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認知症の方の微笑ましいエピソード

地球のおばちゃんは介護の仕事を25年やってきました。
施設でも在宅でもたくさんの認知症の方と関わりを持ちました。

世間では介護は大変と思われているようですが、チームで関わると孤独にならず微笑ましいと思える場面がたくさんあります。

とくに認知症の方はしっかりされてないので予想を上回る行為が多いです。印象に残った方7人を書いてみました。

Aさん:老人保健施設での朝食の場面
施設へ入居されて間もないおばあちゃんです。細身でフットワークが軽くシャキシャキと動けます。受け答えもそこそこできるので、ほんとに認知症?と思えるぐらいお世話がいりません。
朝食の時間、食堂に座っている全員に配膳のトレーを配りました。主食はロールパン。すると後ろの席のAさんがロールパンを握ってつかつかとやってきました。おしぼりを温めるウォーマ(空です)にパンをいれて、また席へ戻ります。しばらく座り再びウォーマへ。パンを出すと着席して食べ始めました。ウォーマがトースターの代わりなんですね。パンはぜんぜん温まってないのですが・・・。習慣なんですね、ウケてしまいました。

Bさん:老人保健施設にて
90歳を過ぎたおばあちゃん。押し車を使って施設内のどこへでも歩かれます。ある日転倒して足を骨折してしまいました。病院で手術。退院後はまた施設でリハビリを続けることになりました。医者からは「痛みがあるのでしばらくは動けないだろう」と報告がありました。そのつもりで安心していたら・・・Bさん初日から何事もなかったようにベッドから降りて押し車で歩き始めました。認知症のためか痛みを感じにくくなっているようす。痛みは脳で感じるのですね。おそるべき認知症。Bさんはぐんぐん回復しすごいスピードでよみがえりました。

Cさん:認知症グループホーム
89歳のおばあちゃん。いつも愛想がよく謙虚です。こだわりは「電気のつけっぱなし」と「おトイレの紙」です。昔は電気はすぐ消すし紙も貴重でした。Cさんはトイレに行くたびに「紙がないの」と探されます。トイレに紙があると伝えても理解できません。ティッシュやペーパータオルを見つけると、こっそり3枚ほど取って綺麗にたたみタンスの中に隠します。紙がたくさん積んであると安心なんですね。
トイレに何回も行きます。電気は自動センサーでスイッチはありません。トイレから出ると「電気消さんでもええの?」と必ず聞きます。「大丈夫勝手に消えます」と言うと「ああそうなのね」と返事。センサーの電気はまだがついているので「電気消さんでもええの?」とまた聞きます。1回のトイレで3回は聞かれます。ところが毎回新鮮なんです。初めて体験するようなさわやかな笑顔で聞きます。忘れるスピードがすごすぎる! 何度も聞かれるとイヤになりますが新鮮な笑顔に根負けしてしまいます。

Dさん:在宅にて
友人のおばあちゃん。三世代同居6人家族です。おばあちゃんの有名な話。子どもたちが遊びに行くとホウキを持って玄関前に立ち「帰れ帰れ、ひっくり返れ」と繰り返しながら掃除します。奇抜なパフォーマンスですね。
それから20年以上経過。認知症が進んだようで友人から新たなエピソードを聞きました。ある日部屋中に玉ねぎの臭いがするので、なんだろうと調べていたそうです。そしたらおばあちゃんが生の玉ねぎを食べながら布団をかぶっていました。布団をめくると、あお向けで涙だらけのおばあちゃんがいて家族で大笑いしたそうです。大家族なので一緒に笑えるのでしょうね。

Eさん:認知症グループホームにて
85歳のおばあちゃん。顔は老化でシワとシミだらけ。頬もあごもたるたるです。[ムンクの叫び」のシワとシミだらけバージョンとでもいいましょうか。(もちろん口に出して言ってませんよ)「Eさん何歳ですか?」と聞くと「38歳」にやーと笑って答えます。ちょっと不気味。じーと見つめるとカワイイ笑顔に見えたりしますが、38は無理です。

Fさん:在宅にて
男性70代後半。一人暮らしで身内もいません。介護認定が出たので初回面接に行きました。狭い部屋に敷きっぱなしの布団。布団から体を起こして面談してくれます。足元にいた私は布団の端が変に盛り上がっているのを見つけました。なんだろうとめくってみると・・・なんと! キノコでした。多くのお家を訪問しましたが、床からキノコが生えていたのはこれっきりです。

Gさん、老人保健施設にて
お金持ちのオシャレなおばあちゃん。毎日お化粧もかかしません。ところが手が震えるようになり思うように眉が描けなくなりました。それでもGさんは毎日描きます。形なんか気にしません。一本の線でガタガタに描いた眉。お顔を見るたび眉が目立ち注目してしまいます。一生懸命描いた眉ですが、心の中で笑ってしまうのでした。

以上、介護にまつわる微笑ましいエピソードでした。


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