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少ない医療機関に不安 旧市内東部地区 交通弱者の移動支援も

 石巻市東部の湊、渡波地区は東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた。避難道路や復興公営住宅が建ち、新市街地が形成されたが、依然として住民の災害に対する不安感は根強い。津波被害の少なかった稲井地区でも、特に山沿いの地域では土砂災害を危惧する声がある。いずれの地区も交通の利便性は増したが、西部に比べて医療機関が少ないなど生活利便性に劣り、地域格差が垣間見られる。

探る地域 課題②

避難計画との隔たり

 湊、渡波地区では国道398号に接続する県道240号が盛り土され、防潮堤機能を持つ都市計画道路が整備。旧北上川沿いには河川堤防が出来た。市は避難ビル機能を持つ復興公営住宅や防災備蓄機能も併せ持った津波避難タワーを建てたほか、渡波と稲井をトンネルでつなぐ津波避難道「渡波稲井線」も作り、「災害に強いまちづくり」を進めた。

 避難道は生活道として使われるが、発災時に円滑に機能するのか疑問の声もある。問題が露呈したのは津波注意報が出た今年3月の福島県沖地震発生時。渡波稲井線は渡波方面から稲井方面へ向かう車線が一時、渋滞で機能不全となった。

西部に比べ医療機関などが少ない渡波地区

 市は「原則徒歩で避難を」と呼び掛けているが、「車も津波から守りたい」という心理が働く住民が少なくない実情がある。渡波新沼の男性(62)は「海に近い津波避難タワーに逃げる人はほとんどいない。まして足腰の弱い高齢者が多く、車避難が主になるのは仕方ない。どうせ作るならこうなることを見越して幅員の広い避難道にしてほしかった」と話す。

 再選を目指す元職は「高齢者にとって住み良い地域になっていない。市は現場主義ではない」と主張。「一番の課題は西部との地域格差で、医療機関が少ないこと。東部には総合病院が一つもなく、個人医院も人口に対して少ない。せめて西部地区の病院に通いやすいよう公共交通機関や、バス乗車賃補助拡充などが必要」と訴える。

 被災した人々は内陸の防災集団移転団地などに移ったが、新旧住民のコミュニティー形成も依然課題。住民が流出した被災沿岸地域では人の少なさと高齢化ゆえ、自治会活動の継続も危ぶまれている。

つながりにテコ入れ

 北に位置する内陸の稲井地区は、国道398号石巻バイパス大瓜工区の開通で交通利便性が向上。特に南境はセイホクパーク石巻やマルホンまきあーとテラスなどがあり、いまや文化・スポーツの中心地。南境トンネルの先には三陸道石巻女川インターチェンジや石巻赤十字病院もあり、高い生活利便性から住宅地としても人気だ。

 一方、沼津や水沼、大瓜など山沿いの地域は少子高齢化と人口減少が顕著。近年は異常気象に伴う土砂災害への懸念も住民の間で強まっている。公共施設が点在する南境や新栄までは距離があり、万が一の際、交通弱者の高齢者は避難所までたどりつけるかどうか不安は拭えない。

 ある現職は「地域の持続には、住民同士のつながりと行政のコミュニティー支援が不可欠。高齢者の移動手段が課題であり、地区全体で地域活性や防災を考えていくべき」と提言した。【山口紘史】




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