データ活用は、飽きない程度に気楽にやりなよ

はじめに

本日は、平成最後の天皇誕生日です。
何事も誕生とは喜ばしいことです。データ活用に関するコミュニティ「nest」の誕生をお祝いする寄稿として、この日を選ばせていただきました。

データ活用 Advent Calendar 2018

nestでは、LTや大阪イベントの企画に参加させていただいたことで、僅かながらでも貢献できたのなら嬉しいです。コミュニティ活動はボランティアで、提供側にもユーザの声を別ユーザに直接届けられるというメリットがあるわけですが、参加者側からしても「やりたいことを好きにやらせてもらえる場」を提供してもらえて、十分ゲインがあるんですよね。

本寄稿のお題は「データ活用」ですが、どうしても固くなりがちなテーマなので、気楽に読み流せるようなタイトルにしています。
中身も適度に読み流してください :-P

「人生は長いが、飽きるのは早い」

最初に一つ、曲のご紹介。
いわゆるデータ活用とは一切関係ございませんが、いい曲ですのでBGMとして。再生を押したら読み進めてね。


この曲は、まず単純にかっこよいという点で優れていますが、詩が聴かせるという点で更に優れています。
人生は長いが、飽きるのは早い/当たり前にみんなそこにはいない」と言う歌詞は趣があるでしょう?

きっと、今盛り上がっている「データ活用」も、いずれ皆飽きてそこからほとんどの人がいなくなるはずです。だから「データ活用なんて、あまり根を詰めて考える必要はない。気楽にやればよい。」というのが本寄稿の趣旨になります。

「強い奴が勝つんじゃなくて、勝った奴が強い」

ところで、よく「強い奴が勝つんじゃなくて、勝った奴が強いんだ」という言い方をしますが、ことデータ活用に関しては特にそういう側面があろうと私は思っています。すなわち、「データ活用の上手な奴がビジネスに勝つ」んじゃなくて、「ビジネスに勝った奴がデータ活用の上手な奴」なんだと。

たとえば、私の場合、業務上のテーマは「今後、○○の製造ラインにおける生産性を20%向上させたいが、そのために行うべきアクションは何か?」という形で与えられます。さて、これをデータ活用で解決するには、どうしたらよいのでしょう?

…ん? なんで「データ活用する」が前提なの? そもそも「データ活用」って何かね?

「データ活用に精神論を持ち込む奴には近づかない」

みんながみんなそうではないと思うのですが、たまに見かけるのが「データ活用の時代だ! いま手元にあるデータをどう活用するか!? 24時間365日考え抜けばきっとビジネスに勝てる!」などといった、精神論的風潮。

個人的には、そんなことを言っている人からは、できるだけ距離を取るようにしています。もしこういう精神論を振りかざす人がいたら、今すぐ逃げて! まともにかかわると病みますよ!
(と言っても、なかなかすぐに逃げるのも難しい(※1)のですが…)

極端な例はともかく、データ活用と言われると、どうも「そのデータは、今手元にあるのか? 追加で取るとしたら、どう取れば早く安く取れるのか? 分析の方法は? …」みたいな話がすぐに出てくる印象がありますが、そもそもそれが最適なアプローチなのでしょうか?
データ分析をする前に、「データ分析をせずとも仕事を片付ける方法がないか?」を考えた方が良いのでは?

「おむつとビール、信じるか信じないかはあなた次第」

たまに、会社にある有象無象のデータをあれこれいじくり倒したらビジネスに勝つためのインサイトを得られた…という話が記事になっていたりします。私は、正直なところ、こういうのはほとんど都市伝説の類だと思っています。

私も、マーケティングはほんのさわりしか勉強していませんが、「おむつとビールの話」は知っています。たとえば、以下を参照。
http://www.itmedia.co.jp/im/articles/0504/18/news086.html

では、皆さんのビジネスにおいて「おむつとビール」で喩えられるような、「一見関係ないが、実は関連があって、しかも金銭に換算した時に効果が実感できて、ネクストアクションが実行可能なレベルのインサイト」という都合のいい話が本当にそこここに埋もれているのでしょうか?

確かに、「大量のデータからインサイトを得て『おむつとビール』的な一見関連性の低い項目の関連性を謳う」のは、なんだか「データ活用っぽさ」があるし、上手くいけば事例紹介で使えるようなカッコよさがあります。カッコいいから事例紹介されると言ってもいい。

しかし、実際には「現場でずっと作業してきた有識者の知識とセンス」で、大まかな方向性がまず示され、それをもとに必要なデータを深堀りしてみたら、割と当たり前の結論に気が付いた…みたいな地味な終わり方の方が圧倒的に多いのではないでしょうか?

ここで、本質に立ちかえって考えましょう。
今回やらないといけないことは「生産性向上」でなのであります。そのKPIは金銭だったり、労働時間だったりと、具体的な値にて示されなければなりませんが、とにかくそのKPIを達成するために必要なデータは(「おむつとビール」的な)一見関連性の低い項目である必要はないということです。当たり前の話なのですが。

データ活用(データ分析)という言葉が、いつからか「大量のデータから、人が気付かないような特徴を抽出し、優れたインサイト(気づき)を得る」みたいな意味を帯び始めたようで、それが担当者に無駄なプレッシャーを与えてはいないでしょうか? ビジネスに勝つために、あれやこれやと知恵を振り絞る必要はあるわけですが、その時にあるデータをどう活用しようが、要はパッと課題解決ができたら良いわけです。それがなんだか当たり前な結論であったとしても、それを今まで誰も気づいていない、あるいは気づかないふりをしていたのであれば、それを提示できただけでデータ活用ができたと言っていいのだと思います。

「じゃあ、おまえは何をするんや?」

さて、私の2019年における「データ活用」の取組ですが、そんな「おむつとビール」みたいな話とは別次元のことをやりたいと思っています。正直なところ、プラットフォーム開発とか、(いわゆる)データ分析を今から必死にやっても、技術者としての行きつく先がレッドオーシャンじゃ、なんだか浮かばれない。

それよりはまだほとんどの人が取り組んでいないところに歩を進めたい。すなわち、
・上で挙げたようなデータ活用が得意な人とはどういう人か?
・人に、データ活用をやってもらうための必要十分条件とは何か?
・必要となる知識は情報工学か? それともビジネス的知識か?
…などといった点、平たく言えば

「今のオッサン/オバハンが考えるようなデータ活用は、まるで魔法の杖のようなもので全然現実的じゃないから、そんなものは放っておいて、本質的なことを理解してる奴でやろうよ」

って話を実現して、その人らと楽しく暮らしていければよいなぁと思います。

具体的には「データ活用の打率を上げるためにメソトロジ」などについて、深掘りしたいと思っています。あまり良い答えがあるわけではないのですが、さしあたっては「STEM教育(※2)」という領域に目を向けています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/STEM%E6%95%99%E8%82%B2

STEM教育って、いわゆる「BIツールを使って、インサイトを得て、どうのこうの」という活動ではありませんから、人から見るとデータ活用という活動には見えないかもしれません。ですが、「データ活用が得意な人」「データ活用をやってもらうための必要十分条件」を洗い出すのには良い活動かなと思っています。なにより、今までの知識を生かしつつ、これまでやってこなかった領域に手を伸ばすことができるので、ワクワク感が大きい。

この活動に関しては、今すぐに仕事にするということではなく、まずは共感できる仲間を見つけ、会話をしてみたいと思っています。仲間さえ見つけられれば、手を動かせるようなイベントを実施することは、難しくないんじゃないかと思ってはいますが…(むしろ、仲間探しの方が難しいんじゃないかと)。

おわりに

元も子もないことを言うと、データ活用にしてもなんにしても、正直なところ「今は辛いかもしれないが、ここを乗り越えれば絶対に上手くいく。やり遂げることで、力がつく。」なんて嘘なのだろうと思っています。上手くいくときは根を詰めなくても上手くいくし、もしダメならビジネス上の成果には何一つならず、飲み屋の愚痴ネタが一つ増えるだけで終わります。

ただ、一方で、人生に無駄な経験など一つもないというのも真実だと強く思います。

要するに、「その人にとって良いことかどうか」と「今回のビジネスの成果がどうなるか」については独立の事象。なのだから、データ活用しなければならないなどと根を詰めずに、力抜いて気楽にやればよいのではないでしょうか(※3)。

気楽にやってビジネスが成功したら、それはきっと「データ活用に成功した」おかげなのですから。

脚注

(※1)日本の製造業では、このような考え方をする人が、特に多い気がします。下手をすれば、社長が言っていたりしますから。私はこの考え方が好きじゃないです。

(※2)STEMとは、Science, Technology, Engineering, Mathematics の頭文字だそうですが、最近だとこれに Art を加えた「STEAM」、あるいはRoboticsまで加えた「STREAM」という言い方をすることもあるんだそうで…なんともはや。

(※3)精神論信者にはしばしば誤解されますが、「気楽にやる」とは「手を抜く」ことではありません。ホームランバッターは1日に4ホーマー打つつもりで打席に立ちますが、実際に4タコになる日はあるのです。大事なことは、次の日もいつもと同じように打席に向かうことです。いつもと同じようにすれば、自ずとその人の技量の枠内に結果は収斂するからです。

課金してくれるととても嬉しいです。シェアしてもらっても嬉しいです。「いいね」も嬉しいですし、フォローも嬉しいです。要するに、どんなことでも嬉しいです。