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ミリしら物理探査#14 優決定と劣決定

 物理探査の最終的な目的は、観測値から地下構造を推定することです。このデータ解析のことを、インバージョン(逆解析)と読んでいます。観測値と地下構造のパラメータ(比抵抗分布や密度分布など)の関係は、様々な仮定を考慮して、最終的にはy=Axのような線型方程式に帰着します。ここで、yは観測値ベクトル、xは地下構造パラメータ、Aはヤコビアン(感度行列)となります。大変申し訳ありませんが、この辺りの文章の意味が理解できない人は、線形代数や最小二乗法を勉強してからお読みくださいm(_ _)m。

 これから推定しようとする地下構造パラメータの個数が、観測データの個数より多い場合は、優決定問題(overdetermined problem)といって、最小二乗法を使えば数値的に解くことができます。しかし、物理探査の多くの場合、観測データの個数が未知パラメータの個数を下回ります。これを劣決定問題(underdetermined problem)といいます。劣決定問題は、線型方程式中の式の個数が不足するので、そのままでは解けません。通常は、パラメータのノルムを最小化したり、パラメータ間に拘束条件を付ける等の工夫をして、数値的に解きます。

 最近、劣決定問題を解く新しい方法が登場しました。それがスパースモデリングです。スパースモデリングでは、観測値に影響を及ぼす未知パラメータの個数が少ない(ベクトルが疎である)ことを仮定します。最小二乗法ではL2ノルム(観測値と計算値との差の二乗の総和)の最小化を考えますが、スパースモデリングではL1ノルム(観測値と計算値との差の絶対値の総和)の最小化を考えます。

 スパースモデリングは、医療分野でのNMRイメージングや、天文学でのブラックホールのイメージング↓↓↓などに利用されています。

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