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【書籍】研究の精神ー西澤潤一が示す謙虚さと独創性

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp101「3月12日:偉大な発明・発見の源泉となるもの(西澤潤一 東北大学学長)」を取り上げたいと思います。

 私が東北大学に入学した1994年、まさに西澤氏が東北大学の総長でした。科学者でありながら、教育にも力をいれてらっしゃることを鮮明に覚えています。

 西澤氏は、研究において最も重要なのは、謙虚かつ忍耐強く真実を追求することであると語っています。彼は、偉大な先人の発明や発見を盲信するのではなく、理解できない部分に遭遇した際には自ら実験をして本質を探るべきだと強調しています。西澤氏は、科学は単に先人の考えを受け入れるのではなく、自ら現象を研究し、実験を重ねることだと指摘し、特に日本の科学者が欧米の研究に過度に依存していると批判します。彼によれば、独創的な技術開発の鍵は、文献研究と自らの実験にあるとされます。

研究で一番大切なのは、謙虚に忍耐強く何が本当かを追求することでしょうね。先覚者の偉大な発見、発明というものには慎重に対応はしますが、しかし、どこかに理解できないところがあったら、謙虚に忍耐強く実験をして、本当のところを追求することです。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)p101より引用

 西澤氏は、発明は地道な努力と忍耐から生まれると信じており、独自の技術や発見は、万里の長城を築くような執着と試行錯誤からしか生まれないと述べています。彼はまた、頭の良さとは単に思考が速いことではなく、「頭が強い」こと、すなわち忍耐力や粘り強さも含むとしています。西澤氏自身、この種の精神力を鍛え上げることに努めてきました。

 彼の経験から、大きな発明はしばしば些細な観察から始まり、これらの小さな差異に気づき、それを乗り越える能力が後の大きな違いを生むと語っています。このような注意深さと判断力は、試行錯誤を通じてのみ鍛えられると西澤は考えています。彼は、不思議な現象に遭遇した際には基本に立ち返り、事実と論理に基づいてのみ説明を試みるべきだとし、この種の訓練を積むことで、他人よりも早く「わずかな差」を超えることができるようになると結論づけています。発明や発見は、このようなプロセスから生まれるのだと西澤氏は説明しています。

不完全であれば、不備な部分について実験をし、その実験結果が指し示してくれるところに則って、法則や原理を整理し、現象を説明し直してみること。その訓練の積み重ねが多ければ多いほど、緊迫したつばぜり合いに耐えて、目の前の事象を見逃さず、誤らず、判断できるようになるのです。それによって他の人よりもいち早く「わずかな差」を超えることができるのだろうと思う。発明・発見とはそうしたところから生まれるものなのです。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)p101より引用

<人事の立場から考えること>

 西澤氏の言葉には、科学的探求における根本的な姿勢と、それがいかにして偉大な発明や発見に結びつくかについての深い洞察が込められています。彼の考え方は、人事の立場から見ても、非常に示唆に富んでいます。特に、人材開発や組織開発の文脈で、彼の指摘する「謙虚さ」「忍耐強さ」「実験と実践」の重要性は、個人の能力開発だけでなく、組織全体のイノベーション文化を築く上で欠かせない要素です。

謙虚さとは真の探求心
 西澤氏は、科学的探求において謙虚さが不可欠であると説明しています。この謙虚さとは、自分の知識や経験に固執せず、常に新たな知見や理解を求める姿勢を指します。人事の観点からこれを解釈すると、組織内での学びや成長の文化を促進することに他なりません。個人が自分の現在の理解や技能に満足せず、常に向上を求める文化は、組織の革新と成長の基盤となります。

忍耐強さとは目標達成への不屈の精神
 忍耐強さについて西澤氏が強調するのは、研究や発見の過程で避けられない困難や挫折に直面しても、諦めずに目標に向かって努力を続ける能力です。人事管理の文脈では、この忍耐強さは個人の目標達成能力だけでなく、チームや組織が困難な課題に立ち向かい、解決策を見出す過程においても重要です。目標に向かって努力し続ける文化は、組織のレジリエンスを高め、変化に対する適応能力を強化します。

実験と実践による学習
 
西澤氏が指摘する「実験と実践」の重要性は、理論だけでなく実際の行動によって学び、理解を深めることの価値を示しています。人事の観点からは、このアプローチは従業員が新しいスキルを学び、適用する過程に非常に関連しています。教育や研修プログラムにおいて、実際の職場環境での実践的な経験を組み込むことは、学習効果を高め、実際の業務への適用能力を向上させます。

人事管理への応用
 
西澤氏の考え方を人事管理に応用するには、以下の点が考慮されるべきです。
(1)学習と成長の文化の促進
 
従業員が常に新しい知識やスキルを学び、適用することを奨励する文化を促進する。
(2)忍耐力とレジリエンスの育成
 
個人と組織が挑戦に直面したときに持続可能な成果を達成するための忍耐力とレジリエンスを育成する。
(3)実践的な学習の機会の提供: 教育や研修プログラムにおいて、実際の業務に関連する実践的な学習機会を提供する。

 西澤氏の言葉には、科学研究のみならず、人事管理や組織開発における深い洞察が含まれています。彼の指摘する謙虚さ、忍耐強さ、実験と実践の重要性は、組織が直面する多くの課題に対処し、持続可能な成長を達成する上での鍵となるでしょう。

研究における謙虚さと忍耐強さを体現した科学者の姿を描いています。周囲には本や実験器具があり、科学者は真実を追求するために実験を行っています。伝統的と現代的な科学環境の融合からインスピレーションを得たこの研究室は、偉大な発明や発見のシンボルで満たされており、先人の業績を盲信するのではなく、それらに基づいてさらなる探求を行う重要性を強調しています。全体として、静かな決意と思慮深い探究の雰囲気が、柔らかく優しい画風で表現されています。


1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。




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