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会いたくて


指先に残る
涙と頬の感触

彼女と過ごした日々は
まだ想い出にならない

その日々の全ては
記憶の扉を開く事無く
常にテギョンと共にある


愛されたい
愛したい



それは子供の頃から
常に
自分の中に欠けていて
切望していたもの

愛は人を幸せにする
そう信じ
憧れてきた

けれども
愛は
愛する人を
苦しめる事もあるのだと
テギョンは知ってしまった

それは愛に不慣れな自分だからなのか

人を愛するという事を
自分がもっと理解できていたならば
何かが違っていたのだろうかと
テギョンは思う

そうすれば
あの日
あの胸が痛くなる涙を目にし
それを拭う事もなかったのか

そんな事を
繰り返し考える

答えは出ないのに




「テギョンさん
さっきの続きからやってみる?
それとも始めからやり直す?」

ヘッドフォンを手に
虚無を見つめていたテギョンを
ジェルミの声が現実に引き戻し

シヌのつま弾くギターの音や
ミナムが同じフレーズを繰り返し歌う
声も耳に届き始める


日々は流れ
多忙な状況が続いていた


スタジオではHEAVENconcertの
最終的な曲選考や
ミーティング
音合わせ作業が進められていた

HEAVENconcertまで
1ヶ月を切っていた


そんな超のつく多忙さの中
ふとテギョンだけがその時間から逸脱し
あの頃に佇んでいる瞬間がある事に
メンバーは気付いていた

テギョンらしくない
そんな光景を何度も目にしていた

けれども
誰もどうしたのかと問う事はなかった

ミニョがいなくなり
その居場所も
今何をしているのかも
誰も知る事ができなかったから


誰もがミニョを愛していて
大切に思っていたから

それがテギョンの気持ちを理解できる理由

だから誰もテギョンの留まる時間を
責める事をしなかった


それでも状況は許さない
本物のミナムを迎え
ミナムと築いてきたものを
新たに積み上げ直さなければならない


その日も
夜遅くまで
作業は続いた


日付が変わってしばらくして
一人
車を飛ばし
テギョンは宿所に戻る

シートベルトを外し
ふと見つめる助手席も
テギョンにとっては愛しい場所だった

シートベルトと格闘しながら
降りるから放してくれと
自分に訴えたミニョを思い出し
テギョンは微かに笑った

淋し気に

誕生日の残り5分を祝ってくれた場所

くっついた指先を外してやり
薬が目に入って大騒ぎした場所

手をつないでゆっくりと登った階段

ピアノ室

ミニョの部屋

テギョンの部屋


切なくて
胸が張り裂けそうになる

けれど
その苦しささえも
手放したくない


あいつも
こんな風に

自分の事を思い出しているのだろうか


そばにいる事が辛いと言った
ミニョにとっての今

それは彼女にとって
安らげるものになっているのだろうか


シャワーを浴び

ライティングテーブルに着くと
テギョンは五線紙に向かう


心は痛むのに

ミニョを想うと
音が浮かび
言葉があふれる


「会いたくて」

テギョンは五線紙に
そう記し

溢れる想いを
綴っていった


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この曲を聴く度に想い描くのは二人の物語でした
ミナムとなったミニョと過ごした一ヶ月で
愛を知ったテギョンさん
ミニョを手放して再会するまでの一ヶ月
テギョンさんの心はきっとずっとミニョの名を
叫んでいたのだろうな・・・と
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