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忘却と記憶について

忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ」というナレーションで始まるのは、大ヒットしたラジオドラマ『君の名は』です。このドラマの原作は、菊田一夫さんの「君の名は」で、戦火の中で巡り合った男女が、愛し合いながらも擦れ違いの運命に翻弄されるというストーリーです。このドラマでは、”諦めきれない/忘れられない”という”忘却”がメインテーマになっています。

最愛の人との別れなどの辛い思い出は、忘れることができるなら、どんなに楽でしょうか。しかし、辛い思い出ほど忘れることはできません。その反対に、覚えておきたい重要なことでも、中々覚えられずに、すぐに忘れてしまいます。年齢を重ねた今では、より一層そのように感じます。

今でこそ、記憶力がかなり落ちましたが、昔は記憶力には自信を持っていました。日本史の年号を覚えるのは、好きではありませんでしたが、苦ではありませんでした。人の名前も、かなりよく覚えていたつもりです。しかし、今では全くダメです。そもそも記憶しようとする気力が湧きません。

記憶には、大きく分けて感覚記憶短期記憶長期記憶という3つの記憶パターンがあります。感覚記憶は、皮膚などの感覚器官から送られてきた刺激の情報をその瞬間(0-2秒)だけ保持する記憶です。次に、短期記憶は、一時的に情報を保持する記憶で、試験勉強の一夜漬けなどがこれに相当します。最後の長期記憶、比較的長期に情報を保存することが出来る記憶です。この長期記憶で保持された情報は、ほとんど忘れられることがありません。

重要な情報は、いつまでも忘れずに記憶に留めたいのですが、新規の情報を覚えるためにはかなりの努力が必要です。記憶と言えば出てくるのは、お馴染みの『エビングハウスの忘却曲線』です。この曲線の横軸は時間で、縦軸は時間の節約率です。節約率とは、忘れた知識を再び記憶しようとした場合に、当初と比べて『どれくらい時間を節約できているか?』を表す数値です。少しわかり難いのですが、1時間後の44%という節約率は、1回目の記憶にかかった時間に比べると、2回目の記憶時間は44%節約できたことを意味しています。

エビングハウスの忘却曲線

この曲線から言えることは、出来るだけ早い時間に復習すれば、覚えるまでに時間がかからないということです。しかし、100%記憶することが困難な状態では、この曲線が使えません。また、これは”若い人用の曲線”であって、老人ではもっと急激に減衰する曲線になるでしょう。

オリジナルのエビングハウス曲線は、時間依存の関数としてf(t)のように表されていますが、年齢(y)も考慮した”修正エビングハウス曲線”f(y, t)というのが作れそうです。誰かつくってくれないかなぁ。

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