娘と抹茶ムースと緑色のシミ
【夫婦間の緊張状態:ケース24】
(軽犯罪で捕らえられた容疑者が警察に余罪を追求される時には、こんな気持ちになるのではなかろうかという喩え話)
クリスマスイヴを目前に控えた先週末のこと、娘と二人だけで(ヨメや息子には秘密で)スイーツを食べた。
といってもササヤカなもので、コンビニで売ってるスイーツを、車の中で食べただけなんだけど。
でも、ちょいと失敗した。
帰宅して気づいたのだが、私は抹茶ムースを暗い車中でこぼしてしまったようだ。恥ずかしい話だが、セーターの胸元に緑色の目立つシミを作ってしまっていた。
まあ、そこまではいい。
問題は、それからだった。
ヨメにその、緑色のシミの対処について相談した時のこと、冷淡に言われたセリフがこれ。
「秘密で、いろいろやってもね、神様は見ているの。
そうやってね、悪事は後々バレるんだからね。
そのシミね。クリーニングに出しなさいよ。」
その時のヨメの瞳の奥に宿る閃光を、私は見逃さなかった。
セーターのシミはあくまで例であり、それをキッカケにもっと広範な意味のメッセージを伝えたいようだった。アイソーポスがイソップ寓話を通して、様々な教訓を伝えたかったように。
ヨメはそれだけ言い放つと、部屋を出て行ってしまった。私は一人で部屋に残り、その抹茶ムースの緑色のシミと向いあった。ヨメの見せた閃光の意味について考えながら…。私は、禅問答を受けた若者のように、底の見えない思考の渦の中で、しばらくの間、彷徨うこととなった。
(注)この話は、フィクションです。
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