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『Mouton』ある青年の自立と喪失を描いたフランス映画

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この映画はアルコール依存症の母が親権を剥奪される場面から始まる。面会の頻度に関する説明を受けて取り乱す母をよそに10代後半の青年は外でタバコを吸っている。その表情はまるで他人事を見ているかのようだ。彼はこれからどんな生活を送るのだろうか。場面が転換すると彼は母と離れて一人暮らしを始めたことが示される。シャワーから戻ってきた裸の姿はやせ細っている。虐待の影響なのだろうか。着替えた仕事着から飲食業に就いたことが見て取れる。行き先は地元の人に愛される海沿いのレストラン。不器用ながらも仕事を覚え、新しい仲間にも受け入れられ、新人ウェイトレスとも恋仲に。こうして母と二人だけの小さな世界から地域コミュニティの一員としての第一歩を踏み出すのだ。ところが幸せな日々が続くと思っていた矢先に悲劇が起きる。それをきっかけに青年は街から姿を消す。後半は彼がいなくなってからの仲間たちの暮らしを描く。仕事、セックス、結婚、子育て。青年がいなくなったからといって日常の営みが止まることはない。しかし”心のなかにぽっかり穴が空いた”という陳腐な言葉では表現できない、どこか生彩の欠いた日常が描かれていく。コミュニティの中で一番取るに足りないと思われているような存在でも、一度失われてしまうと得も言われぬ喪失感にさいなまれる。青年・ムートンが劇中でどんな悲劇に直面するのか。映画ポスターがそれを暗示している。2013年公開のフランス映画。

●作品情報 監督: Gilles Deroo, Marianne Pistone 上映時間:100分


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