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攻めて行こ~ぜ! 石油の強制回収法

地球上に存在する原油の埋蔵量のうち、”経済的に採算が取れると判断された油田の埋蔵量”を可採埋蔵量といいます。また可採埋蔵量を1年間の産油量で割ったものを可採年数といいます。世界の石油確認埋蔵量は、2020年末時点で1兆7,324億バレルなので、これを2020年の石油生産量で割った可採年数は53.5年となります。

私も経験した1970年代の石油危機(オイルショック)時には、石油資源の枯渇が懸念され、石油に代わる代替エネルギーの開発に拍車がかかりました。この頃に集中して研究されたのが地熱発電です。石油の可採年数は、私が大学生の頃は35年程度と言われていました。しかし、石油の回収率の向上や新たな石油資源の発見によって、1980年代以降は40年程度の可採年数を維持し続けています。

意外かもしれませんが、世界最大の確認埋蔵量を有するのはベネズエラです。長期間1位だったサウジアラビアは、2010年以降は2位になっています。ベネズエラの確認埋蔵量は世界全体の17.5%を占めています。2位のサウジアラビアは世界シェア17.2%、3位はカナダでシェア9.7%です。ベネズエラやカナダのシェアが高いのは、オリノコタールやオイルサンドと呼ばれる超重質油のお陰です。

国別では先の通りですが、地域別でみると、サウジアラビアにイラン、イラク、クウェート、アラブ首長国連邦などを含めると、世界全体の原油確認埋蔵量の約半分を中東産油国が占めています。

石油の可採年数の維持に貢献しているのが、増進回収法(EOR; Enhanced Oil Recovery)です。油田が発見されても、全ての石油が回収できるわけではありません。石油の回収には次の3段階があります。

一次回収:貯留層が持つエネルギーで自噴し生産を行う
二次回収:油層に水やガスなどを圧入し原油を押し出す、坑内にポンプを設置し機械的に汲み上げる
三次回収:岩石や地層流体の物理・化学的特性を変化させ、地下に残る原油を回収する

https://www.japex.co.jp/technology/research/eor/より一部抜粋

一次回収時点の回収率は、地下にある原油の量全体の30%にも達しないといわれています。二次回収で回収率は40%程度に上昇しますが、もったいないことに地下には60~70%の原油が残されています。これからさらに回収率を上げるための三次回収の技術が、EORと呼ばれていて、多くの研究機関や石油開発企業で行われています。

EORには、〇〇攻法こうほうというように、”攻める”という字が入った各種の方法が存在します。水攻法すいこうほうは、油層に水を圧入することで人工的に排油エネルギーを付与して生産レートを維持し、究極採収率を向上させる方法です。また火攻法かこうほうは、地表から空気を送り込みながら油層に点火して,油層の油の一部を燃焼させ,油層温度の上昇と油層圧力の上昇により油層から坑井への油の移動を容易にする方法です。

この他には、二酸化炭素や高圧天然ガスを圧入するミシブル攻法や、界面活性剤など薬品を圧入するケミカル攻法などがあります。この2つの方法は、石油の粘性と界面張力を低下させて流動性を高めることを目的としています。

攻めていこ~ぜ♪ 石油の強制回収法。

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