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鎮魂の思い込めた観音像 石巻未来所蔵 8年かけた労作 「素晴らしい」歌手秋川さん感嘆

 「千の風になって」で知られるテノール歌手で彫刻家の顔も持つ秋川雅史さん(53)が10日、一般社団法人石巻未来=石巻市鹿又=が所蔵する木像の観音像「永寧(ようねい)観音」を見学した。古美術骨董(こっとう)の月刊誌「目の眼」の取材が目的であり、木像と対面した秋川さんは「素晴らしい」と感嘆の声をもらした。

 木像は高さ2.4メートルで幹回り4.3メートル、幅2.15メートルの樹齢約200年のクスノキの内部を彫り抜いた労作。クスノキは、造園業などを営む同市鹿又の(株)バンブーファクトリーの平塚宜治社長(71)が震災後、仙台市の材木店で仕入れた。友人に鎮魂の思いを込めた大木にふさわしい使い道を尋ねたところ、富山県砺波市の木彫り作家森田正行さん(69)を紹介され、観音像の制作を依頼した。

秋川さん観音像見学 (2)

観音像の前に立つ平塚社長(右)、作者の森田さん(中)と秋川さん

 森田さんは約8年かけて昨年夏ごろに完成させた。木像の存在を知った秋川さんが「ぜひ見たい」と熱望して今回の取材旅行が実現した。石巻市では一度ステージを務めたことがあるが、震災後に訪れたのは初めて。

 観音様の顔を下からのぞき込んだ秋川さんは、しばらく言葉を発せず、隅々まで目を凝らした。「素晴らしい。これだけ立派な木を彫れるのはうらやましい」と秋川さん。大木から彫り出していくというコンセプトに興味を抱いたそうで「姿勢、目線が見る人を見守ってくれているよう」と観音像に魅せられた様子。

秋川さん観音像見学 (1)

 秋川さんは、出身地の愛媛県西条市で有名なだんじり彫刻を見て育ち、いつか龍や獅子を彫りたいと思っていたという。40歳過ぎについた先生が仏師だったため、自然に仏像を彫るようになり「ハマった」そうだ。

 現在は年に2体ほど製作。知人からの依頼で名取市の禅寺・秀麓斎に仏像を奉納したこともある。今回の取材の成果は、6月発売の「目の眼」に掲載予定だ。

 石巻未来は観音像を安置するお堂を建設中で、クラウドファンディングで資金を募っている。完成後は、地域の人たちにお披露目した後、一般にも無料で開放するという。【本庄雅之】


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