「『不倫』の『倫』ってなんやろね。」
彼女は、事を終えた後、服をまとうより早く、メガネをかけて、ベッドでそうつぶやいた。
「・・・倫理っていうよね・・。」
「うん・・。」
メガネをかけたとたんに、彼女は哲学的になる。
彼女の言い分は、メガネを取った自分は本当の裸なのだ。
それがどんな意味かはわからないが、服を着ない自分より、メガネをつけていない自分の方が恥ずかしいんだそうだ。
「倫」と書いて「みち」とも読む。
「にんべんがついているから、”ひとのみち”という意味なのかなぁ。」
「様々な、あたりまえの道すじ・・・って言うことなんだろう。」
「じゃあ、それがないよって、事なんか。」
「まぁ、そうなるかな・・。」
「・・・そっか、・・せやね。」
彼女は、背を向けて、服を羽織った。
そして、化粧を直しにサニタリーに向かった。
でも、思うんだ。
「人の倫」って、一体何なのだ。それは、誰が決めるのだ。
そして、絶対に自分は「倫」を完全無欠で守り通している
そんなことを言える者は、果たしているのだろうか。
もしせめることができるのなら、それは「神」だけだ。
そうだよ、生まれて以来、人は神に対し「罪」がある
それなのに「倫理」をかざすのは
偽善というものかも知れない・・。
彼女の名は 「倫子」
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