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Googleと地熱発電

Googleが世界初の技術を使った地熱発電所を稼働開始したというネットニュースを読みました。あまり知られていませんが、アメリカは世界でNo.1の地熱発電大国でもあります。アメリカの西海岸側には、太平洋プレートが北米プレートに沈み込んでいることもあり、アメリカ西部は地熱活動が活発です。

Googleは、ネット検索大手の巨大企業ですが、”2030年までに100%カーボンフリー電力での運営を実現する”との目標を掲げているそうです。そのGoogleが、2023年11月28日に、『強化地熱システム』を採用した地熱発電所の運転をアメリカ・ネバダ州で開始したそうです。この”地熱強化システム”は、Enhanced Geothermal System (EGS)を直訳した名称ですが、地熱の分野では略称のEGSが一般的です。

このEGSは、新しい方式のように書かれていますが、実はそうではありません。その昔、高温岩体(Hot Dry Rock; HDR)発電と呼ばれていたものと同じものです。日本でも、30年以上前から電力中央研究所を主体として研究が進められていました。主に東北地方で研究が続けられ、上記の噴出試験までには辿り着きましたが、商業的な発電には至りませんでした。

この日本でのプロジェクトが実施されていた期間には、私たちの研究室からも毎年のように東北の実験場に通っていました。我々は、水圧破砕によって地下にできる人工亀裂のモニタリングが、主な目的でした。我々は電気探査(流体流動電位法)による地下亀裂のモニタリング技術の研究開発を実施していました。

この技術はその後、原子力発電の廃止に踏み切ったドイツなどで研究されていましたが、坑井の掘削時に発生した地震のために、プロジェクトが中止になってしまいました。電力中央研究所では、オーストラリアでも基礎実験を継続していたようですが、その後のことはあまりよく知りません。

アメリカ・ネバダ州のEGSを用いた地熱発電所の稼働は、世界初とのことらしいです。ただし、これはGoogle単独の成果ではなく、地熱発電のスタートアップ・Fervo Energy社と共同で実施したプロジェクトです。ただし、この成功も想定通りにうまく行ったわけではなさそうです。当初の目的より、かなり少ない発電量に留まっています。

日本やドイツでEGS発電が成功しなかった理由は、”人工亀裂をつくる掘削技術”にあったのではないかと、個人的には思っています。アメリカのスタートアップ企業が成功?したのは、アメリカ国内のシェールガス開発で培った技術が存在したからだと睨んでいます。

それまで難しかった技術が、何かのブレークスルーで急に実現する場合があります。アメリカのEGS発電は、その好例かもしれません。

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