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野蒜の被災元地を活用 あそら農園がオープン イチゴ狩りで地域活性化

 東日本大震災の津波被害を受けた東松島市野蒜地区の被災元地を活用したイチゴ園「あそら農園」が11日、オープンした。6月初旬までイチゴ狩り(45分間食べ放題)を楽しむことができ、早くも地域内外から多くの親子が足を運び、甘くジューシーな粒を堪能していた。圃場責任者の鈴木隆介さん(41)は「野蒜地区を一大観光地にし、地域活性化に貢献したい」と語っていた。

 農園は、地区内の観光施設「奥松島クラブハウス」を運営するアークリンク(株)=東京都=のグループ会社、農業生産法人(株)アソラが開設。元々は大崎市鹿島台でイチゴ農園を開いていたが、令和元年10月の台風19号で浸水被害を受け、休業を余儀なくされていた。

 おととし3月にクラブハウスが開所したことを契機に「地域を盛り上げていこう」と野蒜地区での再開を決定。鹿島台から温室ハウスを移し、先週末、オープンにこぎ着けた。

おいしそうにイチゴを頬張り、笑顔を見せる子ども

 農園は奥松島運動公園体育館から南進し、東名運河の橋を渡った所で約20アールのビニールハウスを構える。温室内では甘みと酸味のバランスが良い「よつぼし」を中心に、コクのある「ベリーポップすず」、白い実が特徴の「初恋の香り」、圏域では珍しい「さつまおとめ」の4品種計約1万2千株を栽培。食べ放題の時間は45分間と比較的長く、1人1パックずつ好きなイチゴを詰めて持ち帰れるお土産も付く。

 オープン後最初の日曜の12日も多くの親子が訪れ、子どもたちはたわわに実った赤いイチゴを摘んでは口いっぱい頬張り、幸せそうな表情を浮かべた。宮城野区から家族と訪れた細尾虎ノ介君(9)は「甘さの中にちょっぴり酸味もあり、次々と食べられた」と笑顔を見せた。

 鈴木さんは「クラブハウスと共に地域と協同して、にぎわいを創出したい」と話していた。営業日は火、水、土、日曜。時間は午前10時―午後3時(最終入場2時まで)。料金は13―64歳2200円、65歳以上1900円、小学生1500円、未就学児1100円、3歳以下無料。問合せはクラブハウス(0225-98-8123)か鈴木さん(080-7172-3182)。

■点在する土地 活用は依然課題

 震災の爪痕と言われる「被災元地」の利活用は自治体共通の課題となっている。東松島市では被災元地計174ヘクタールのうち、142ヘクタールはあそら農園のような農業法人や民間企業に貸し付けるなど一定の活用がなされたが、残る約32ヘクタールは未利用のままという。

 その多くは虫食い状態で点在する住宅跡地であり、まとまった広さがある元地と比べて使い勝手が悪く、災害危険区域ゆえに制約もあることから、なかなか借り手がつかない状況だ。市復興政策課の担当者は「難しい課題だが、民間の活力や知恵も頂きながら、引き続き有効な活用法を模索していく」と話していた。【山口紘史】





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