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与える文化の力ー人事のためのコシノジュンコ氏からのインサイト

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp81「2月22日:与うるは受くるより幸いなり(コシノジュンコ デザイナー)」を取り上げたいと思います。

 コシノ氏は、家族が教会に通っており、亡くなった母が遺した最後の言葉が『聖書』の「与うるは受くるより幸いなり」という言葉だったことを紹介しています。母は2006年に93歳で亡くなる前に、病気になる約一か月前に雑誌のインタビューに答え、「与うるは受くるより幸いなり」という言葉を関西弁で語り、人に何かをしてあげることの重要性を説きました。コシノ氏は、この教えを実生活に活かしており、自身のブティックでニューヨークでお世話になった元国連大使の息子さんの個展を開催するなど、人との繋がりを大切にしています。また、コシノ氏は「かきくけこ」という言葉を大切にしており、「感謝」「希望」「くよくよするな」「健康」「行動」の五つを仕事や人生の重要な要素として挙げています。

だから、人に何かをしてあげることは、遠く回って、結局は自分のためになる。自分のためにやるのではなく、人のためにやると最終的には自分に返ってくるよ、ということを母は最期に私に伝えたかったのだと思います。
(中略)
私の好きな言葉に「かきくけこ」というのがありますが、「か」は「感謝」「き」は「希望」「く」は「くよくよするな」「け」は「健康」最後の「こ」は「行動」この五つって、仕事でも人生でも重要じゃないかと思いますね。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p81より引用


<人事の立場におけるインサイト>

 コシノ氏の言葉「与うるは受くるより幸いなり」と彼女の母親の遺言は、人事管理の領域において非常に重要な洞察を提供しています。この教訓は、組織のリーダー、人事担当者、そしてすべての従業員に対して、与える行為の本質的な価値を再認識させるものです。この原則を人事戦略の中心に置くことで、組織文化、従業員のエンゲージメント、そして最終的な業績に大きな影響を与えることができます。

組織文化の構築

 組織文化は、共有された価値観、信念、慣行によって形成されます。コシノ氏の母親の遺言が示すように、「与える」文化を促進することで、協力、尊敬、支援の精神が醸成されます。人事担当者はこの理念を社内の様々なプログラムと政策に組み込むことで、互いに支え合う環境を構築する責任があります。たとえば、メンタリングプログラム、チームビルディング活動、社員が社内外のコミュニティに貢献できるボランティア機会の提供などがあります。

従業員エンゲージメントの強化

 従業員エンゲージメントは、従業員が自分の仕事と組織に対してどれだけ熱心で、献身的であるかという度合いを示します。「与える」文化は、従業員がより価値ある貢献をしていると感じさせ、結果としてエンゲージメントを高めます。人事は、従業員が自らのスキルや知識を活かして社内外のプロジェクトに貢献できる機会を積極的に提供することで、この感覚を強化できます。さらに、従業員の成功を認め、報酬を与えることで、彼らの努力が認識され、評価されているという感覚を強化できます。

業績への影響

 「与える」文化は、組織の業績に直接的な影響を与えます。従業員が互いに支援し合い、自らの知識とスキルを共有することで、イノベーションが促進され、問題解決がより効果的になります。また、エンゲージメントの高い従業員は、顧客サービスの質の向上、生産性の向上、そして離職率の低下に貢献します。人事担当者は、パフォーマンスマネジメントシステムを通じて、このような貢献と業績を評価し、認識することが重要です。

「かきくけこ」の実践

 コシノ氏が挙げた「かきくけこ」は、人事管理の各側面において実践する価値があります。以下は、一つの例です。

  • 「感謝」は、従業員の貢献と成果を認識し、正式に評価することで表現されます。

  • 「希望」を提供することは、明確なキャリアパスと成長の機会を通じて、従業員の将来に対する楽観を養います。

  • 「くよくよするな」は、挑戦と失敗を学習の機会として捉え、リスクを恐れずに新しいアイデアを試す文化を促進します。

  • 「健康」の促進は、ワークライフバランスの重視、健康的な職場環境の提供、メンタルヘルスサポートの強化を通じて実現されます。

  • 「行動」は、戦略的な計画だけでなく、具体的な行動に移し、目標達成に向けて前進することを意味します。

 これらの原則を組織の中核に据えることで、人事は従業員と組織双方の最大のポテンシャルを引き出すことができます。コシノ氏の言葉は、人事管理の実践において、与えることの重要性と、ポジティブな職場環境の構築がいかに重要かを思い出させてくれます。

与える精神と受け取る喜びのバランスを象徴的に表現しています。前景には、周囲の多様なコミュニティに象徴的な贈り物を提供する、寛大さの精神を体現する人物が描かれています。背景には希望と更新を象徴する、暖かく輝く日の出と豊かで生き生きとした野原が広がっています。このシーンは、「与えることは受け取ることよりも幸いである」という言葉の本質を捉え、感謝、希望、回復力、健康、行動を反映した要素を含んでいます。スタイルは柔らかく、招き寄せるようなもので、豊かな色彩と優しい照明が暖かさと包摂の感覚を喚起します。


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