音楽ライブや魚釣り体験、石ノ森萬画館の建物をスクリーンにした映画上映会などを実施。コロナ禍でも一定の人が集う催しとして成果を上げた。

 「ゆくゆくは堤防空間を起点に、萬画館やいしのまき元気市場、中瀬、市街地などを歩いて半日楽しめるようになれば理想」と苅谷さん。ただし「運営企画やアイデア出しなど、自分たちだけでは限界がある。堤防空間のよりよい利活用には地域住民の参画が不可欠」とし、ここで営業活動や催し企画を希望する事業者を募っていることも強調した。

 人の流れは地域活性につながり、その可能性を秘めているのが堤防空間。モノではなく、体験を通した「楽しさ」を創出できる環境がここに整っている。求められるのは地域の一層の連携とまちづくりに意欲関心のある住民が積極的に関わる気概だ。【山口紘史】





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