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従業員のコミットメントを深めるー知覚された組織的支援(POS)の力

 知覚された組織的支援(Perceived Organizational Support:POS)に関する研究は、従業員が組織から受けるサポートの程度をどのように感じているか、そしてその感じ方が従業員の態度や行動にどのような影響を与えるかに焦点を当てています。
 中でも、佐藤佑樹氏の『知覚された組織的支援(Perceived Organizational Support)研究の展望―理論的基礎,先行変数,結果変数および測定尺度について―』は、この記事記載から10年前の、2014年のレポートではありますが、POSの理論的基盤、先行変数、結果変数、そして測定尺度について包括的にレビューされており、大変興味深い内容です。こちらを紐解きながら、POSついて考えてみたいと思います。

理論的基盤と概念の定義

 POSは、従業員が組織によってどの程度価値を置かれ、そのwell-beingがどの程度配慮されているかという全般的な信念を表します。この概念は、社会的交換理論に基づいており、従業員が組織から受けるサポートを感じることで、組織に対するコミットメントを深め、より良い業績を達成しようとする動機付けが強化されると考えられています。

先行変数

 POSに影響を与える先行変数には、組織の公平性、組織内政治、人事管理実践、上司からのサポートなどが含まれます。これらの要因は、従業員が組織からどのように扱われているか、どの程度サポートを感じているかに大きく影響します。特に、組織の公平性や上司からのサポートは、従業員が感じるPOSを高める重要な要因であることが指摘されています。

結果変数

 高いPOSを感じる従業員は、職務満足度の向上、組織へのコミットメントの強化、労働意欲の増加など、多くのポジティブな成果を示すことが報告されています。これらの成果は、組織の生産性向上や従業員の離職率低下に寄与することが期待されます。

測定尺度

 POSを測定するための尺度としては、主にSurvey of Perceived Organizational Support(SPOS)が用いられています。この尺度は、従業員がどの程度組織からサポートを感じているかを測定するために広く使用されており、高い信頼性と妥当性を持っています。

将来の研究方向

 POSに関する将来の研究では、異なる文化的背景や業界でのPOSの役割、組織内の様々なレベルでのPOSの影響、テクノロジーの進化がPOSに与える影響など、さらに多角的な視点からの検討が求められています。また、POSを高めるための実践的な戦略の開発も重要な課題です。

 本研究では、POSという概念が組織と従業員の関係性を理解し、改善するためにどのように利用できるかについての理解を深める貴重な資料です。組織の人事管理者やリーダーは、この研究を参考にして、よりサポーティブな職場環境の構築に努めることができるでしょう。

POSに注目すると人事・組織上はどのようになっていくのか

 POSは、従業員が組織から受けるサポートの度合いをどのように感じ取っているか、その感覚が従業員の態度や行動にどう影響するかを理解するための鍵となります。POSの研究を深めることは、人事管理の実践においても、組織行動や人材開発の理論においても、非常に価値があります。

POSの理論的基盤

 POSは、従業員が自身の貢献が組織によってどの程度評価されているか、そして自身の福利厚生に対して組織がどの程度配慮しているかに関する全般的な信念を反映しています。この概念は、社会的交換理論に根ざしており、従業員が感じるサポートの程度が高ければ高いほど、彼らは組織に対してより強いコミットメントを感じ、組織のためにさらに貢献しようという動機付けを受けます。

先行変数としての公正性

 組織内での公正性の知覚は、POSを形成する重要な要因の一つです。具体的には、分配的公正性、手続き的公正性、相互作用的公正性があります。これらの公正性の知覚が高ければ高いほど、従業員は自分自身が組織から公平に扱われていると感じ、組織への信頼とサポートの感覚が強まります。結果として、組織へのコミットメントが深まり、離職率の低下や生産性の向上など、組織にとって望ましい結果がもたらされると考えられます。

組織内政治の影響

 組織内政治の知覚は、POSに負の影響を与えます。組織内で政治的な行動が目立つと、従業員は組織が自身の利益よりも政治的なゲームを優先していると感じるようになります。これにより、組織への信頼感が損なわれ、サポートの感覚が低下します。結果として、従業員の不満が高まり、組織に対するコミットメントが低下し、生産性の低下や離職率の増加に繋がります。政治力を感じる場合には注意が必要です。

HR施策の役割

 HR施策は、組織が従業員に対してどのようなサポートを提供しているかを示す重要な指標です。研修プログラム、キャリア開発の機会、適切な報酬制度など、従業員の成長と福利厚生に寄与する施策は、POSを高める効果があります。従業員がこれらの施策を通じて組織からサポートされていると感じると、組織への忠誠心が高まり、仕事へのエンゲージメントが向上します。具体的な施策を検討する場合に着目したいところです。

まとめ

 組織が従業員に対して高いレベルのPOSを提供することは、従業員と組織双方にとって多大な利益をもたらします。従業員は自分が価値ある一員であると感じ、その結果、より一層の努力を組織のために惜しまなくなります。一方、組織は従業員の満足度が高まり、生産性が向上し、離職率が低下するなどの利益を享受します。したがって、組織はPOSを高めるために、まさに公正性を確保し、組織内政治を最小限に抑え、有効なHR施策を実施することに注力すべきです。これらの努力は、従業員と組織の間の強固な信頼関係を築き、長期的な成功に繋がります。人事としても、これらの要素がどのようにPOSに影響を与えるかを深く理解し、実践に生かすことが求められます。

組織からの知覚された支援(POS)の研究を象徴的に表現しています。従業員と組織の関係性、公正性、組織内政治からの保護、HR施策による成長の架け橋、そして全体的な支援と福祉を象徴する暖かい光や育成の手など、POSの理論的基盤、先行変数、結果変数、測定尺度を繊細に表現しています。この柔らかく招き入れる様式は、POSが従業員の態度や行動に与える肯定的な影響の本質を捉えています。



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