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『ヒドラ』の話

『ヒドラ』と聞いて、何を思い浮かべますか?。ウルトラマンの怪獣、ギリシャ神話の怪物、それとも小さな刺胞動物でしょうか?。

昭和に育ったウルトラマン世代なら、 伊豆・大室山に出現する高原竜・ヒドラを思い出すでしょう。このヒドラは、ギリシャ神話に出てくるグリフォンみたいな翼を持った怪獣で、口から高熱火炎を出したり、素早い動きでウルトラマンのスペシウム光線を回避したりと、ウルトラマンを苦しめます。しかしこのヒドラの正体は・・・、というストーリーです。

高原竜ヒドラ

神話好きなら、怪物・ヒドラ(ヒュドラ)を思い出すかもしれません。このヒドラは、ギリシア神話を代表する怪物の1つで、勇者・ヘラクレスによって退治されました。これはヘラクレスの12の功業の1つとして知られています。ちなみにアガサ・クリスティの小説に出てくる名探偵・エルキュール・ポアロのファーストネームであるエルキュールは、ヘラクレスのフランス語読みです。ヒドラは巨大な胴体に、9つの首を持つ大蛇の姿をしていますが、首の数には諸説あって、50や100あるともいわれています。

日本にも九頭竜くずりゅうと呼ばれる9つの頭を持った竜の伝説があります。寛平元年(889年)、九つの頭を持った龍が川に現れました。これが現在の九頭竜川です。この川は福井県の嶺北地方を流れる一級河川です。ところで、頭が多い大蛇に『ヤマタノオロチ』がいます。ヤマタノオロチは8つの頭と考えられていますし、古事記や日本書紀にもそのように書かれています。しかし、首と首の付け根を”マタ”と考えれば、八股ヤマタなので、頭は9つなのではないでしょうか?。そうすると、ヤマタノオロチ=九頭竜と解釈できるかもしれません。

ヒドラと戦うヘラクレス

生物系の研究者や理科の先生なら、タイトル画のような刺胞動物・ヒドラを思い出すでしょう。このヒドラは、刺胞動物のうちヒドロ虫綱花クラゲ目ヒドラ科に属する淡水産の無脊椎動物の総称です。ヒドラ科の動物は、細長い体に長い触手を持つ、小さくて目立たない動物です。これらは群体を作らず、浅い池の水草の上などに生息しています。ヒドラは飼育が容易なので、発生生物学の分野では、細胞分化のモデル生物として研究に利用されています。

ヒドラは原始的な神経系を持つ生物で、神経環というリング状の神経組織を持っています。この神経環は脳の原型ではないかと考えられています。ヒドラは単純な生物ですが、生物の神経系、ひいては生物の脳の進化を解明できるかもしれない、貴重な生物なのです。

2022年のノーベル生理学医学賞は、絶滅した人類の遺伝情報を解析する技術を確立し、人類の進化に関する研究で大きな貢献をした、スバンテ・ペーボ博士が受賞しました。今回は”人類の進化”に光が当たりましたが、いつか”脳の進化”に光が当たる時が来るかもしれません。

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