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原は”バル/ハル”と読みます。

野原のはらはらっぱなど、『原』は一般的に本州ではハラワラと読みます。しかし、私が住んでいる九州では、原をバルまたはハルと読む地名が多いのです。必ずバルやハルと読むわけではないのですが、昔からある地名では、そのように読む確率が高いのです。

表記違いによる重複や駅名などを除いた結果、全国にはバルやハルと読む地名が99ヶ所あり、そのうち何と97ヶ所が九州・沖縄だそうです。こうなると、九州以外の二ヶ所の方が気になります。この中でも、福岡県や大分県にこのような地名が多く、福岡県(27ヶ所)と大分県(24ヶ所)が1位と2位という順位になっています。ちなみに、福岡の地名は次の通りです。

飯原(いいばる)・荷原(いないばる)・柿原(かきばる)・春日原(かすがばる)・上原(かみはる)・九郎原(くろうばる)・黒原(くろばる)・郷原(ごうばる)・笹原(ささばる)・塩原(しおばる)・白木原(しらきばる)・新田原(しんでんばる)・陣の原(じんのはる)・新原(しんばる)・太郎原(だいろばる)・茶屋の原(ちゃやのはる)・唐原(とうのはる)・塔原(とうのはる)・道原(どうばる)・原(はる)・檜原(ひばる)・平原(ひらばる)・前原(まえばる)・女原(みょうばる)・屋形原(やかたばる)・夕原(ゆうばる)・柚須原(ゆすばる)

この中には、九州大学の筑紫キャンパスがある春日原や、伊都キャンパスの一部である旧・前原市(現在は糸島市)などが含まれています。

ところでバルやマルの語源は何なのでしょうか。諸説あるようなのですが、私なりに同意できる説を一つ紹介します。韓国語には「村、部落、里、郷」という意味の”マウル”という地名接尾語があります。例としては韓国の『セマウル号』という特急列車です。このセマウルは、”新しい村”という意味です。マウルは、「~村」の意味で使われています。これから紹介する説は、このマウルがバル/ハルに変化したとする説です。

北部九州の地名には、原(バル)と同じく、丸(マル)という地名が数多くあります。例えば太郎丸たろうまる五郎丸ごろうまる田主丸たぬしまるなどがそうです。この説では、バルマルは同語源で、マウルマル(丸)⇒バルハル(原)という変化をした考えています。

地名とは全く関係ないのですが、小便を排泄する行為を古語では”マル”と言います。いわゆるオマル(赤ちゃん用の便器)のマルです。うちの田舎の方言には、マルという動詞が残っていて、マルから変化したバルという動詞も頻繁に使われます。”オシッコをする”ことは”オシッコをバル(またはマル)”と表現します。

ヒョッとっすると、ムラとオシッコは関係があるのかもしれません。小さな共同体(コミュニティ)であれば、トイレの場所は共通なはずです。もし、ムラとオシッコの関係が明らかになれば、言語学的/文化人類学的に”ものすごい発見”かもしれません。

マウルからマルへの発音変化の証拠は微妙ですが、マルからバルへの発音変化は、方言としての証拠が残っているので、言語学的にも問題ないようです(?)。地名を考えると、歴史的な人の移動経路が浮かび上がってきます。こんな妄想も、素人には許される楽しい思考実験です。

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