我らが雨穴さん、ついに映画化！

　という訳で、早速みてきました。冒頭以外、ネタバレありでいきます。

結論（ネタバレなし）

　前半は丁寧なホラー映画で良作だが、後半はB級感が強くなり無理矢理感が出てくる。しかし、細かいことは置いておいて、あの「間取り」が立体化しただけでもう満足。

　これより先はネタバレ全開で行くので注意してください。

良かった点

人間ぶっ殺しハウス＆因習ハウスの立体化

　YouTube 動画で見た、書籍で見たあの「間取り」が映画クオリティで顕現したというだけでも感動です。しかも、安っぽいハリボテではなくて、ちゃんと質感のある住宅として。後半では因習ハウスも立体で出てきますが、こちらも昭和のジメジメ感が出てきて Good！（間取りはともかく、あんな不衛生な家屋に客人を泊めるな！）

　間取りミステリー的に、ここは外せないポイントだと思いますが、正直、ここをやってくれただけでもう百点です。

ホラー映画として丁寧

　要所要所でホラー要素（ジャンプスケア多めな気がしますが）や謎が出てきて話の緊張感が緩みませんし、間延びしそうなスーケンスはテンポよくスキップが入るので、見ていて心地よいです。前半は。

　また、俳優の演技も良かったです。特にヒロインの姉は、怯えた演技、洗脳された演技、終盤の不吉な演技など、さまざまなニュアンスを表現できていて上手いなと思いました。DJ松永は無味無臭でした。

因習村

　私は書籍をすでに読んでいるので話はすでにわかっていました。なので、後半をどう料理するかな、と思っていましたが、まさか出してくるとはね、因習村を。やっぱり暴走するカルト村人集団と燃える屋敷は最高や。

　YouTube 動画や原作の「しっとりとした」恐怖やミステリー感を味わいたい人には不満な点かもしれませんが、私は映画作品として見どころをつけるために、この判断は正解だったと思います。まあ、私は因習村大好き人間なので、無言で雨宮達の車を見送る村人達が出てきたあたりでもう体感 80 点ぐらいでした。

　ただ、あれだけキャストとセットを用意したんだから、その良さを引き出して欲しかったですね。ゲ謎を見習ってほしい。というか、後半は展開が雑すぎて……。まあ、そこら辺は悪かった点に書きます。

悪かった点

　丁寧さが感じられるのは前半までです。ざっくり言ってしまうと、後半からは因習村に赴き、手首切りマシーンの運命を課せられた男の子を救いにいく、という展開になるのですが、ここからだんだん話が雑になっていきます。

　敵の本拠地に向かって探検を始める雨宮達一行。いや、なぜ敵に囲まれている状況で行動を起こす！？　その後、絶対絶命になるのは目に見えています。案の定、誰かに殴られて気絶。目覚めに合わせてすべての経緯を説明してくれるヒロイン姉夫婦達。

　そして、村人達に捕まり、脱走する……というシーケンスが始まるのですが、村人達、捜索を諦めるの早すぎ！　高嶋政伸、銃撃つの遅すぎ！　動機を説明するヒマがあったら、さっさと引き金を引け！

　というように、雨宮サイド、村人サイドともに「いまそれをしている場合か」「説明をしているヒマがあるのか」というツッコミをせずにはいられない行動が続くので、悪い意味で邦画らしい間延び＆緊張感のなさが生じます。

　このように、後半は、勢いと雰囲気は好きですが、映画としてはちょっと……と思う部分が多かった点です。

ほか気になった点

栗原さんの仕事場に押しかける雨宮

　迷惑過ぎてわろた。

　会社は、プライベートなミステリー談義のために社員の給料とオフィスの賃料払っとるとちゃうんやぞ。

一族の目的は？

　カルトに支配されて因習を続ける村人達……と思いきや、最終的には「子供に手首を切らせる」という儀式の前提がなくなって、とにかく手首切りたいマンになっています。

　ヒロイン母も実はそのような異常な目的を持っていた……という不吉エンドが示唆されて映画は終わりますが、だったら「子供に手を汚させたくない」という葛藤はなんだったのか。最初からホームレスを仕入れて手首を大量生産すればよかったのでは……。どんでん返しを意識しすぎて、今までの話が台無しになっている感じがします。

便利過ぎる幻覚剤

　序盤で雨宮が遭遇する恐怖シーンは、実はヒロインの母による襲撃で、幻覚剤を使用されていたことがわかります。そうだとしたら、母は、成人男性一人を襲撃し、その後、雨宮邸を停電させ、雨宮邸に侵入し、更に薬物を注入させた、ということになります。特殊部隊かよ。

　あと、幻覚剤の定義や効用が曖昧なせいで、直前の恐怖シーンが現実なのか夢オチなのかわからずに混乱するという副作用がありました（幻覚剤だけに）。本家でお姉さんが別人のようになっているのも現実なのか夢オチなのかとガチで混乱しました。後半の話運びが混乱する、というのは上にも述べましたが、この幻覚剤によるなんちゃってインセプション効果のせいもあったと思います。

子供放置帰省？

　東京の家で男の子の姿が目撃されてしまうシーン。両親が本家に向かっている中で、残された赤ちゃんをあやすために男の子が出ていったという、実は心温まるシーン……え、乳幼児と少年を家に放置したまま遠出！？

　男の子が脱走するかもというのもありますが、そもそも一般論として、赤ちゃんの命が危ない！