見出し画像

線虫の驚異的な潜在能力

線虫とは、線形動物門に属する動物の総称で、タイトル画のように基本的には細長い形をしています。英語で線虫はroundwormまたはnematodeと言います。これは線虫の断面が丸いからだそうです。線虫の大きさは、成虫でも長さは1ミリ程度なので、肉眼では観察することが難しい動物です。線虫には”虫”が付きますが、昆虫の仲間ではありません。しかし、昆虫と同じように脱皮します。

線虫の種類はこれまでに2万種以上が記載されていますが、地球上の様々な環境に適応して棲息しているので、実際には100万種かそれ以上いると考えられています。線虫は、地球上で最も繁栄している生物の一つだと言えます。そんな線虫が、シベリアの永久凍土から見つかりました。何とこの線虫は約4万6000年間も休眠状態にあったそうです。この線虫を蘇生させることに成功したとする論文が7月27日、科学誌PLOSジェネティクスに発表されました。

地下40mの永久凍土から見つかったこの線虫は、クリプトビオシスと呼ばれる休眠状態に入ることで厳しい環境を生き延びてきたと考えられています。クリプトビオシスは、クマムシなどの動物が乾燥などの厳しい環境に対して、活動を停止する無代謝状態のことで、乾眠かんみんとも言います。乾眠していた動物は、水分などが供給されると復活して活動を再開します。恐るべき生命力です。

この線虫の仲間が、最近テレビCMに出ています。そのCMは、線虫によってがんの診断をするN-NOSEという検査キットのCMです。N-NOSEは、人間の尿を採取して、線虫にニオイを嗅がせるというものです。

従来のガン診断は、分析機器によって行われてきたため、高感度と低コストを両立するのが困難でした。その問題を解決したのが、生物を使った生物診断です。このガン診断法では、ガン細胞から分泌される特殊な化学物質を高感度で検出できる(嗅ぎ分ける)線虫を選んだことで、高感度と低コストを両立させています。驚異的な生命力を持つ線虫は、医療分野での活躍が期待されています。

N-NOSEのマスコットキャラクター


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?