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美味いコーヒーを出せば成功するのか?

"What I know about running coffee shops"という本をご存知だろうか?アイルランドを代表するスペシャルティコーヒーロースター「3fe」のオーナー、Colin Harmon(以下コリン)著作のスペシャルティコーヒーショップの経営方法について書かれた本である。

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原文を読み終わり、即座に訳すことを決めた。スペシャルティコーヒーで起業しようと思っている方、脱サラしてコーヒーショップを始めようと思っている方、全ての方に一度立ち止まって読んでいただきたい本だ。*現在は電子書籍のみ

『日本語出版に寄せて』にて私は出版理由をこう記している。

2018年の日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)の発表によると、輸入量に対するスペシャルティコーヒーの比率が10%を越え、名実ともに日本市場におけるスペシャルティコーヒーの存在感が増していると言えるでしょう。しかし、そのような華々しいニュースは何処吹く風、と言わんばかりに多くの店が資金繰りに苦しみ、中には開店して1年も経たずに閉店、または破産に追い込まれた、という厳しい現実も見え隠れしています。さらに、厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、平均所得以下の世帯が62.4%と1994年のピークを境に上昇の一途を辿り、益々国民生活に厳しさが増しています。つまり、中高価格帯のスペシャルティコーヒーを扱う事業者にとって、消費者の所得金額の減少とスペシャルティコーヒーの輸入量の増加とともに、更に厳しい生存競争が待ち構えている、という現実を直視する必要があるのです。

そう、スペシャルティコーヒーマーケットは順調に拡大し続けているが、コロナ禍もあいまって事業環境はさらに厳しくなりつつある。また参入障壁の低さから脱サラしてすぐに起業する方も多いし、私のインスタやTwitterのDMにも開業相談が途方もない量届く(勘弁してください…)

私は大学在学中から早稲田大学の社会人講座に参加したり、コンサルにてインターンをしていたこともあり、いわゆるPL/BSを読む習慣があった。個人的に決算書を読むのは好きだし、社外取締役で海外企業に参画する際にも決算書は必ず読むので、それは必須スキルである。

そもそも私の財務への関心は、父の会社を長らく見続けてきたからであった。父の会社「ハニー珈琲」(最近ECをリニューアルしたので見てね)は、幼少期の極貧時代はさておき、その後複数店舗経営しつつ、卸も積極的に行っていたこともあり、一見順調そうに見えた。しかし、実情は成長すればするほど現金が不足する大惨事であった。

順調に出店しているし、順調に販売量も伸びているのに何故だろう?と思ったことが財務への興味を膨らませた。結論父のようにガチでダイレクトトレードをやっている会社(ファッションでダイレクトトレードと言ってる会社ではなく、いわゆる自社でコンテナを作って先払いで購入する会社)は、キャッシュ先払いで一年分の在庫を購入する必要があるので、キャッシュコンバージョンサイクルがすこぶる悪いという訳だ。

海外では経営者同士で財務状況の話など積極的にするし、アドバイスを受けたりしたりすることが頻繁にあるが、なぜか日本ではタブー視されているような気がする。というか寧ろ、淹れ方を追求すれば道は開ける的な空気感さえ存在するので、中々開業に当たって相談できる相手は少ないだろう。

そこでコリンの本を訳せば良いじゃないかと思った訳で。コリンのキャリアのスタートは、クラブの片隅にある劣悪な環境下でスペシャルティコーヒーショップを開業したこと。最初のお客さんはたった16人。そこからアイルランドで最も有名なスペシャルティコーヒーショップとロースターを作り上げたのだ。

邦題は『カフェの経営について私が学んだこと』だが、全てはコリンの実体験を元に構成されている。物件の選び方含め、原価計算、販売戦略、起業したい人へのアドバイスなどなど。

もし将来的に独立開業したい、と思っている人はまずはこの本を読んでみてほしい。コリンの膨大な失敗と成功の数々がエッセンスとして凝縮されたこの本を読めば、冷静に開業判断できるはずだし、成功確率も上がるだろう。

最後にこの翻訳を手伝ってくれた村井さん、電子書籍化のやり取りをしてくれた室本トシさん、校正を手伝ってくれたコーヒー共和国のメンバーに心より感謝を。この本を通して、少しでも多くの人が、スペシャルティコーヒーショップを経営する上で必要なノウハウを身につけてくれたらと思う。

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