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「離岸流」気付かぬうちに沖へ 海水浴シーズン前に調査 宮城海保・野蒜海岸で

 本格的なレジャーシーズンを前に、遊泳中の事故につながる「離岸流」を広く知ってもらおうと、宮城海上保安部は11日、東松島市野蒜海岸で離岸流調査を報道公開した。海面着色剤を海に流してドローンで離岸流の発生ポイントを把握。100メートル間隔に沖合まで60メートルほど続く3本を特定した。昨年は海水浴場以外での事故が多発しており、同保安部は「自治体などで開設した海水浴場を利用してほしい」と呼び掛けた。

 離岸流は海岸に打ち寄せた波が沖に戻ろうとする時に発生する強い流れ。速さは最大秒速2メートル、幅10―30メートルと広い。岸から沖に向かい数10―数100メートルの長さで強い流速があり、一度流されると気が付かないうちに沖に流されてしまう。

 同じ場所で発生し続けるケースもあれば、気象条件や波高などで範囲や場所、本数が変わるほか、特に波高に比例して離岸流も強くなるという。

シーマーカーを投入し、離岸流を確認した

 同保安部の県内調査は令和2年以来。この日は、全国で離岸流の調査を行う長岡技術科学大学=新潟県=の犬飼直之准教授も加わった。犬飼准教授は前日から野蒜海岸を調査しており、「この海岸は震災後に堤防が整備されたことで、砕波位置がほぼ一定。離岸流は沖合60メートル付近から東に流れる」と同海岸におけるメカニズムを説明。調査に先立ち、仙台航空基地の機動救難士が海に入り、漂流者の救助訓練を披露。海上安全指導員の水上オートバイと連携し岸までの迅速な救助を披露した。

 調査では、黄色のシーマーカー(海面着色剤)を投入し、15分ほど波の行方を見守り、離岸流と思われる形跡をドローンの空撮映像で確認。この日は流れが比較的弱かったが、東南に向って伸びるマーカーの動きから離岸流を特定した。

 犬飼准教授は「海のあるところに必ず離岸流は発生している。それが波の高さによって強かったり、弱かったり。海水浴場でも離岸流はあるが、開設場所は波の穏やかな場所であり、沖に向かう力も弱い」とした。

 同保安部の笠原司交通課長は「離岸流があるから危ないではない。どこでも起きうるものであると知ってほしい。その上で安全に海を楽しむため、波の穏やかで事前に調査も行われている開設海水浴場を利用してほしい」と呼び掛け。離岸流に流された場合、決して陸に向って泳がず、海岸と並行に移動することで流れから脱出できるという。

 昨年、県内で起きた遊泳事故は5件で2人が死亡。今年も2件発生し、1人が犠牲となっている。いずれの事故も開設海水浴場以外で起きている。石巻地方では14日の野蒜地区を皮切りに、今年は震災後初めて全ての海水浴場が開設される。【横井康彦】





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