出版界はどうだ

二階元幹事長の事務所が公開した20〜22年の間の政治資金収支報告書の中の「書籍代」について。

本当に恐ろしいニュースであるが、いや、もう日々恐ろしすぎるニュースが次々と飛びこんでくるから麻痺しているのか、

メディアももっと盛り上がってほしいものだが

出版というものの捻じ曲がりについて、これほど分かりやすいニュースもない。

何が恐ろしいかといえば、

・二階なんていう、お金を積んでやっとこさ議員になるような二流プレーヤーがあたかも素晴らしい政治家であるかのように書くゴーストライターによる自伝とか(そんな本はないかもしれないが)発行し放題であること
・そんな内容の本が、他の数多の良本の発刊のチャンスを奪うこと
・税金が原資なこと

恐ろしさのレイヤーが何層にも重なり合い向こうがもはや見えない。

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出版不況の中、本を出せるのはもはやお金を持っている人の道楽または広報誌となってしまったら。
ましてやそれが政治権力と結びつくとしたら、独裁制まっしぐらの世にも恐ろしい社会の到来である。
しかもそれは税金と来ている。

これがトップニュースにでもなってほしいくらいだ。現世をよく表している。

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出版社は立ち上げたい人が立ち上げて、出したい本を出す。右左上下も何もない。フェイクやヘイト本を出したって構わない。出版の自由は憲法でも保障されている。
日本国内の出版物が宗教団体系で染められることだってあり得る。
市民の力でどうにかなるなんてそこまでオプティミストではない。市場の善意なんて期待しないし出版社にそんなコンプライアンスの義務はない。
みんなが田中正造ではないし、みんなが福沢諭吉であってもそれはそれで不自然だ。

別に出版界隈だけ清く正しく✨なんて思っていない。逆に、内容は例え劣悪な本が存在しようと、全体を俯瞰して雑多であればそれが望ましい。本の内容はあくまで多様であってほしい、それが健全な言論界であろう。

だから、今回の二階元幹事長の件で言えば、私に恐ろしいと思わせたのは、本の内容というよりは本の出るシステムの方である。
世の中が好景気な時はそれなりにうまく回っていたシステムなんだと思う。本はたくさん売れるから政治家の力を借りずとも市民が出版界を支えられた。

しかし不景気に急激に細る中間層、内需縮小ゆえのアウトソーシング全振りで国内産業が衰え環境問題や円安などの風も相まって弱り目に祟り目の出版業である。

そこで政治家が初刷り1000万部買うから(発行して)だなんて甘言を耳にすればもちろん出版社は喜んで出版する。

コンプライアンスもへったくれもない。それが真実だ。

でも、それで良いんだろうか。
多様な出版を支えるのは民主主義である。
日本の弱点であり、不得手な部分である。
何十年後の出版界は果たしてどうなっているんだろうか。空恐ろしい未来が見える。

善き政治はおのれの限界を意識して、失せたる一匹の救ひを文学に期待する。が、悪しき政治は文学を動員しておのれにつかへしめ、文学者にもまた一匹の無視を強要する

福田恒存

自民党の二階俊博元幹事長の事務所は、2020~22年の二階氏の政治団体の政治資金収支報告書を訂正し、追加した「書籍代」計3472万円の内訳を14日に公表した。ノンフィクション作家、大下英治さんの著書などを数百冊から数千冊単位で購入していたことが明らかになった。同事務所が公表した文書によると、「政治資金の収支の記載漏れがあり、訂正した」としたうえで、書籍代の内訳について、銀行の振り込み明細などを添付して明らかにした。

 購入した書籍名、著者、冊数、購入金額は次の通り。敬称略。

 ▽冤罪、石井一、300冊、46万2000円▽グリーンの上の政治家たち、石井一、300冊、46万2000円▽つくられた最長政権、石井一、300冊、46万2000円▽Monthly Koron(月刊公論)2020年2月号、大仲吉一、2000冊、186万6000円▽月刊日本2020年8月号、3000冊、234万円▽二階俊博の政界戦国秘録⑤、大下英治、500冊、34万1000円▽二階俊博幹事長論、森田実、300冊、30万880円▽小池百合子の大義と共感、大下英治、3000冊、396万円▽内閣官房長官、大下英治、2000冊、156万8600円▽ナンバー2の美学 二階俊博の本心、大仲吉一、5000冊、1045万円▽地元メディアが見た二階俊博 力の源泉、中村栄三、3000冊、275万円▽最長幹事長、大下英治、3000冊、231万円▽政権奪取秘史 二階幹事長・菅総理と田中角栄、大下英治、3000冊、475万2000円▽新しい「日本の歩き方」、山谷えり子、1000冊、154万円▽自民党幹事長 二階俊博伝、大下英治、300冊、44万8800円▽内閣総理大臣(MdN新書)、大下英治、500冊、39万2150円▽自治体の元気印レシピ、松浪健四郎、200冊、31万7200円。

公表した文書によると、書籍購入に関して、一つ目のケースとして、「議員活動としての政策広報のための支出で、二階氏が推進する国土強靱(きょうじん)化、観光立国などの政策広報や政治活動を紹介することを目的として出版した書籍の費用」であり、「出版社(作家)より出版構想、最低買い取り数量を提案され購入した」と説明した。

 二つ目のケースとしては、「政策広報のため与野党の政治家や関係者より著書を紹介されまとめて購入した書籍の費用」だと記載した。「選挙区外の行政や議会関係者、その他、関連する政策を進める関係者」らに配布。出版記念会を開いて配布する予定もあったが、「新型コロナウイルス感染予防の観点から開催に至らなかった」としている。

毎日新聞WEB 2024/2/15

元朝日新聞で「AERA」編集長だったジャーナリストの浜田敬子氏が14日、テレビ朝日「羽鳥慎一 モーニングショー」に出演。二階俊博氏が自民党幹事長時代に、書籍代として3年で3500万円を計上したことについて、出版社側の事情を明かした。

 「私がAERAやっているときに、『現代の肖像』っていうルポルタージュで、ある政治家の方を厳しく書いたんです。でも『1000部買いたい』って言われたので、『あ、じゃあ買って下さるなら…』と」と政治家に本を1000部買ってもらった体験を語った。

 その上で「出版社側も今すごく経営が厳しいので、最低の買い取り数量というのを保証してもらえると、じゃあ、出しましょうかと。そうじゃないと、市販でどれくらい売れるか分からない本はなかなか出してくれない。そういう意味では、政治家が『1000部とか2000部買いますよ』と約束を最初にしてくれると、じゃあ、出しましょうかと、そういったケースがあるのも珍しくない」と語った。

2024/2/14デイリー

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