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【書籍】常に前進ー福島孝徳氏と佐野公俊氏の医療改革と自己研鑽ー福島氏追悼

『一生学べる仕事力大全』(致知出版社、2023年)のp692「常に前進、常に挑戦(福島孝徳氏、佐野公俊氏)」を取り上げたいと思います。

 福島孝徳氏は、2024年3月19日にお亡くなりになったとのこと。ご冥福をお祈りいたします。非常に残念です。

 福島氏については、以下の『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』でも取り上げました。「すべて努力」という徹底ぶりに、大変驚かされたものです。


 今回は、脳神経外科医である福島孝徳氏と佐野公俊氏のという、日本の脳神経外科医学の発展において重要な役割を果たしてきた方の対談です。

 福島氏は自らの使命として、精密で効果的な手術技術を日本全国に普及させることを掲げています。彼は、自分の持てる力を最大限に活用し、次世代の医師たちにその技術を伝えることに情熱を傾けています。
 一方の佐野氏も、自らの後を継ぐ人材が現れれば、指導者としての役割を担う用意があると述べています。二人とも、疲れることなく医療技術の向上と伝承に尽力しており、その献身的な姿勢は多くの人に影響を与えています。

 二人は、日本の医科大学に存在する問題点として、封建的な体制や閉鎖性を挙げています。これに対して、藤田保健衛生大学では佐野氏の努力により、複数の教授が存在するなどの改革が行われたといいます。これらの変化は、日本の医療教育における大きな一歩といえるでしょう。

福島(中略)私が思うに日本の医科大学の最大の欠点は、旧態依然たる封建制と医局独裁制と閉鎖性ですね。だから大学の一つの医局に教授が一人しかいない。欧米や韓国なら必ず五、六人の教授がいるんですよ。その点、藤田は佐野先生の功績で、ちゃんと複数の教授がいる。
佐野 藤田は新設大学だったからよかったんですよ。僕が二〇〇四年に主任教授になった時、研究や教育分野では日本で一番になれないけれど、臨床ならトップになれると考えて、脳外科に私を含めて五人の教授をつくったんです。

『一生学べる仕事力大全』(致知出版社、2023年)p693より引用

福島氏と佐野氏は、技術のみならず、患者に対する誠実な姿勢も重要視しています。患者一人ひとりに最適な治療を提供し、術前にはしっかりと説明を行うことで、患者の不安を和らげる努力をしているのです。

 また、二人は技術向上のためには常に前進し、挑戦し続けることが必要だとしています。特に福島氏はアメリカでの経験を通じて、日本の脳神経外科の技術を世界に広めることに貢献しています。彼は、「神の手を持つ男」と称されることがあるが、自身は神に祈り、患者さんのために全力を尽くす姿勢を大切にしていると語ります。佐野氏も、自分が行う治療が患者さんにとって最善であることを信じ、病気との闘いにおいて神様の助けを願っています。

人は私のことを「神の手を持つ男」なんて言いますが、本当は神様に助けられて生きている男なんです。「神のように病気を治す男」ではなく、神様に祈りながら必死で病気と闘っている男なんですね。

『一生学べる仕事力大全』(致知出版社、2023年)p707より引用

 二人の医師は、医療技術の向上だけでなく、医師としての心構えや患者への接し方においても、多くの示唆を与えています。彼らの言葉からは、技術力の高さと同じくらい、患者さん一人ひとりに対する深い愛情と尊敬が感じられます。また、医師としての自覚と責任感、そして未来への技術の継承に対する強い意志も伝わってきます。

 福島氏と佐野氏の話は、医療現場だけでなく、多くの分野で働く人々にとっても、努力と献身、挑戦の大切さを教えてくれます。彼らの生き方からは、専門分野におけるプロフェッショナルとしての姿勢のみならず、人として大切にすべき価値観を学ぶことができます。未来に向けて技術を磨き、人々のために貢献し続ける彼らの姿勢は、多くの人々にとって大きな刺激となっているのです。

人事の立場から見た観点

人材育成と継承の重要性

 福島氏と佐野氏の言葉からは、彼らが後進の育成に対して持つ深い責任感と使命感が伝わってきます。人事の立場から考えると、これはどの分野においても非常に重要な点です。組織や社会が持続的に成長し続けるためには、経験豊富なプロフェッショナルが、自らの知識と技術、そして何よりもその姿勢や倫理観を次世代に伝えていくことが不可欠です。これは単に技術の伝達ではなく、プロフェッショナルとしての心構え、患者や顧客への深い思いやり、そして何よりも努力を続ける姿勢の継承です。

結局のところ、どんな職業でも成功するのに一番必要なのは、努力なんですよ。一に努力、二に努力、三に努力すべて努力で、努力がもう九十%じゃないでしょうか。五回やって覚えられないなら十回、十回でダメなら二十回やりなさいというぐらい、努力が一番大事ですね。才能も少しは必要ですが、その才能に向いたことをやらないと成功しませんから、がありません。

『一生学べる仕事力大全』(致知出版社、2023年)p699より引用

勤勉性と自己研鑽の精神

 日本がかつて世界に誇った勤勉性を、福島氏は強く訴えます。これは医療の現場だけに留まらず、あらゆるビジネスや職業において重要な要素です。人事としては、組織内でこのような精神を育て、支持する文化を作り出すことが求められます。勤勉性とは単に長時間働くことではなく、与えられた時間をいかに有意義に使い、自己研鑽に励み、常に最善を尽くすかということです。この精神を組織文化の中核とすることで、組織は持続的な成長を遂げることができます。

常に前進し続ける姿勢

 「常に前進、常に改革」という姿勢は、医療の現場から得た教訓としてだけではなく、ビジネスの世界においても非常に価値があります。世界は常に変化しており、昨日の成功が今日も同じ結果をもたらすとは限りません。新しい技術の導入、変化する市場のニーズへの適応、そして社会の変化に対応するためには、組織としても個人としても、常に前進し続ける必要があります。人事としては、このような環境を整備し、社員が新しいことに挑戦し続けられるようなサポート体制を構築することが求められます。

世の中は常に少しずつ進歩していますから、その中でいかに最先端を走っていても、ある時点で止まると、ふと気づいた時にはずっと後ろになってしまっている。だから現状維持は言うまでもなく後退で、たとえ前進していても、世の中の流れと同じスピードでは停滞。

『一生学べる仕事力大全』(致知出版社、2023年)p706より引用

組織としてのコミットメント

 福島氏と佐野氏の言葉からは、患者への深いコミットメントが感じられます。これをビジネスに置き換えると、顧客への深いコミットメント、すなわち顧客の成功を自らの成功と捉え、そのために全力を尽くす姿勢が求められます。人事の立場からは、このような顧客中心の文化を組織内に根付かせることが重要です。顧客のために何ができるかを常に考え、その解決のためにチームや組織が一丸となって取り組むことで、真の価値を提供することができます。いかにして事業に貢献できるかという姿勢が必要でしょう。

まとめ

 福島氏と佐野氏の対談からは、医療の現場に限らず、あらゆる分野で活かせる深い洞察と教訓が得られます。人事の立場から見ると、これらの教訓は人材育成、組織文化の構築、持続的な成長への道筋として非常に価値があります。常に前進し、改革を追求する姿勢、勤勉性と自己研鑽へのコミットメント、そして何よりも患者や顧客への深い愛情と尊敬は、成功への鍵となるでしょう。

献身的な二人の脳神経外科医が病院の環境で情熱的にアイデアを交換し、医療技術について話し合っている様子を表現しています。一人がもう一人に医療技術を示しており、周囲には医療機器や本が配置されています。部屋は希望と医学科学の進歩を象徴する光で満たされており、温かく招き入れる雰囲気が漂っています。背景には、医療教育の改革とイノベーションを示唆する要素が含まれており、デスク上の開かれた本、医療データを表示するデジタルタブレット、医療セミナ等に関するポスターが掲示 されています。外科技術と患者ケアの改善に対する彼らの献身を強調しています。


 792頁にのぼる大作です。まさに仕事のバイブルとなります。名経営者のインタビューや伝説の名講演、一度きりの師弟対談、創業者同士の対談などが、54話を収録されています。


『致知』2014年2月号記事振り返りー追悼も込めて

 福島氏の逝去を偲び、『致知2014年2月号』において渡邉一夫先生(福島県のご出身ということもあり、親しみもあります)との対談記事が改めて取り上げられています。

 ここでは、個人の成功が単なる偶然や才能だけでなく、家族や師匠、そして自己の不断の努力によって築かれることを示しています。これは、人事の立場から見ても、従業員の成長と発展に重要な示唆を示しています。

家族と環境の影響

 福島氏が受けた家族からの支援と教育は、従業員が自身のキャリアを築く上での基盤となることを示しています。特に、両親と叔父から受けた愛情、教育、そして時には厳しい指導は、彼の人生の転換点となりました。企業においても、従業員に対する支援体制やメンタリング制度の整備は、彼らが自らの潜在能力を最大限に引き出すために不可欠です。家族のようなサポートシステムを職場に構築することで、従業員のモチベーションとロイヤルティを高めることができます。

目標と初志貫徹

 福島氏が小学生の時に野口英世の伝記に触れ、世界に出る医者になるという夢を持ったこと、そしてその夢を追い続けた過程は、目標設定の重要性を教えてくれます。人事管理においても、従業員一人ひとりが自分自身のキャリア目標を持ち、それを追求する文化を醸成することが大切です。また、目標達成に向けたプロセスを支えるためのリソースや研修の提供も、企業の重要な役割となります。

努力と経験の積み重ね

 「人生は一に努力、二に努力、三に努力」という福島先生の言葉は、成功への道は決して容易ではないことを示しています。これは、人事管理においても、従業員のスキルアップやパフォーマンス向上に向けた取り組みが、継続的な努力と長期的な視点を必要とすることを意味します。従業員に対して、チャレンジを促し、失敗から学ぶ機会を提供することで、彼らの成長を促進することができます。努力を軽視する向きもありますが、やはり大切なものです。

メンターシップと学び続ける姿勢

 福島氏が世界中の名医を訪ね、常に学び続けた姿勢は、人事管理におけるメンターシップの価値を浮き彫りにします。従業員が自分自身を超えるためには、経験豊かなメンターからの指導やフィードバックが不可欠です。また、学び続ける姿勢を持つことは、変化し続けるビジネス環境に適応し、持続可能なキャリアを築く上で重要な要素となります。

 ここからは、個人の成功が多くの要素によって支えられていることがわかります。人事の立場からは、これらの要素を従業員の成長と発展に活かすための施策を検討し、実行することが求められます。従業員一人ひとりが持つ無限の可能性を最大限に引き出し、彼らが自分自身の夢や目標を追い続けることができるような職場環境を提供すること、それが、私たち人事担当者の使命であるということを改めて認識したところです。

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