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【書籍】師と歩む人生の旅ー森信三による人物理解のアプローチ

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp100「6月15日:人物を知る五つの標準:森信三(哲学者)」を取り上げたいと思います。

 森信三氏は、人間を知るための五つの基準を提唱しています。これらは、個人の師匠、人生の目標、過去の経歴、愛読書、そして友人関係という要素から成り立っています。これらの基準を通じて、人の性質や将来の方向性を大まかに推測できると森は考えています。

 しかし、森はこれらの要素が最終的には「師」という一つの根本に集約されるとも指摘しています。人生の目標や愛読書の選択、過去の行動や友人関係は、師からの影響を強く受けるというのです。師との出会いにより、迷いが少なくなり、困難に対しても明確な方向性を見出すことができると述べています。そして、真の友人とは、同じ道を歩む者、すなわち同じ師に学ぶ者たちであることが多いとしています。これらの見解を通じて、森は師という存在の重要性を強調しており、個人の成長や人間関係におけるその中心的な役割を浮き彫りにしています。

自分の一生の目標を何と立てるかということも、結局はその人が、師の人格に照らされて初めて見出されるものであって、またいかなる書物を愛読するかということも、結局は師の教えの光に照らされて、おのずから見えて来ることでしょう。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp100より引用

<人事の視点から考えること>

 『人物を知る五つの標準』で述べられているのは、個人を理解し、その人物がどのような将来を歩むのかを大まかに見極めるための指針です。上記の繰り返しになりますが、森氏は、人物を知るには、その人の師匠、生涯の目標、経歴、愛読書、友人関係の五つの要素を考えることが重要だとしています。これらの要素は、個人の価値観、人生観、行動パターン、知的興味、そして社会的ネットワークを反映しており、個人の本質的な特徴を理解するための重要な手がかりとなります。
 人事の立場から考えても、森氏の提言は非常に興味深いものです。採用、人材開発、マネジメントなど、人事担当者は組織内の人々を深く理解し、彼らの能力と可能性を最大限に引き出すための戦略を立てる必要があります。以下に、人事の観点から、森信三氏の「人物を知る五つの標準」をどのように応用できるかを考察します。

師匠との関係
 
採用面接や従業員のキャリア開発セッションでは、候補者や従業員が尊敬する人物やその理由を尋ねることで、その人の価値観や目指す理想を理解できます。また、その人がどのような指導スタイルを好むかも明らかになり、適切なメンターやマネージャーを配置する参考になります。

生涯の目標
 個人の目標と組織の目標との整合性を見極めることは、長期的な従業員のエンゲージメントとパフォーマンス向上に不可欠です。キャリア目標に関する対話を通じて、従業員が自己実現を図りながら、組織の成長にどのように貢献できるかを探ることができます。

経歴
 過去の経験と実績は、個人のスキルセットや適性を理解する上で重要です。しかし、経歴だけでなく、その経験から何を学び、どのように成長したかを理解することも重要です。これにより、個人の学習能力や適応能力を評価できます。

愛読書
 
人は読む書物から多くを学び、影響を受けます。従業員や候補者の愛読書を通じて、その人の知的好奇心や専門分野に対する深い理解、または人生観を垣間見ることができます。ただ、最近は特に採用の場面では、「思想」を問う場面が嫌がられる傾向もあるにはあります。

友人関係
 社会的ネットワークは、個人の社会的スキルや価値観、さらには影響力の範囲を反映します。また、どのような人々と交流しているかを理解することで、その人の社会的環境や支援システムについても洞察を得ることができます。

 以上の点を踏まえ、人事はこれらの要素を総合的に考慮し、個々の従業員や候補者が持つ潜在能力を見極め、それを組織の成長にどのように結びつけるかを計画する必要があります。また、これらの視点は従業員の継続的なキャリア開発やマネジメントにおいても有用であり、個々の従業員がその能力を最大限に発揮し、同時に個人的な充足感を感じられるような環境を整えるための参考となります。


森信三の人間理解に関する五つの基準について視覚的に解釈しています。師匠、人生の目標、過去の経歴、愛読書、友人関係を象徴する静かな森とそれぞれの道は、森の洞察の相互関連性と深みを美しく象徴しています。各道が持つ象徴性は、内省を促し、個人の成長と理解の多面性を際立たせています。


1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。

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