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『論文』というもの。

論文とは、学問の研究成果などのあるテーマについて論理的な手法で書き記した文章のことを指します。論文ほどではないにしろ、あるテーマについて論述する小規模な論文の一つの形式として小論文というものもあります。これらの学術論文の書き方のことをアカデミック・ライティングといい、これも一つの研究分野です。

学術論文には、いくつか種類があります。学会や学術雑誌、文科系と理科系の別により用語にかなりの違いがありますが、主に理科系の場合には次のような分類が一般的です。通常、論文といった場合には、ジャーナル、レター、レビューを指します。この他にも、論文に準じた扱いのプロシーディングスというのもあります。

ジャーナル(Journal)は、論文の代表的な形式で、投稿された論文は査読を経て学術雑誌に掲載されます。狭義での論文は、学術雑誌に掲載されるジャーナルを指します。レター(Letter)は、”手紙”のことではなく、比較的短い形式の論文を指します。レターもジャーナルと同様に査読を経て学術雑誌に掲載されますが、速報性が問われるのが特徴です。レビュー(Review)は、ジャーナルやレターのような新規の研究ではなく、ある分野の”過去の研究結果をまとめた”形式の論文を指します。”おまとめサイト”のようなレビュー論文にはオリジナリティはありませんが、それまでの研究の経緯(歴史)が載っているので、その分野の研究を始めた人にとっては、役に立つ有用な論文となります。プロシーディングス(Proceedings)は、年に1-2回開催される学会の講演のための講演要旨集です。アメリカやヨーロッパの由緒正しい国際学会では、講演要旨にも査読が付くので、これらの講演要旨は論文に準じた扱いを受けます。

学術論文が正式に世に出るかどうかは、査読によって判断されます。学術雑誌に掲載される論文の多くは、この査読によって研究内容が判断されます。研究者の業績評価では、査読のある論文の数がモノをいうので、研究者にとって査読は死活問題です。

一般的に査読制度とは、著者には匿名の査読者によって論文の内容について審査を行い、1)掲載(アクセプト)、2)修正後に掲載、3)再査読、4)掲載拒否(リジェクト)などの判定を行うものです。私は仕事上、これらの全てを査読者としても論文投稿者としても経験しています。通常は、一度で査読をパスすることは無いので、何度かの修正を経て学術雑誌に掲載することになります。その場合は、初版の投稿から掲載までに、最低でも数か月はかかります。場合によっては、数年を要することさえあります。

査読制度は、投稿論文の中から一定水準のものを抽出するには有効です。しかし、論文の優劣に絶対的な基準は無いため、一定水準の論文が選定された後は査読者と論文の相性によって採択の可否が左右される場合もあります。このようなことはたまに起こります。研究分野が狭いと、研究者の人数が限定されます。その場合、競合するライバルが査読者となる場合もあるのです。私も過去数回、”名前が推理できる”匿名査読者によって、何度も駄目出しされた経験があります。

研究者も人の子、他人に意地悪する人も一定割合でいます。しかし、論文が投稿できる学術雑誌は一つではないので、論文がある雑誌に掲載拒否されても、別の学術雑誌では掲載されるという場合もあります。研究には忍耐が必要ですが、研究成果が出た後でも、査読制度という忍耐を強いるハードルが待ち構えています。

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