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現役転職エージェントが思う、今の転職エージェント業界の問題点【4】強引な対応

「紹介した案件への応募を急かされて困る」
「催促が強引」
「求人を強引に勧めてくる」
「内定承諾を強引に押してくる」

転職エージェントを利用した求職者から、こうした声を何度も聞きます。
ネットで検索をすると、こうした言葉がいとも簡単に、幾つも出てきてしまいます。

そして、未だになくなることがありません。
どうしてこういうことが起こるのか?

私は転職エージェント9年、再就職支援3年の12年間、転職支援をさせていただき、私個人としても、5回転職を経験。利用者としても転職エージェントを利用し、お世話になってきました。

その中で、この問題が起こる原因を端的に挙げるとすると、

 「エージェントはビジネスとして転職支援をしているから」

だと考えております。

しかし一方で、エージェント業界に入ってくる人の大半は、人のキャリア支援をやってみたいという思いで来ている、というのも事実としてあり、最初からビジネス一辺倒という考えではありません。

私自身もこの仕事をさせていただく中で、

  • どこまで求職者に寄り添うべきか?

  • 企業側の意向にどのくらい沿ってべきか?

  • こちらが正しいと思っている事なら強く言うべきなのか?

  • ビジネスとしてやっている以上、ビジネスとして割り切るべきなのか? 等々

日々日々、色々なことを考えてきました。
お恥ずかしい話、対応を間違えて苦情を頂いたことも随分ありました。
良いバランス感覚の中でやっていきたいと考えながらも、今だそれは難しいことと感じています。

この記事では、この”強引な対応”問題について、エージェント側でどういうことが起こっているのかを、具体的なシーンに基づいて詳しく見ていきます。
その上で、エージェントはどうかかわっていくべきか?について私の見解をお伝えいたします。


① 「特定求人への応募をゴリ押しする」問題

この事が起こるエージェント側の心理として、次のようなものがあります。

1-1 注力したい企業がある

エージェントの面談担当者は、前提として求職者の希望に沿った求人を考えてご案内をしますが、企業から人材の紹介を依頼されているため、企業のために動いている立場にもなります。

そのため、求職者の希望や志向性などを確認した上で、注力したい企業の案件と、一定以上重なると判断できれば、それを選択肢に入れて勧めようと考えます。

問題になるのは、”一定以上重なる”の判断が、面談担当者ごとにばらつきがある事です。
的確に判断ができていれば、求職者にとってその案件を勧められることはプラスになりえますが、そうでない場合は、企業意向に偏ったエージェント都合の行動になる危険性があります。

1-2 エージェントがオススメと思い込んでいる

1-1と似ていますが、このケースは担当者が過去にその求人で入社を決めていたり、求職者に何度もご案内をしてきた中で、担当者個人として思い入れを持っている案件になります。

実際に入社実績があり、求人内容にも詳しい点は求職者にとってメリットとなりますが、求職者の意向に沿わないものであれば、強引な案内となりかねません。

1-3 あなたにはこれしかないよ、と押し付けてくる

求職者の希望を聞く中で、転職のプロとして見た場合、転職市場の状況からみて明らかに高望みであったり、求人を探すには無理な希望条件をお話しされるケースがあります。

その時、エージェント側はその求職者の経験、年齢、市況などを鑑みて、その方に合う求人を選んで提案をすることがあります。

ここで問題になるのは、求職者ご本人の納得感がないまま、提案を進めることです。
「いえいえ、貴方の希望では希望する求人はありません。あなたの経験、年齢、希望で行くならば、○○のような案件しかありませんよ」など、最初から希望を受け止めず、エージェントが用意した”正しい”答えを押し付けてくる。

確かに、プロの視点からは的確な提案をするのですが、仮にそれがいくら正しいものであったとしても、求職者がその時点で納得をするとは限りません
求職者としても、やはり自分の希望を否定されて、希望していないような案件を勧められれば拒否したくなります。

また、転職に限らず、人は自分の考えを変えて他人の意見を受け入れる、人それぞれのタイミングというもあると思います。

最初は違うと思っていても、様々な人から意見を言われたり、実際に自分の思い通りにならない事を知っていく中で、他人の意見を受け入れる準備ができてくるものでもあります。

エージェント側が、求職者の今の状態やタイミングを考えずに案内をしていくと、単にエージェントが”正しいと思っていること”を押し付けるだけの、責め心の強い、人を変えようとする行為になりかねません。

② 「応募を催促される」問題

複数の求人案件をご案内し、どの案件に応募をするのか意思確認をしますが、たいてい「○○日までにお返事を下さい」と期限を切って言われることが多いでしょう。

ただ、この”期日”通りに返事がなかった時にエージェントから応募を催促される事が起こります。

2-1 期日を決めていかないと前に進まない

この件に限らず、何かやろうと決めた事を進めていくには、「いつまでに何をするのか」と期日を決めることは重要なことと思います。

期日のない決め事は、実際に行動の先送りを引き起こす。
やってもダラダラしてしまい、なかなか前に進まない、という事が起こります。

エージェント側もそこは同じで、具体的な”期日”を決めることで、求職者の転職活動を前に進めていきたい、と考えています。

ただ、ここで問題になってくるのは、どうして期日までに返事がなかったか?という点です。
返事がなかった場合、それには理由があるはずです。
例えば、

  •  実際に忙しく、検討する時間が取れなかった

  •  応募しようか迷っているうちに、期日を超えてしまった

  •  応募したいと思う案件がなく、返事をしにくく感じていた

  •  エージェントの対応が良くなく、期日を守る気にならなかった

  •  そもそも、まだ転職をする気になっていない

等があります。
エージェント側は成約を上げようと思えば、まず応募をしてもらわないと始まらないため、いわゆる”応募を取る”ことへの意識は強くあります。

求職者も、忙しくとも応募したいと思えれば、応募をしますし、返事もきちんとします。
こうした求職者の心情に思いを寄せないと、エージェントの行動はただのエージェント都合になってしまいます。

2-2 先を越されたくない

転職エージェントは、他社エージェントがライバルになるため、他社に先を越されず、先に案内をして先に応募をして頂き、先に進捗を進めたい、という意識がそもそも非常に強くあります。

▼これについては、「連絡がしつこい」問題の記事でも解説いたしました。宜しければご覧ください▼

応募の返事がない場合、少なからず他社に持っていかれたのでは?という危機感を感じ、結果として応募の催促という事になってきます。

2-3 背中を押そうと意気込んでいる

2-1でも挙げたように、返事がない理由の一つとして、迷っているうちに期日を超えてしまった、という事があります。

エージェント側も返事がなかった場合、「ん?あまり気が乗ってないのでは?」と感じることがあります。

求職者のタイプにもよりますが、応募の催促をする際、迷っているなら背中を押して応募して頂こう!と意気込んでいる場合もあります。

確かに、背中を押してほしいと無意識に思っている求職者も一定数いらっしゃいますし、そうすることがその方にとってプラスになるケースがあります。

ただ、それは求職者のことを理解しないままそれをすれば、単なるしつこい応募の催促となってしまいます。

③ 「内定受諾を強引に勧めてくる」問題

内定が出た時は、エージェントにとって最も緊張感が高まる時です。
これまで良い関係だった求職者との関係性が崩れやすい場面でもあります。

3-1 ゼロか100かの瀬戸際

内定受諾となれば会社として売上見込みが立ちます。
逆に辞退となれば売上は当然ゼロのまま。しかもこれまで費やしてきたサポートも無駄になってしまい、エージェントにとって金額的、精神的にダメージが非常に大きいものとなります。

当然その分、エージェントも必死になります。
求職者本人が行きたくないと思っていて、傍から見てもその方にその会社は合わず辞退した方が良いと見えていても、その必死さからエージェントも冷静さを失い、内定受諾を強引に勧めてくる、という事になります。

3-2 企業に迷惑が掛かる

ダメージが大きいのはエージェントだけではなく、当然ですが求人企業になります。欲しい人材の獲得に失敗すれば、また一から採用活動をやり直し(ほかに候補者がいたとしても、活動は後退する)になる。
何より、採用による会社としての課題解決がなされないまま(急な欠員補充、売上を上げるための増員、新規事業立ち上げに必要不可欠な人材採用…ect)になります。

それだけに、内定辞退となれば依頼者である求人企業に対して、エージェントとしては大きな迷惑をかけることは重々自覚しており、そうならないようにと必死になります。

内定受諾を強引に勧めてくるのは、エージェント自身の都合だけでなく、求人企業の都合も背負って引き起こしてしまうものになります。

3-3 求職者は迷うものだと思っている

2-3でも挙げたように、一定数の求職者は迷い、背中を押した方が良い方もいらっしゃいます。

エージェント側でも、求職者は迷うし、簡単に決断できないものだと理解しています。

それが本当に求職者に寄り添い、きちんと話を聞き、その上で本当は受諾して前に進みたい、という求職者であれば良いのですが、単に説得して、押し込もう、これで決めさせよう、などと最初から決めているのは、完全にエージェント都合の発想と思います。

最初から決めるのではなく、十分に話をする中で必要な提案をすべきです。


④ まとめ

エージェントもビジネスで行っているとはいえ、多くの人間はもともと、人のキャリア支援に役立ちたい、という思いでこの仕事をしています。

単に売上のためではなく、転職のプロとしての視点から、求職者の事を考えた提案を心がけています。

この仕事の難しさは、

  •  求職者

  •  求人企業

  •  エージェント(自社)

求職者の幸せは、一番合う求人企業に採用されて、企業が業績を上げ、求職者も幸せになる。
対価を得るエージェントもビジエスとして成功する。

どこにも偏ることなく3者全てが成功するバランスを取り続けることにあると思います。
非常に難しい事ですし、私自身もまだまだ追究しています。

このバランスの取り方、考え方などについては、また別の記事で解説をさせていただきたいと思います。

目指すは、3社全ての幸せ!

最後までお読みいただきまして有難うございました。


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