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ちょっとしたお話を

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めくるめく妄想
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記事一覧

シェアハウス・comma 「白洲 彩絢 編」

この作品は、生活に寄り添った物語をとどける文芸誌『文活』1月号の無料公開作品です。定期運…

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掌編小説 | 小日向 都のやわらかな独歩

いったいこのまま いつまで 1人でいるつもりだろう  イヤフォンを通して脳内に流れ込むあ…

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掌編小説 | バクにあげます

 亡くなった父が教えてくれた。 「悪い夢を見た時は『この夢を、バクにあげます』って心の中…

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掌編小説 | 禁断の果実

 深夜1時の少し前、バイトから帰ると玄関に見慣れないハイヒールが置いてあった。母ちゃんが…

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きずあと  #2000字のドラマ

 その面接練習中、あたしの脳内はほとんど右足の踵に集中してたから、だから上手くいくはずな…

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掌編小説 | 鏡の中の子

 鏡の前に並ぶ、色とりどりのレオタードと前髪を引っ詰めたお団子頭。  睦(むつみ)はーー…

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掌編小説 | 永い息継ぎ

 雨の日のランチタイムは、やはり売上が芳しくない。PC画面に浮かぶ本部への報告シートに並んだ苦い数字は何度見返したところで桁が増えることはなく、溜息を細長く吐き出していると店の奥から冴木先生の賑やかな声が段々と近付いてくるのが聴こえた。  ・・・おはよざいまぁす、はよざぁっす、あ、上がり?おつーまたねぇ、おはよーす、シフト合うの久々じゃぁん。  キッチンからホールまで流れるように一通りの挨拶とコミュニケーションを終えた彼女が最後に辿り着くのは、店内入口近くのカウンターブー

掌編小説 | 浮く両足、浮かない片足

 やっぱりこの回鍋肉は塩辛い。美味しくも不味くもない780円の中華弁当を食べる手が止まる。…

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掌編小説 | 眠れぬ夜に塩をひと匙

「りんご」  定石通りはじめたその3文字には、1分も経たないうちに既読がつけられた。 「胡…

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掌編小説 | 春隣、或る日

・3月4日(木) 曇り  今日の歌:人魚/NOKKO 取手のついた口の広いガラス瓶にとぷとぷと水を…

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掌編小説 | インディアン・サマー

前日譚:世界のすべては3.24㎡ ・・・  小学4年生の時に出された国語の宿題は「あなたの名…

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掌編小説 | 世界のすべては3.24㎡

 小春ちゃんはいつも2畳あれば充分というほどぴったり隣にいて、僕の胴にほっそりとした左腕…

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掌編小説 | 橙色の箱

《 ストレージがいっぱいです。》  はいはい解ってます、ご親切にどうも。瞳子はスマホの液…

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掌編小説 | Signal

ねぇ、物事には相性ってものがあるじゃない。 白ごはんに、お味噌汁。 夏空と、甲子園。 終電間際の、帰りたくない。 じゃぁ、クリスマスイブには? チキン、シャンパン、フレンチ、プレゼント、ライトアップ、ケーキ・・・ ぐつぐつぐつぐつ。 灰汁を取る作業は間もなく終わってしまう。 所在なさげに黄金色が輝くグラスの水滴を拭う指先は、いま何を考えているのだろうか。 ひとつだけ、先にお伝えしてもいい? クリスマスイブに水炊き、って絶対間違いだと思うのよ。 -- 鶏、豆腐