見出し画像

フルトヴェングラーの名演奏その2

前回は、マタイ受難曲と交響曲11曲の合計12曲を紹介しました。後半はオペラを中心に紹介します。

13.ワーグナー トリスタンとイゾルデ、1952年6月 フィルハーモニア管弦楽団他

これは、トリスタンとイゾルデのスタジオ録音です。今回聞き返しましたが、やはり良い演奏だと思います。一番の聞き所は第2幕でしょうか。歌手ではやはり、多少の衰えはあるもののフラグスタートのイゾルデがすばらしいです。威厳のある高貴な声と言えるでしょう。オーケストラの伴奏も第1幕への前奏曲からすばらしく、充実した響きを聞かせます。第1幕への前奏曲のクライマックスを形成する中間部の高揚感は何度聞いても最高です。
第2幕の伴奏も良いですね。第3幕の愛の死まで、全編優れた録音だと思います。


14.ワーグナー ニーベルングの指環、1950年3月~4月、ライブ ミラノ・スカラ座管弦楽団他

これは1950年の3月から4月にミラノ・スカラ座で上演されたニーベルングの指環全曲のライブ録音です。フルトヴェングラーが戦後にリング全曲を歌劇場で上演したのはこの時だけで、その後、演奏会形式で1953年にローマで演奏した記録も残っています。
さてこのスカラ座の録音ですが、戦時中のマグネットフォンのテープレコーダーがスカラ座に残っていたため、それを用いて録音されたそうでテープ録音です。テープの保存が悪い箇所はアセテートでの録音で補ったようですので所々音質が変化する箇所がありますが、全体的には歪が少ない良い音で録れています。
演奏はテンポが速めで、推進力があります。そこがゆったりしたテンポで粘りをみせるローマでの指環と一番違うところだと思います。逆に巨大なスケール感はローマ盤ほどはありません。
歌手ではやはり、ブリュンヒルデを歌うフラグスタートが素晴らしいです。また、ジークフリートでタイトルロールを歌うセット・スヴァンホルムも優れた歌唱を聞かせます。神々の黄昏でジークフリートを歌うマックス・ロレンツは、歌い崩しが大きく、好悪が分かれるかもしれません。
フルトヴェングラーの指揮はどれも優れていますが、やはり神々の黄昏に一番感銘を受けます。曲が一番良いからでしょう。ワルキューレ第1幕の後半部分の高揚感、第3幕のヴォータンの告別の場面なんかも素晴らしい演奏になっています。これは全体を通して聞いてもらいたいです。
CDでは一応、国内最新版のSACDを挙げていますが、CDではArkadia盤、LPではCetraからテープ音源をもとに1983年にLP化された18枚組の音質が最高のようです。それらを入手されると良いと思います。


15.ワーグナー 神々の黄昏から「ブリュンヒルデの自己犠牲」1948年  フィルハーモニア管弦楽団、フラグスタート(ソプラノ)

これは神々の黄昏から「ブリュンヒルデの自己犠牲」のみを抜粋して1948年にフィルハーモニア管弦楽団と録音したものです。ブリュンヒルデはフラグスタートが歌っています。
これは全編、威厳のあるフラグスタートの声を聴くための演奏です。個人的にワーグナーソプラノならフラグスタートを聞くのが一番好きなので、最近よく聞いています。1952年録音より声の状態は少し良いと思いますが、大差はないです。録音は、やはり1952年盤より若干落ちるようですが、そう悪くないです。


16.ワーグナー 神々の黄昏から「ブリュンヒルデの自己犠牲」1952年6月  フィルハーモニア管弦楽団、フラグスタート(ソプラノ)

これは神々の黄昏から「ブリュンヒルデの自己犠牲」のみを抜粋した1952年にフィルハーモニア管弦楽団と録音したものです。ブリュンヒルデはフラグスタートが歌っています。1948年盤から4年後の再録音ですね。
1948年盤と全く同様に優れた演奏です。フラグスタートのファンのため、どちらも揃えておきたいです。


17.ワーグナー ワルキューレ、1954年9月~10月 ウィーン・フィル他

これはフルトヴェングラーの最後の録音になったものです。ウィーン・フィルを指揮したスタジオ録音です。
1950年のスカラ座での録音と比べると淡々としている演奏ですが、第2幕への前奏曲などで猛烈な金管のクレッシェンドを聞かせたりと、迫力には欠けません。全体的にウィーン・フィルのブラスセクションがバリバリ弾いています。
一番の聞き所は、第3幕のヴォータンの告別の場面でしょう。フェルディナント・フランツのヴォータンともども素晴らしい演奏になっています。


18.ベートーヴェン フィデリオ、1953年10月 ウィーン・フィル他

これは1953年10月のスタジオ録音です。これはあまり評判にならないですが良い演奏だと思います。スタジオ録音ですから抑制は聞いていますが、終幕の高揚感は素晴らしく、名演だと思います。


19.ベートーヴェン フィデリオ、1950年8月、ライブ ウィーン・フィル他

1950年8月のザルツブルグでの上演のライブです。ここでの聞きものはレオノーレを歌っているフラグスタートです。やはりフラグスタートの歌唱は素晴らしいです。終幕の高揚感は、スタジオ録音を上回っていると思います。
音質はイマイチですが、演奏が素晴らしいので挙げておきます。
なお、これの最上の復刻はどれなのか現在研究中です。上記のCDが最上の復刻という訳ではないです。


あとは、魔笛(1951年)、ドンジョヴァンニ(1953年、1954年)といったモーツァルトにも名演があります。ローマの指環(1953年)も特色がある演奏です。あとで加筆したいと思いますが、とりあえずこの辺にしておきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?