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試験監督の思い出

ポンコツな私ですが、長年大学に勤めているせいで、大学入試の試験監督は数多く経験しました。さすがに最近のことは書けないので、30年以上前のことを書こうと思います。

その当時は、”試験監督”と”監督補助”という名称があり、”試験監督”には年配の先生が、監督補助には比較的若い先生が割り振られていました。その試験会場は比較的大きくて、試験監督の先生と監督補助の先生が私を含めて3名いました。

監督補助の私が担当したのは、工学部を受験する学生さん対象の試験室でした。誰でも同じだと思いますが、試験は緊張します。ましてや、今後の人生をも左右し兼ねない大学入試となれば、緊張感は想像以上です。

最初の受験科目で、いきなりトラブルが発生しました。緊張のあまり、受験生が過呼吸を起こしたのでした。近くにいた私が担当したのですが、顔は真っ青でハーハーと粗い呼吸をしていました。「医務室に行きますか?」と聞くと「はい」と言う弱々しい返事がありました。

私が肩を貸して教室の出口まで進み、会場の外に控えていた会場係の職員に引き渡したときに、その学生が絞り出すような声で言いました。「ぼ、ぼくはもう駄目でしょうか?」。そんなことを私に聞かれても、答えようがありません。私は「医務室で休憩すれば体調が戻って、試験会場に戻れるかもしれないよ。まずは落ち着こう」と言うしかありませんでした。

その後、15分くらいしたら体調が回復したようで、その学生さんは試験会場に戻ってきました。その時の顔は、何かが吹っ切れたような清々しい顔をしていました。ただし、その学生さんが合格したかどうかはわかりません。

私もかなり緊張する方でしたが、過呼吸になるほどではありませんでした。いまはかなり図々しくなって、多少の事では動じなくなりました。良いことなのか?、悪い事なのか?。

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