文舵練習問題 第5章

練習問題① 簡潔性

・形容詞も副詞もかわずに何かを描写する語りの文章を書く ・会話はなし

久しぶりになってしまいましたが、「文舵」の再開なのです。形容詞と副詞に頼ってなんぼで書いてきたから、辛い。

【719w】

 鏑木は失禁した。拷問には耐えたが、膀胱が脆弱だった。水道水十リットルを、鏑木のケツにぶちこんだ矢島は、笑っている。大声だ。リーダーミソ美もご満悦。俺は、鏑木に同情した。パンツ濡らして、可哀想。本部の場所が知れたのだから、生かすことはない。殺しもしない。ドロンジョ遺伝子の情報を手に入れるまで拷問は続く。殺さずに。第一ラウンドはカブラギの勝利と言っていい。しょんべんは漏らしたが、情報は漏らしてない。いつまで持つのだろう。アイドルタイムなので矢島が鏑木の足爪を一枚剥ぐ。右小指が有効だ。歩かせれば分かる。バランスが取れなくなる。絶叫が拷問部屋に響くが、録音スタジオ並みの防音だから外には届かない。鏑木の苦痛、いかばかりか。ミソ美が矢島に次の手を命じる。〈ココナツ〉を点滴するのだ。〈ココナツ〉は、静脈から心臓で弾みをつけて体じゅうに運ばれる。脳にもだ。鏑木は、自分が何者かだった時間を懐かしがっているかもしれない。恍惚のなかで。ミソ美は、俺に奴のモノを咥えさせようとしたが、冗談じゃない、こっちまで、ごちそう頭になっちゃうだろ。
 三日目になったが、拷問の成果はない。
 鏑木は口を割らないし、衰弱もしない。ミソ美が疲れて寝ると、休憩になるのだが、ちょっとした時間で、鏑木の体力は復活している。ミソ美に焦りが見えてくる。矢島は、笑い続けている。俺は知ってた。普通に分かっていた。鏑木は抜かれてんだってこと。奴は、さくら工業に捨てられたんだ。抜かれたものは、話しようがない。〈ココナツ〉でも、無理なものは無理だ。ないんだから。ドロンジョ遺伝子の情報なんて、奴の脳には、1ビットもない。ざまあみろだ。ミソ美は、今夜失脚する。失脚で済めばいいのだが。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?