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よく分かる授業はよい授業か?

よく分かる授業
 私の在職中でも、考えない子どもがだんだん増えてきたように感じていました。テスト問題でも分からないところは空白のままの子ども達が増えていました。もちろん分からないというのが理由ではありますが、実は、文章を読んだり、考えたりするのが面倒だったとのことでした。

 人は考えるときは、「おでこ」のすぐ後ろあたりにある前頭葉を使います。今までしたことがない、考えたことがないことを解決しなければならないときは、この前頭葉をフル稼働させることになるのですが、これが結構疲れます。受験や資格試験などで時間制限の中、全力で考え続け、ヘトヘトに疲れる経験をした方も多いのではないかと思います。やはり、脳みそも普段から筋トレみたいに繰り返し鍛えておかないと弱っていくのです。
 
 実は、学校ではよく分かる授業をしようとする中で、だんだん子ども達への負荷を減らしてきたのではないかと思います。もちろん、考えさせなければならない学習内容を簡単に教えることはしませんが、考え易いように丁寧に説明をしたり、理解しやすくなる教材を準備したり、考えさせる範囲を狭めたりしてきました。

 これは、子ども達を甘やかしていたのではなく、その時間内にクラスのすべての子ども達に理解させたい、その時間の目標を達成させたいという願いからです。ところが、よく分からない、理解できないという子どもはどうしても出てくるのですが、授業の終わりが近づくと賢い友だちや先生が分かりやすく、その時間のゴールを示してくれるのです。

 こんな流れが続くと、人間誰しも思うようになるわけです。「前頭葉をフル稼働させると疲れるから、あとで出てくるゴールが分かればいいか。まあ、分からんでもいいかも。」つまり、途中ではあまり思考せず、結論だけをインプットしようとする習慣が身に付くことになります。これは、意図的ではなく、無意識にそのようなクセが身に付いてくるのです。

考えない子ども達を増やしたのかな

 こんな学習のやり方を続けていると、教師がいくら頑張っても、子ども達が前頭葉を使う機会は、今後もどんどん減っていくことだろうと思います。

では、どうすればいいの?
 結論から言えば、筋トレのように普段から前頭葉をトレーニングする授業をする必要があります。それも中途半端ではなく、一コマの授業ほぼすべての時間を子ども達の思考で埋め尽くすのです。

 もちろん、授業ですので考える素材(学習の問題)は教師が示すことになりますが、何を考えるかという方向付けをしたら、教師の出番はそこで終わりです。あとは子どもの活動を見守るだけになります。なまじ口を挟むと子ども達が頼ってきますので、進捗状況を確認することはあっても、ヒントなどあげることはありません。

 教師の出した問題の意味が分からない、何をどのように考えればよいのか分からない子どもは当然いますので、4人のグループで問題の意図をシェアします。そこで、初めて問題の意味が分かる子どももいます。

グループ4人で粘り続ける

 これからあとの授業展開はもっと目を見張るものがあります。私の持っていた授業観が180度ひっくり返された思いがしました。

この授業を考案したのは、東京大学の佐藤学名誉教授です。「学びの共同体」と呼ばれているそうですが、国内で3000校以上の小中高等学校が取り入れており、世界でも多くの国で採用されています。もう25年も前から行われていたのに、私が知ったのは、恥ずかしながら昨年です。子どもの学力については釈然としない思いがずっとあったのですが、「学びの共同体」を知ってから、「これからの子ども達の学び方はこれだ!!」と頭がすっきりし、書籍を読み、実践されている方に話を聞いてきました。そんな折、曽於市の教育長が「曽於市の先生は曽於市で育てる」という新聞記事で「学びの共同体」の考え方を取り入れるということを知り、早速、曽於市教育委員会に2回ほど行き、話を伺ってきました。

 今回、授業のビデオを見せていただきながらご指導いただいたことで、これまでの疑問点が随分解消され、「すべての子どもが主人公となる学び」ということに確信が持てるようになりました。
 長くなりましたので、続きは次の記事に書くことにします。

 

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