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モラルを捨てたら儲かるか?『不道徳な経済学』読書会【闇の自己啓発会】

 闇の自己啓発会は4月25日、『不道徳な経済学』読書会を行いました。初の完全リモート読書会ということで、当初は「いつものように話せるのか?」との懸念がありましたが、やってみると普段と同じ感覚で話すことができました。今回は、コロナ自粛中に考えたこと、ネオリベラリズム、コミュニティについてなど、色々な話題が展開。その模様を紹介していきます!

■参加者一覧

役所【暁】 編集者。外出自粛中にしているゲームは、プチデポット『グノーシア』。
【木澤】佐登志 文筆家。外出自粛中に見ているアニメは『ミッドナイトゴスペル』。
【江永】泉。外出自粛中にプレイ動画を視聴したホラーゲームは『GO HOME』。
【ひで】ひでシス。外出自粛中に作ったWebアプリは Magwatta

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■外出自粛中、どう過ごしていますか?

【ひで】 皆さん、コロナ自粛はどうですか? う〜ん、僕は自分のことを引きこもりって思ってはいましたが、ここまで外出・レジャーしない体験をしているのって初めてなので心身が弱ってきています。
【暁】 僕も引きこもり慣れてる感じだったけど、人に会えないのは辛いですね…。
【江永】 私も久しぶりにちゃんと引きこもっています。もろもろも休みになったというか休みにできたので。
【木澤】聞いたところによると、江永さんは親から外出自粛要請が出たとか……。
【江永】 そうですね。〈親〉から要請がありました。4月4日から外出は2回ぐらいだった気がします。
【ひで】 玄関から2回しか出ていないとか大丈夫なんですか?
【江永】 一般に大丈夫と呼ぶかはわからないですけど、20時間ぐらい続けて東方projectのSSを読んでいた頃のテンションになってきました。その頃はPCが熱で破損していましたが、今回は大丈夫です。
【暁】 僕は元々引きこもり体質なのと、リモートワークなので、外出は週1程度です。電車に乗らなくていいのは助かりますが、外食が趣味だったのでそれができないストレスはありますね。
これが理想のご主人様による監禁ライフならいいんですけど、クソみたいな政府に「自粛」させられているので非常にムカつきます。
【江永】 イマジナリーマスターをつくって、そいつに監禁されている設定にすればよいかもしれません。政府がマスターだと考えると無限の悲しみが生ずるので……。
【暁】 ほんとそうやって救い主を産み出すしかない。僕も脳内ご主人様に救われている部分はあります。先日、夢の中に知人が出てきて、「しょうがないなぁ」と言いながら手取り足取り料理を教えてくれたんですけど、あれはイマジナリーマスターが知人の姿を借りて「受肉」したものなんだなと確信しました。
それはさておき、コロナで孤独が深まったというか、今は数少ない友人に「会いませんか」と誘っても「このご時世にはちょっと…」って言われるので厳しいです(そりゃそうだとわかってはいるのですが)。これがセカイ系なら「セカイを敵に回しても、死んでもお前に会いに行く」ってなるんでしょうけど…。残念です。
【木澤】すごい適当なことを言うと、セカイ系って本質的に反社会的な要素を含んでいるはずだと思うんですよね、定義的にも。僕が念頭に置いているのは、新海誠の『天気の子』、あと『沙耶の唄』ですが。でも同じセカイ系でも麻枝准の作品には反社会的な匂いはほとんどない。たとえば『CLANNAD』なんて、地域社会は大事! 家族は大事! みたいな話をしている。こうした田舎ヤンキー的価値観とオタク的な保守性は意外と相性が良いということなのでしょうが、だからこそ僕は新海誠の一貫した「反社会性」に興味があります。すいません、いきなり話が脱線しました。
【暁】いや、雑なパスにいい返しをしてくださってありがたいです!僕も新海誠や虚淵玄的なセカイ系の方が好きですね。
【江永】 言われていることではあるけれども、映画『アウトブレイク』(1995)みたいでもゲーム『The Last of Us』(2014)みたいでもないし、コロナウィルスはセカイ系っぽくはないですよね。
【暁】 う~ん、でも外出したら叩かれるご時勢なので、世界秩序vs個人っぽさがセカイ系かなと。あと、これも思い付きですが、このご時世ではDVで別れるか寂しくて同棲するかの二極化してそうだなと思いました。

【ひで】 斎藤環がなんか書いてましたよね

【ひで】 HIVがセックスをふしだらな行為だという規範を作ったように、新型コロナウイルス流行が外出をふしだらな行為だという規範を作りつつある、コロナ・ピューリタニズム。
【暁】 あれ良かったです!人と会うのはエアロゾル化した体液を交換することだから実質セックスみたいな解釈ができて面白かった。
【木澤】 ベルサーニが『親密性』で言及しているベアバッキングのような、エイズウイルスを交換し合うゲイのコミュニティのようなあり方に、アフターコロナの世界が近づきつつある、ということでしょうか。
【江永】 連載『Beautiful Harmony』の第6回で言及されてた話ですね。ベルサーニ『親密性』の当該箇所では、ウィルスに感染することを妊娠にたとえるちょっと尋常ではないカルチャーが出てきます(その比喩自体は、「エイリアン」シリーズ(1979-)のゼノモーフや、「Xファイル」シリーズ(1993-)のブラックオイルなどの寄生の様子を思い出すと理解はできて、そもそも吸血鬼や狼人間などのセクシュアルな要素や寄生(潜伏)の要素の変遷を辿るべきなんでしょうが)。ただ、ベルサーニの読み方が独特なのは、妊娠的なメタファーの方向ではなく、むしろ、物質的だけど生殖とは切り離された関係性、そうしたコミューン・モデルと捉えたところであるように思えます。文化の継承を血の繋がりにたとえるような方向が血族化だとすると、むしろ脱血族的かつ物質的なつながりというものを考えようとしているように見えます(かなり無茶なやり方で、と付け加えるべきかもしれませんが……)。

■太陽とコロナ

【江永】 コロナって太陽感があって、みんな繋がれそうな気持ちになりますよね。パンデミックと直接の関係はないんですが、去年の秋頃から視聴していた曲の名前が『Coronao Now』(2019)だったので、複雑な気持ちがありました(ボカロ曲の『炉心融解』に対するのと同じような)。むかしイスラム圏だと太陽より月の方が印象よいとか話しているひとがいた気がするんですけどどうしても思い出せない。
【ひで】 めっちゃおもろいですねそれ。
【暁】 日本のメーカーが中東に進出した際に、商品デザインを太陽マークから月マークに変えたら売れたみたいな話がありましたね。学生時代に評論で読んだ記憶があります。どの文献だったか失念しましたが…。

■自粛しないゾンビたちによる革命

【木澤】 パチンコ店の自粛について取り沙汰されていましたが、県が自粛しないパチンコ店を公表したら、逆に客が集まったというニュースがありましたよね。この報道を見てジョージ・ロメオ監督の『ゾンビ』を思い出しました。ロメロのゾンビは意識がなくても日常生活を送ることができるんですよね。彼らは生前の習慣から本能的にショッピングモールに集まってくる。自粛要請が出ているのにパチンコ店に通ってしまうパチンコ客もゾンビのような存在なのではないでしょうか。僕はこういうところに、ものすごいポストヒューマン感を感じて一人で興奮してしまうのですが……。
【暁】 僕はTwitterで回ってきた、「パチンカスにモラルはないので、店を公表したら集まってくるのは当然。だから『今やってる店はモラルがないので当たり出ないぞ』と言った方が行かなくなるはず」ってのが良いアイデアだなと思いました。
【木澤】 「パチンカスにモラルはない」と言う前に、「モラル」とはそもそもなんなのか、ということを問い直す必要があると思います。モラルというものは、そもそもが非常に人間主義的な、規律=規範なわけですよね。ゾンビというのは人間主義的なモラル(=要請)によるコントロールを受け付けない主体だと言えます。「モラル」は意識の産物である。
さらに言えば、反出生主義回で僕が言及したノルウェーのピーター・ワッスル・ザッフェ(Peter Wessel Zapffe)という反出生主義の哲学者は、人間の「意識」を、角が重すぎて絶滅したと言われるギガンテウスオオツノジカの巨大な枝角に例えた上で、「人間の”意識”は進化の過程で生じた悲劇的なエラーであり、様々な苦悩を生み出す余剰物=寄生生物でしかない」といった主張をしていた。反出生主義者からすれば、意識とは積極的に抹消されるべきものに他なりません。この点からすると、意識が消滅したポストヒューマン的なゾンビたちは、反出生主義者の効用をある程度満たすと考えられるので、功利主義的な観点から見れば、出生主義者の効用と反出生主義者の効用を同時に満たす“理想的な”社会を構築するためには、人間の意識を何らかの方法で抹消させるのがベターである、という結論になります。話が飛びすぎたので急いで旋回し直しますが、それはともかくとして、意識をもたないゾンビたちの常同反復的な行動が、逆説的に社会秩序にとって脅威となりつつあるのは面白いですね。
【ひで】 東京だと「営業したらパチンコ連盟から除名だぞ」って動きがありましたね。パチンコ業界でも共同体によるサンクションみたいなのが効くんだなぁ〜っていう。

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Twitterにアップロードされた通知書。元ツイートは消えてました。

【暁】 うーん、大阪に共同体はなかったのか。
【ひで】 大阪人は商売人だから、人の商売を邪魔するようなことを外野から言っても無駄ですからね。
あと、さっきのゾンビみたいに動き続けるっていうのは、サラリーマンでもありますよね。「津波より死者が出ているコロナが流行してる中で通勤電車に乗って通勤しているのは、津波に突っ込んでいく電車に乗っているようなもの恐ろしさを感じる」ってツイートしている勤労者がいました。
【木澤】 彼らは「変化」をほとんど認識できていないんじゃないでしょうか。たとえば森山徹の『ダンゴムシに心はあるのか』によれば、未知の状況に対して、それまでとまったく異なる行動を取る生物には心が存在すると定義した上で、著者は行動実験を通してダンゴムシにも心はあることを証明してみせるのですが、この定義からすればコロナという未知の状況に対して常同反復的な反応しかできない人々には心が備わっていないということになりそうです。来るべき統治功利主義では、意識のないゾンビ的主体の集合をいかに(司牧的に)配慮するかが焦点になってくるのでしょうか。功利主義は人々の「効用の最大化」を唯一の倫理的基準に置くので、意識や人格は人々の「効用」を増大させる限りにおいて有用とされる。逆に言えば、意識や人格が「効用」の増大に貢献しないと見なされれば、そんなものは必要ないという結論に導かれる。先程も触れたように、ここに功利主義を媒介とすることで出生主義と反出生主義とが奇妙に和解(あるいは妥協としての歩み寄り)するポイントがあるように思えるのですが、それはともかく……。
【暁】 今回の件で政府を批判し始めた人が増えたっていうのもありますね。
【木澤】 他方でパチンコ店に通う客たちには思想も批判意識も持っていない、そういう意味ではもちろん革命主体ではない。それでも結果的に政府に対するたまさかの抵抗となってしまっているのが興味深く思えました。現在の権力システムにとって、パチンコ客というのはコントロール不能な〈外部〉なんです。
【暁】 なるほど。コロナ禍で、意識ある反抗と意識のない反抗が生まれてるのが面白いです。
【江永】いわゆる「死の欲動」みたいですね。

■社会が殺すのか、社会を殺すのか。

【暁】 毎年うん万人出ている自殺者には「命大事に」みたいなおためごかししかしないのに、コロナにはやたら頑張って対策してるのって何なのかなとは思いました。何万もの人が自殺するような社会にしたのは自分らじゃないのかと。ただ同時に、ここまで人を追い詰める社会だからこそ、感染拡大を抑止しているのかなとも思いました。
「既にコロナにかかったと思って行動してください」って言われても、社会に恨みのある、失うもののない人は「よし、ばら蒔いたろw」としか思わない可能性もありますよね。名古屋コロナおじさんみたいに露骨にはやらなくても、潜在的にやったろうって人はいるんじゃないかな。
【江永】イギリスのボリス・ジョンソン首相が「There really is such thing as society(じっさい社会というものはある)」と発言して話題になっていましたね。これはよく新自由主義なるものの権化として批判されるイギリスのマーガレット・サッチャーのよく引かれる言葉「there is no such thing as society(社会なんてものはない)」を受けていたらしいですね。ジョンソン首相が、社会があるって実感しましたみたいな発言のあとしばらくして容態がさらに悪化してICU(集中治療室)に入る流れはかなり印象的でした。
【暁】 それな。弱者になるまで気付かなかったんかい!って気持ちになりましたね。彼は丁度ブレグジットした直後にコロナが流行ったり、自分がかかっても回復したり、凄く運を持ってる政治家だなとは思いました。
【江永】 自分の言ったことを自分で示せる人間ってなかなかいないですからね。政治キャンペーンとリアリティショウが合体してしまった。

■ご報告「恋人ができました」

【ひで】 そういえは恋人ができました。コロナ駆け込み需要で外出自粛前の滑り込みです。告白は店内がめっちゃ明るい、店員さんがすごいホットパンツを履いているサンドウィッチ出してる店でやったんですが、「もっと場所を考えてやってよ(笑)」って言われつつOKいただきました。
【暁】 いや、マジで告白の場所は大事ですよ。場末の店とか学生街のシャ○アールで告白するのは止めてください。
【木澤】 せめてルノアールで。
【暁】 (笑)
【木澤】 椿屋とかもいいですよ。店員が全員メイド服なんですけど、メイドカフェじゃなくて本物(?)のメイドなんです。

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椿屋珈琲 銀座新館

【暁】 椿屋珈琲店、シックでいいですよね。新宿駅周辺の喫茶店はヤバめの勧誘してる人が多いのであんまりおすすめしませんが…。ひでシスさん、応援してます!
【ひで】 ありがとうございます。

■「序説 これからのリバタリアニズム」

【ひで】 そろそろ本の内容に入りますか。「これからのリバタリアニズム」の章だけめっちゃむずくないですか? ビックリしたんですけど。
【江永】 ここは文庫版での加筆部分ですよね。
【ひで】 はい、訳者による加筆部分ですね。
【江永】 ここだけ現在の状況をめっちゃ理論だてて整理しましたって感じですね。
【ひで】 この本ってサイバーリバタリアンなんですか? 中身を読む限りはただの普通のリバタリアンだったという感触ですが……。
【暁】 なんかこの章だけ浮いてましたよね。ピーター・ティールの話とか出てきたので、木澤さんの『ニック・ランドと新反動主義』を読み返しました。

【江永】 この部分は、とりわけ、アカデミア風の枠組みをローカライズして説明しましたという雰囲気ですよね。いわゆる政治的スペクトルのモデルが出てくる。もっともネット上で流通しているのは実際のアカデミックな政治学との関係がよくわからない、リバタリアン党党首の持ち出したノーラン・チャートとか、由来のよくわからないポリティカル・コンパスとか、そういう類いのものではあるわけですが。

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Wikimedia

こういう政治思想マップを展開したり進化生物学とかの話を出して傾向性は説明できるとすませる態度には少し警戒心があります。
例えばジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』とかはよく読まれますが、生物学者が歴史事象について地政学風の説明を加えたものですよね(日本での『銃・病原菌・鉄』受容に対する批判としては例えば以下のようなものがあります『日本の地理学は『銃・病原菌・鉄』をいかに語るのか―英語圏と日本における受容過程の比較検討から―』)。『銃・病原菌・鉄』とか『ホモサピエンス全史』的な本でのやり方の鉄板だよなと感じます。もっとも、ユヴァル・ノア・ハラリは軍事史を専攻していますが。専門書は読めないけど人文学について何か話せる気持ちになりたい社会人が読みそうな本というか。(以下、よくないことをいったので省略)
【暁】 江永さん、きょうキレキレですね(笑)。こういう時期だからこそ、攻撃的な人との交流は避けて、自分を大事にしてくれる人と意図的に交流をするようにした方がいいですよ。最近、相互ケアの必要性を感じています。
【ひで】 コロナでウザ絡みとかをやってる人間は増えてそうですよね。

【ひで】 ここの章以降の本文は結構簡単な話なので、話し合う部分があんまりないっていう感じがします。
【江永】 この本は英語での初出が1976年ですよね。そのころのアメリカ合衆国だったらイキりというか挑戦的な感じだったのかもしれませんが、今となっては、イキりとしても古いし、いわゆるサイコパスみたいなキレがあるわけでもない。訳者自身も何章かは邦訳から除外した旨を断っていますし。地域の違いもありますが、出版当時から考えると、この40年強で世の中の制度も感性も変わったのだなと思います。
【木澤】 著者のウォルター・ブロックに経済学の知識がどれほどあるのかよくわからないので、なんとも。すべてワルラスの一般均衡理論でゴリ押しするのは凄いなと思いましたけど。「外部性」も「市場の失敗」も、まるで存在しないかのような徹底したシカトぶりには逆に清々しいものを感じました。
【ひで】 そうそうそうそう。市場の外部性ってめっちゃ重要なのに。
【木澤】 40年前にしてもこの本は古いと思いますよ。
【暁】 以前読書会で読んだ『恋愛とセックスの経済学』(未公開回)の方が、話してて・読んでて楽しかったですし、ソースもちゃんとしてましたね。
【江永】 逆張りが楽しい、みたいなモチベでも読みづらい。元々の期待が高かっただけに少し残念に思ってしまいました。例えば、エヴァン・ラトリフ『魔王 奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男』や鈴木大介「格差社会の復讐者たち」みたいなものを念頭に、こうしたルポ的な話をもっと理論立てて護教的に書いたようなものかと思いなしていたんですが。学問的な知見の援用が時代の限界とかを鑑みても、初等的でした(『格差社会の復讐者たち』)。とはいえ、よりポジティヴに評価すれば、アウトサイダーはちゃんと経済に組み込まれているんだ、と主張することに新規性があることが前提で書かれている本だと思います。そして、それを言うのが大事だった時代があるんだな、というのは想定できなくもないです。
【暁】 そういう流れもあって大麻合法化とかも来ているんでしょうな、という気持ちで読んでました。
【ひで】 訳者が各章の最後に「現代だとどういうものに応用できるか」を挟んでいるのは良かったですね。

■「女性差別主義者」

【木澤】 僕の本『ダークウェブ・アンダーグラウンド』でも少し言及しているのですが、この本はダークウェブ上に存在したブラックマーケット「シルクロード」のフォーラム上で行われた読書会(DPR'S BOOK CLUB)で採り上げられていた一冊です。「シルクロード」の運営者DPRは熱心なリバタリアンで、読書会でもリバタリアン系の本が多く読まれていました。たとえば第一回目の本には、Lew Rockwellというアナルコ・キャピタリストでかつ右派リバタリアンの『The Left, the Right, and the State』という本が選ばれています。
『不道徳な経済学』(原題:Defending the Undefendable)のスレッドが「シルクロード」のフォーラム上に立てられたのは2012年11月17日で、以下のURLからログを参照することができます。
https://antilop.cc/sr/users/dpr/threads/20121117-1911-_DPR_S_BOOK_CLUB_DEFENDING_THE_UNDEFENDABLE.html
どういった議論が出ているかの一例を試みに挙げてみますと、たとえば「中絶」の問題です。ある一人のユーザーは著者ブロックの中絶に対する見解に疑問を呈しています。本書の「女性差別主義者」のチャプターの中で、著者は「国家は中絶の禁止によって女性から自己所有権を奪い、奴隷並みの扱いをしている」(82頁)と述べ、自己所有権の観点から中絶を肯定しています。けれども、これは彼のリバタリアン的な原則と矛盾しているのではないか、とそのユーザーは反論します。「もし女性が自分の中で育っている新しい命を一方的に破壊する権利を持っているとしたら、それは胎児に対して「暴力的」ではないでしょうか。」つまり、中絶という女性の自己所有権の行使は、翻って胎児の自己所有権(というのがもしあるとすれば)に対する侵害に他ならないのではないか、というロジックですね。
【江永】これは生命倫理関連の知り合いから聞いた話ですが、例えば人工妊娠中絶を擁護する議論の中で、胎児が母体から強制的に栄養を奪っている点に注目して、いわば就労意欲のないひきこもりの支援を打ち切るようなものだという理屈も立てられるとか。
【ひで】 それって何主義になるんでしょうか。
【江永】 すみません、ちょっとうろ覚えなので。いわゆるパーソン論、どこから人格を尊重されるべき個人なのかといった議論に関連しているだろうとは思います。そういう意味では、主に問題になるのは自己所有権なのかなと思います。自分の身体は自分だけが所有している、との理屈は、妊娠関連では通用するかあやしくなるところがありそうなので。
【ひで】 Twitterで「10万円 胎児」で検索するとおもろいっすね。妊婦が「お腹の子供に対して新型コロナ特別給付金の10万円もらえないのは、赤ちゃんを無視された気持ちになる」って言ってるのが出てきます。
【暁】 その文脈で胎児の人権問題が出てくるの面白いですね。ちなみに民法では胎児にも相続権がありますが、刑法では胎児は人でないので、胎児を殺しても殺した数にカウントされないんですよね。(『妊婦が殺害されたら「被害者」は1人か、2人かーーそもそも胎児は「人」なのか?』) 
【ひで】 へ〜そういう非一貫性があるんですね。
【江永】 Wikipediaにも「胎児の人権」ってページがありますね。
【暁】 日本だと障害当事者の団体が、胎児に代わって出生前診断の批判をしていますね。
【江永】 中絶とはまた少しちがう話かもしれませんが、着床前診断などに関連して、「非疾患遺伝子に関する情報など、利用可能な遺伝情報を基に、最善の人生を送る可能性の最も高い胚、または胎児を選択すべきである」といった議論をしている学者、ジュリアン・サヴァレスキュもいますね。
【暁】 中絶の件はいろんな要素が混ざり合っているので話は尽きませんが、そもそも中絶の前に、中絶に至るような行為をどう防ぐか(コミュニケーションや、ジェンダー、性教育問題など)、もしもの場合アフターピルを手に入れやすい環境をどう整備するか、という話もすべきだと思うんですよね。コロナ下でアフターピルがオンライン診療でもらえるって話は出ていますが、日本だと診察料等含めて2万円くらいかかることもあるので、非常にアクセスしにくい。まずこの環境をどうにかしないといけないよなと思いました(『FRaU 避妊してくれない…コロナ禍でも需要増!「緊急避妊薬オンライン診療」の方法』)。
【江永】 そういう状況はかなり違いますよね。
【ひで】 自閉症同士でも子どもを持つのはありですよね。自閉症なりADHDなりの遺伝率って7割なんですよね。だからADHD同士で子供を作れば、健常者でできた社会に一石が投じる意味がある。
【木澤】 そうやってADHDが増えれば、多数派が変動することもあり得ますからね。まさにADHD加速主義。
【暁】 僕は自分の苦しみを自分の代で絶ちたくて反出生主義をとっていますが、そういうポジティブな発想はいいですね。闇の自己啓発をされました。現少数派としてとても生きづらさを感じているので、そんな風に、タンポポの花を増やしていけたら…とは思います。それでもやはり、死の魅力には抗いがたいですが…。

【暁】 本の内容に戻りますが、なんか全体的にソースが薄くて説得力が…という感じがありました。この女性差別の章とか、ここに書いてある内容ってすでに乗り越えられた議論では。「まだここで消耗してるの?」という感じになりましたね。男女平等の賃金は企業の女性雇用を鈍化させるから、市場に任せて女性の賃金を下げたままにしておけってのは、ツッコミどころ多すぎます。そういうことすると困窮する女性が増えるので子どもの貧困も増えて、社会全体の損失になる話とか、スーザン・M・オーキンの『正義・ジェンダー・家族』に載ってるので読んでみてほしいです。
そもそも今の日本も事実上、性による賃金格差はありますし、非正規で大変な思いをして働いている女性は多いわけです。そんな状態で子どもを望めるわけがなく、市場に任せた結果がこの少子化というパイ(市場規模)の減少なわけで。この格差のせいで社会全体が損をしてるんですよね。経済の用語で言えば「共有地の悲劇」です(『厚生労働省 男女間の賃金格差解消に向けて』)。
そして企業でも政府でも、意志決定の場に女性が少ないことが問題になっている。低賃金でも働けりゃ文句ないでしょ?と言ってる場合ではない。金持ち高齢男性ばかりの政府がろくでもない政策ばかりやってるのを見るに、今はまさに、意志決定の場に女性や多様なバックグラウンドのある人を登用することの大切さを痛感できる状況だなと思いますね。

■「売春婦」

【江永】 この本での議論だと、例えば、現代で言えばUberEatsって自発的な契約なんだからいいじゃん、というような話になっていますね……。今では、そこで止まってはいけないのではないかという話がいろいろ出てきている気がする。
【ひで】 ホンマ議論の段階が一歩前に留まっている。松尾匡に批判される。
【木澤】 この本の著者は、人間は自由意志=意思決定能力が備わった自律的な存在であることを暗黙の前提にしているようですが、実は人間って大して自由ではないし、そういう無力感って現在では既にある程度共有されてると思うので、こういうことを言われると少しゲンナリとしてしまいます。
【江永】 楽観的というか、理念とか建前で言うにしても、ゆるすぎる想定になっている気がする。
【暁】 環境によって自由って簡単に奪われるじゃないですか。本人が選んだように見えて、それを選ばざるを得ないように追い込まれてる事が多いので、そういう状況を無視して持論を展開するのはちょっと…。昨今の外出・営業自粛もまさに「選ばされてる」わけですし。
【江永】 本書の話、セックスワーカーとかキャッチなどが労働者の範例だという打ち出しが鬼面人を驚かすような効果を持っていた時期もあったのだろうと思うんですよ。だけど、感情労働やらマッチングやらが取り沙汰されるような雰囲気の中で読むと、まあそうだろうなというような感じになってしまう。文脈というか、「あたりまえ」や「まっとう」の基準が違いすぎる。
別の本ですが、ミルトン・フリードマン『資本主義と自由』を読んだときもそう感じました。これは1962年初版で、さらにそれ以前の講義などを元にしているので。この本での自由って、ニュアンスが自分の想定とはまるで違っていて。例えばフリードマンは、ロビンソン・クルーソーが持っている意味での自由は扱いませんと断り書きをしているんですが、自分はそれに驚いてしまった。厚生経済学でいうケイパビリティ(Capability)・アプローチみたいな観点はここにはないんだなと(アマルティア・センの議論に由来するはずだから当然なんですが)。何かをするのが制限されない、ゆるされているという自由の話だけで、何かをすることができるために必要なものとは、といったものが語られないところに、限界があるようにも思えました。
【ひで】 たしかにセン的な自由を語るべきだ。

■「ダフ屋」

【木澤】 「ダフ屋」のチャプターで、チケットを転売して稼ぐダフ屋が出てきますね。著者は、ここで書かれているダフ屋を、需要と供給を均衡させるヒーローとして描いているわけですが、たとえばそれを今回のマスク転売の件に当てはめると、マクスを買い占める行為は供給曲線をいたずらに下げて需要過多が発生しているわけだから、需要と供給の不均衡の原因になっているんですよね。これは市場の失敗の典型例。著者が書いているダフ屋はどちらかというとレアケースだと思います。
【ひで】 日本ってなんでマスクを定価で売ろうとするんでしょうか。数が足らないのだったら値段が上がるのが自然なのに。ぼく新大久保で住んでいるんですけど、バングラディッシュ人が道端でマスクを50枚3500円で売ってますよ。
【暁】 各地のタピオカ屋でも続々とマスクを売ってるんですけど、どれもそれくらいの値段なんですよね。なぜなのでしょうか。
【ひで】 自由市場で落ち着いた均衡価格が本当の値段なんです。うちは実家が居酒屋なんですけども、昨今の新型コロナで忘年会・新年会が吹っ飛んでしまってめちゃくちゃ困っています。で、何をしているのかというと広々とした宴会場でマスクを作っている。父や母、弟やその嫁を巻き込んで朝6時から夜23時まで布マスクを手作りしている。今は布マスクの値段が700円〜1000円ぐらいなんですが、それぐらい高い値段で売れるからこそこういう家庭内手工業的なやり方で市場に布マスクを供給する人たちも出てくる。高い値段は供給サイドを刺激して流通量を増やすんだから、やっぱり自由に値段を決めることは尊いのだと思います。

■「麻薬密売人・シャブ中」

【木澤】 このチャプターは「シルクロード」のフォーラム上でもやはり積極的に議論されていました。ドラッグが違法なせいで末端価格が不当に高価格となることで、中毒者が強盗などの犯罪に手を染めざるをえなくなるという問題ですね。
そもそも、なぜ麻薬が違法なものとされ、断罪されるのかという系譜学的な問いについては、たとえば渡邊拓也『ドラッグの誕生』などに詳しいのでそちらを参照することをおすすめします。大麻やモルヒネはもともと医薬品だったんですけど、それが19世紀におけるイタリア学派犯罪人類学と結託した新派刑法学や、公衆衛生を問題にする衛生学が台頭してくるに従って、薬物中毒者はそれ自体で非難されるべき社会的逸脱者の烙印を押されるようになります。この「医薬品からドラッグへ」という移行過程にあるのは、物質や使用者の側の変化ではなく、我々の側の認識枠組みの変容である、と『ドラッグの誕生』の著者はいみじくも指摘しています。
【江永】 ギャンブル中毒とかもドラッグ中毒ぐらいやばい気がするけど……。ソシャゲの課金ガチャ規制の話とかは印象に残っています。
【木澤】 それで香川県ではゲーム規制ができたという。
【江永】 で、某ソシャゲのキャラクター(設定では香川県出身のゲーマー)が県から引っ越すのではないかと話題になっていました。
【暁】(笑)

■「土地にしがみつく頑固ジジイ」

【ひで】 不動産って名の通り動かせない財なんですけど、この章って動かせないことによって出てくる外部性の話が抜けてますよね。だからスプロール現象が問題になったり都市計画が重要だったりする。「全部市場で解決するぞー」っていう姿勢から言えば、デベロッパーがヤクザを雇ってトラックをジジイの家にツッコませますよ。いわゆる地上げすりゃいいってことになる。
【暁】 何故か地上げに反対してた人の家に限って、火事に遭いやすいみたいな都市伝説ありますよね…。
【ひで】 この本の理論でいうと、「他人に対する暴力がダメ」だから一応そういう地上げ行為はやっちゃダメになっているんだろうけど。
【江永】 ブロックは、国家が介入しなければ市場での自由な取引が解決してくれるだろうという論調で話してますよね。
【木澤】 現在のネオリベラリズムや新自由主義の理論では、中央銀行が金融政策を介して金利やマネタリーベースを操作することで市場を調整することをある程度前提としていると思うのですが、そういう意味では中央集権的なシステムによる一切の介入を拒絶するリバタリアニズムはそこともギャップがあるんですよね。だからこそ、中央銀行に依存しないビットコインのような分散型台帳の構想も出てくるのでしょうが。
【江永】 現行での財産の私的所有を非効率な独占として批判し、所有権の部分的な解体を打ち出す立場も出ているそうですね。『ラディカルマーケット』とか。法と経済学、また意思決定論の専門家が共著した本ですが。配分効率性がわるいっていうのは、タンス預金にすることが経済成長を阻害しているとかの話なのかなと思っていましたが、ちょっと違うのかな。
【ひで】 タンス預金にしちゃうのが成長を阻害するって……みんなアニマルスピリットを持っていないんですか? 増やしたいと思って株買ったり事業に突っ込んだりするでしょ。
【江永】 そこを個々人の欲望や判断力に任せるのではなく、制度のデザインで支援するって感じなのかなと思いました。
【ひで】 資産をどう運用していいのかわからない、って若い人たち向けに最近は勝手に投資運用をしてくれるロボアドバイザーが流行ってますよね。まぁ無限にタンス預金しているような年寄り連中はしないでしょうけど。

■本邦におけるネオリベとは?

【暁】タンス預金で思い出しましたが、某与党とか某大阪党的ネオリベ(?)の何が腹立たしいかって、預金をするな、金を使えって言ってきたくせに、コロナで困窮する人が続出すると「預金(備え)もしていなかったのか」って言ってくるところですね。
【江永】 政権に関して話すときは「ネオリベとはどういうものだと思っているか」って話を確認したほうがいい気がします。例えば世襲議員が自分の財産を守るために自己責任って言ってるだけだとしたら、それはほんとうに新自由主義とか資本主義とかの問題なのかって疑う余地があるだろうし。
【ひで】 ネオリベって言いながら、個人事業主に100万円、法人に200万円配るって言ってるじゃないですか。あと法人の家賃補助をするとか。これってネオリベというよりかはポピュリズムですよね。ネオリベ的には今回のコロナショックに耐えられない法人なんか潰したらいいはずなのに。
【暁】 確かにそうですね。民営化推進する部分もあれば、大きい政府感ある場合もありますし。思想性があるネオリベラリズムではないです。Twitterでネオリベと言うとき、後先考えないコストカッターや、格差を拡大して金持ちにとって有利になる策をとってるだけの人とかが想定されてる気がします。
【江永】 私の節穴を差し引いても、肯定否定以前に理念がよくわからない。アメリカ合衆国だと、ビル・ゲイツがワクチンつくりますと言う話が出て話題が盛り上がり陰謀論まで出ていましたが、ああいうノリの金満家って日本にいるのでしょうか。私にはあまり探せませんでした……。
【暁】 孫正義がマスク買い占めたり、楽天の三木谷がPCR検査して医師会に怒られてましたね。ひでシスさんも以前言ってましたけど、マスクはほんと国際市場で奪い合いにしかなってないのが悲しいです。
【ひで】 日本の金持ち最悪すぎる。
【木澤】 ホリエモンにも期待したくないですしね。
【暁】 ホリエモンはなんかロケットで忙しそうな印象があります(※この読書会の後、堀江氏は『東京改造計画』を上梓。東京都政への提言が盛り込まれた内容のため、都知事選への出馬も噂されましたが、不出馬となりました)。
【江永】 お金が儲っているひとが慈善っぽいことをやるビジネス上のカルチャーって、やはり合衆国のほうが存在感がありますね。
【ひで】 アパホテルグループがコロナ患者を収容するためにホテルを使っていいよって言ったの、あれ慈善じゃなくてビジネスのためですよね。外出自粛でホテルに泊まるお客さんが減っているから、代わりに軽症患者を入れることにしただけなのに褒められている。
【江永】 アパぎらいな人たちはキレてましたよね。
【暁】 それな。左寄りの人はコロナに罹ってアパに収容されないように気をつけなきゃって話もありましたね。隔離中、本を持ち込めなければ、右派であると有名な社長の伝記を読むことになってしまうので…。
【江永】 それなら、折角読めるので本から弱点を探る、くらいの読み込みをするとかの身の処し方もありそうですが。この前の読書会にも持ってきましたが、稲葉振一郎『「新自由主義」の妖怪』(Web連載単行本)新自由主義という言葉が融通無碍に使われ過ぎているのではという問題意識から、資本主義の捉え方をめぐる議論を、とくに産業社会論を再評価する形で振り返っています。
【暁】 どんな話題でも安定してる稲葉さんぱないっすね。

■資本主義の想定する「市場」の違い

【江永】私は、そもそも新自由主義とか資本主義って何? っていう疑問があります。
【暁】その心は?
【江永】 新自由主義と口にしたときに、市場バンザイってことだという話になっているけども、今の状況ってそう呼んでいいの? っていうような疑問です。例えば、縁故関係で贔屓するとかはもう資本主義でも新自由主義でもなくただ制度や理念を口実にした縁故関係での贔屓があるだけではないのか、とか。
【木澤】 デジタルレーニン主義にも資本主義はあるわけじゃないですか。そこにある資本主義とは何なのかということ。
【ひで】 市場は土壌によっていろいろありますから。
【江永】 この『不道徳な経済学』における市場経済って、とても大雑把にユートピア的なものが想定されてる様に見えます。それはあちこちに現にあるとされるところの、例えば日本の市場とはだいぶ異なるのではないかと。あとこれは僻目かもしれませんが、現今の「資本主義」や「新自由主義」の批判を見ていると、道徳的な感性にすぐれている方々が、しばしば僭主や君側の奸のようなものとして特定の人物をいわば「資本主義者の腐ったようなやつ」として難じているように感じられてしまうことがあります。プロフェッショナル意識の荒廃の原因が資本主義に帰せられているのかと疑わしくなることもあります。 
【ひで】 資本主義は生活だけではなく政治体制すべてにも浸透しているんですね〜
【江永】 もちろん、なんでも市場での自由な交換で解決できる、それが資本主義だという物言いも、非常に拙いユートピア論で、それが問題の提起やその検討の回避に利用されているなら有害だとは思います。
【木澤】 ユートピアとしての資本主義、あるいは市場原理主義やリバタリアニズムのヴィジョンの起源にはジョン・ロックの所有権の理論が多かれ少なかれ影響していると思うのですが、ロックが『統治二論』の中で、新大陸アメリカの状況を現実の「自然状態」と捉えているのは示唆的だと思います。ロックの所有権の考え方は、「自然状態」と神から発する超越的な道徳法則であるところの「自然法」とに深く依拠しています。乱暴に要約すれば、ロックにとっての社会契約とは、自然法の命じる、自己保存、人類保存という共通善の達成を目的としているとみなせる。なぜ自己保存が神の命令なのかというと、人間は神の「所有物」だからですね。こうして、各人たちが自己保存のために衣食住などに関わるものを所有して確保しておく所有権が生まれる。これは新大陸という自然状態に置き換えて考えるとたしかにわかりやすい。メイフラワー号とともに海を渡ってきたピューリタンたちにとって、衣食住にまつわるものの所有はまさに生死に関わっていた。ロックの自然状態の根底にあるのはホッブズ的な万人の万人に対する戦争ではなく一種のサヴァイヴァリズムです。
付け加えておけば、アメリカの西部フロンティア開拓もロックの所有権論と相性がいい。ロックにとって、土地とは自然法を遵守することができるために神が人類に与えた共有地です。ここから、共有物である土地に自身の労働を付加することで自己の所有物とすることを認める「労働所有権」という概念が出てくる。西部映画とか観てると、土地とか不動産の揉め事ばかり出てくるんですけど、アメリカはこの時代から一貫して変わってないことがよくわかる。
フロンティア消滅後は、サイバースペースにフロンティアを求めるサイバーリバタリアニズムが出てくるわけですけど、サイバースペースが「空間」の隠喩を用いているのも、そういう意味では自然なんですよね。
【ひで】 そのサイバースペースで発掘したビットコインとかは紛れもなく採掘者のものになるわけですね。フロンティアにおける土地のように。
【木澤】 そうですね。サイバースペースには無限に土地があるので。それと、リバタリアンというのは中間共同体、つまり地縁/血縁と国家のあいだを志向する側面があると思ってて。たとえばアイン・ランドの『肩をすくめるアトラス』なんかも典型ですけど、要するに一部の金持ち資本家たちがEXITして山奥にコミュニティを建設するという話。ピーター・ティールの海上都市計画や新反動主義も同種の志向性を備えています。どうもここには、新大陸における相互扶助や自生的秩序を重んじるサヴァイヴァリズムの名残があるような気がしていて。

■日米のコミュニティ比較

【江永】 アメリカ文学研究者の藤森かよ子は、銃を所有することを肯定するタイプのアメリカのフェミニズムが、国家に依拠しないコミュニティという理念を体現する方向に開かれているのではないかと論じていました(『「アメリカのフェミニズム」の暴力志向を考える--憲法修正第二条と民兵と脱国家世界の市民像』藤森かよこ)。
【暁】 それだと、アメリカではセカイ系は流行らなさそうですね笑。
【江永】 ただ、さいきんだとそうでもない気もします。フレデリック・ジェイムソンというアメリカのマルクス主義的な文芸批評の大御所がいるのですが、近年出した異様なユートピア論があって。私の理解では、いまのアメリカ合衆国でユートピアを抗争するならばに国民皆兵制を利用するしかないと言ってるんですよね。いうなれば戦争なき徴兵制がアメリカのユートピアをかたちづくる。で、そこではなぜかティーンエイジャーのスクールライフもののフィクションが手がかりとして言及されたりする。唐突に戦争と学園がつながるのが、かなりセカイ系っぽい雰囲気だと思いました(ユートピア到来のイメージが、ボタン押したら世界のシステム変わる、みたいなSF小説に仮託されているという話もあって、なおさらそう思いました)。
【木澤】 日本だと共同体といえば地縁だったり地域社会万歳みたいな感じになりがちですけど、アメリカのコミュニティは自発的に作るんですよね。それこそスタートアップ企業みたいな感じで。ここには新大陸に入ってきた、ルター派に対抗したリベラルなプロテスタンティズムの影響もあるでしょう。彼らは国家や政治的支配者に依存しない教会をそれぞれが自発的に作ることで教会の自由市場化を推し進めようとした。この政治と宗教の分離という原則は、政府による国営教会の設立を禁じた合衆国憲法修正第一条に刻印されています。
【江永】 イニシエーション(通過儀礼)がちゃんとあったり、会則があったりして、契約意識が強いそうだと耳にしました。
【暁】 宗教組織とかは想像しやすいんですけど……具体的にはどういう感じなんですか?
【ひで】日本に置ける契約ベースの共同体……アルコール依存症のグループみたいなもんですかね。
【木澤】 Facebookみたいなものですかね。
【暁】 それMixiのコミュニティと変わらんような。
【木澤】 Mixiは身内重視だけどFacebookはネットワークを重視するイメージ。
【江永】 アメリカだと利益集団、圧力団体がたくさんありますよね。ああいうのをイメージしていたんですけど
【暁】 ああそれもあるか。それで思い出しましたが、日本はむしろ、議員にロビイングをする圧力団体もっと作らなきゃなと思いました。今回、エンタメ業界が切り捨てられてるのを見て、声を上げないとダメだなと痛感しましたね。

【江永】 フロンティア的なお話の問題点として「奴隷」についてどう考えるのかというのがありそうですね。
【木澤】 リバタリアンのいう自己所有権論にも矛盾があって、自分が見つけた土地に労働を付加する=開墾すればそこは自分の所有物になるというジョン・ロック的な労働所有権論がベースにあるわけですが、よくよく見てみるとそこは元はインディアンの土地だったりするんですよね。
【暁】 そう、リバタリアンが既に持ってる財産って「本当に正当性のあるものなのか?」と思ってしまうことがありますね。金持ちがリバタリアンになるのはそりゃそうで、自分の財産を守りたいだけのポジショントークに過ぎないやろって思ってしまう。
【江永】 アメリカ文学研究の論文で、「大西洋奴隷貿易における人間の商品化が、ロックによるリベラルな個人の定式化に必要な前提条件だった」という議論があることを知り、驚いたことがあるのですが、それを思い出しました(ジェニファー・グリーソンの議論。『チャールズ・ブロックデン・ブラウンと所有の不安』折島正司から引用)。雑な反応になってしまいますが、労働する肉体にも差異があるはずだから、誰もが同じように労働すれば所有できるとは言いがたいのではと思ったりします。
【木澤】 自己所有権というのは神から与えられたものなので平等という考えなのでしょうか。個々の肉体も元々は神の所有物であるという。
【江永】 よしんば、神から与えられたにしてもバラつきありすぎではと思ってしまいます。むろん、社会契約的な擬制というか思考実験を通して公正を考えるには、そういう事柄にも注意しないといけないという話をしたのがジョン・ロールズの無知のヴェールなんだ、などと言っても構わないのではないかとは思いますが。ロールズの打ち出したのは、リバタリアンっぽい思想信条のひとたちにもギリギリ通じるような配分的正義論の筋立てなんだろうとは思います。ログインボーナスがバラついているのに詫びアクションしない運営はダメでは? みたいな。もっとも、こういう話に対して、例えばマイケル・サンデルなどが「みんなアバターをもらう前からログインしてますよね、というかこの比喩使えないのでは?」って話を向けていたのだろうとも思いますが…。

■「コロナ以後」の人のつながり

【暁】 本の序説でもチラッと出てきましたが、コミュニタリアニズムをどう評価するか悩んでます。僕は共同体嫌いなんですけど、もし自分に合う共同体を見つけたら手のひら返すかもなと。
【ひで】 日本は地縁共同体が多いから微妙ですが、木澤さんの話のように出入り自由のコミュニティを自分で探すという世界観はいいですね。
【木澤】 ロバート・ノージックのメタ・ユートピア構想も複数のコミュニティの共生可能性を問うものでしたね。そういう意味ではすごくアメリカ的だと思います。先程の繰り返しですが、ノージックにせよリバタリアンにせよ、国家は大嫌いだけどもコミュニティは肯定する人は多い。国家と個人の間にどういった共同体を作っていくか、という考え方を取るのがアメリカ的。こういった話は渡辺靖氏と井上達夫氏の対談でも語られていましたので詳しくはそちらを読まれることをおすすめします。
https://dokushojin.com/article.html?i=5392 (サイトリニューアル中に付きリンク切れ。タイトル『対談=井上達夫×渡辺靖<リバタリアニズムから時代を考える時代> 』)
【ひで】 大学のサークルとかもそうですね。あと学校のクラブとか
【江永】 学校というものには、地縁じゃない共同体のあり方を示せるかもしれない力も秘められていますよね。
【ひで】 でも実際は小中学校については校区があったりPTAがあったりして地縁共同体とガチガチにつながり合っている。
【暁】 地縁じゃない共同体っていうとサッカーファンの集まりっていうのを思いつきました。浦和とかの居酒屋に行くとそういうのがあるらしいんですよね。
【ひで】 まぁでも契約主義ではないですよね
【暁】 確かに…。そしてそういうコミュニティも、このコロナで粉砕されてしまった。
【江永】 接触が暴力だっていうのは、理念的にはみんな、「他者性」への寛容みたいな話題でそういう主張をしてきた野ではないかと思います。ただ実際にそういう状況になってしまったときに、「こんなはずでは」という感じになっているのが現在なのかなとも。
【暁】 今回の読書会は意外とうまくいってますけど、新規で出会ったりコミュニティ作るのは無理ですよね、いま。
【ひで】 コロナ以降の人間つながりってコロナ以前の人間のつながりの資産を活用しているだけで、新しいつながりを作るのはむずいって話があるっていうのをどっかで見ました
【暁】 確かに。ここは大体誰がどういう語彙を使うかわかってるから意思疎通できますけど、語彙が全然違う人なんか対面でも聞き取るの難しいですからね。
【江永】 顔を合わせるのって、基本的な信頼関係を作る上で大事なんだなあと実感しますね。
【暁】 Zoom劇団みたいなことをやっているグループもありますよね。その名も、劇団テレワーク(「“すべてテレワーク”で企画から稽古、公演まで行う「劇団テレワーク」が旗揚げ」)。
【ひで】 演劇こそ身体性がすごく重要だと思うので、どういう形になるのかっていうのは興味がありますね
【暁】 ここの劇団の「ストーカー」がかなり面白いです。あとは劇団ノーミーツの「リモート合コン」とか。アイディアがいいですよね。
【ひ】オモロイ。
【暁】こうして皆さんと話してて、やっぱ今だからこそ、小さくていいから、安心できるコミュニティを作りたいなと思いました。地縁に拠らないいい感じの中間団体に所属したい気持ちが沸き上がっています。Twitter漫画とかでよくある、恋愛による救済を否定はしませんが、それよりも集団による相互救済の方が、再現可能性があるのかなと。具体的にどうするという段階ではないですが、とりあえず仲良くできそうな人と交流してみるところから始めたいなと思います。あるいは逆に、独り身だけど自治体の介護助成などを駆使して幸せに暮らしています!というライフハックなどに魅力を感じますね。なんというか、既存の健常者中心社会からEXITしようとすると何故か恋愛に回収されがちなので、それ以外の選択肢を探っていけたらいいなと思いました。こうしてみると、今回わりと自己啓発的な話題が多かった気がしますね。

■その他の章まとめ

【ひで】 本書については出尽くしたと思うので、最後に飛ばした章についてざっくりコメントしておきます。
ポイ捨て→市場外部性の話が漏れてる。
環境を保護しない人たち→ ここも市場外部性の話が漏れてる。
最低賃金法を遵守しない経営者→ ケインズのねっとりした賃金の話が漏れてる。

■本書を読み終えて

【ひで】 内容が薄くて厳しかった。ぼくは環境経済学出身なので、この本に関しては市場の外部性みたいなのは気になりましたね。市場の外部性で最も例として引き合いに出されるのは汚染物質を垂れ流しながら製品を作る工場なんですが、儲かれば環境汚染していいってわけではないリコねぇ。
【暁】 ネト○ヨが好きそうなネタが多いけど、全体的に各項目の分量やソースがなかったのが残念でした。自分はマルキ・ド・サドが好きなので、本書は肩透かし感があったんですよね。なんかもっと狂った理論武装してるのを想像していた。
【江永】 もっと理屈だった悪党として頑張って欲しかったです。
【木澤】学部一年生のミクロ経済学の教科書の前半部だけを使ってゴリ押ししてる感じ。教科書の後半部になると外部性や市場の失敗の話が入ってくるのでもういけない。でも本書後半「中国人」のチャプターに出てくる「比較優位」の話は現在でもわりと耐久度があるということになっている。学部生が貿易理論として絶対に押さえておくべきヘクシャー=オリーン・モデルもリカードの「比較優位」理論をベースにしているし。
【ひで】 リカードの比較優位は数式が明確でわかりやすいですからね。
【木澤】 小学生でもわかる理論ですからね。すごく強度がある。ここだけの話、僕が学部生だった頃、個人的に一番叩き込まれたのはアダム・スミスでもケインズでもマルクスでもなくリカードの偉大さでした。こういうことを言うとTPP反対派からボコボコにされそうなのであまり大声では言えませんが……。
【暁】 経済は基礎理論を抑えただけの身ですが、それでもこの本の理論はちょっと…となりましたね。この本の解説・批判つきの本を出してくれたらめっちゃ読みたいなと思いました。

【江永】 『ラディカルマーケット』を読みたい気持ちが高まりました。私有財産制をどう考えるのかなど。前も言いましたがそれこそニック・ランドは所有物(property。資産ないしは財産の方が適訳か)というものはいまだ十分な哲学的基礎づけがない、と批判していました。
 ただ、全体的に今でも通用しそうな問題点が埋まっている気はしました。一番分かりやすかったのは、最後の、幼い子供を働かせる資本家の話ですね。子供が親をクビにできるというような話がされていて、それは毒親を縁を切るみたいな姿勢とも噛み合いそうで、よかったですね。市場の力で共同体の軛を破壊するぞ、みたいな理論が必要になるときところも、やはりあるので(付言しますが、私は「毒」親ってあまり適切な表現ではない気もします。親は親で「虐待の連鎖」の中でそうなったかもしれないし、機能不全家族は個々人のメンタルのとか人格の問題で済ませるより社会問題と見るべきでしょう。わるいやつが発生する構造が不完全なわけで。解散や隔離でさえ懲罰でするわけではない。有毒な元凶を排除すればうまくいくと見るのではなくて、無毒化するように制度や関係性を変えるという観点がいる気がする)。いわば「キッズ・リブ」のようなものには、一考の余地がある気がします。市場には自律をエンパワメントする面もある。
 この前、百合ものの二次創作小説にハマったから新興宗教から離脱できたという方の記事がありました。自分が埋め込まれていた共同体から自律して離脱する点で、それはある日、親がネトウヨになっていたと気づくみたいな話と表裏一体でもあります。勉強で違うノリになる、といった話にも通じ合う。どうも資本主義にもそういう離脱をもたらす側面が含まれているっぽい。共同体を破壊するときに、共同体を超えた普遍性も持ち込む必要があるわけですが、そこで市場のパワーを使うのはいいと思いました。少なくとも、私は切り捨てて批判することは難しいなと思いました。
【ひで】 「共同体を破壊するには共同体を超えた普遍性を持ち込む必要がある」って、最後にいいこと言いましたね
【江永】 なんだかんだ言ってわたし市場や加速主義が好きですからね。
【ひで】 この本って市場主義なクセにあんまり加速主義的な面が出てこなかったですね。
【江永】 ちょっとだけ出てきてましたよ。環境保護の章で、もし太陽と一緒に滅びるのであれば云々という部分。
【暁】 そういうこと言ってると「東京モンの言うことが」ってツッコまれますよ笑。
【江永】 私は幼少期に方格設計された都市で育ったので、初めて東京に来たとき何じゃこりゃと思いました。東京を都市とか都会の代名詞にされると勘弁してくれと思う。ごちゃごちゃに膨れて原型のわからなくなった城郭都市って感じで、フロンティアの夢を見る場所ではない感じがする。
【暁】 まぁ東京も家康が左遷されるまではフロンティアだったんでしょうけども(笑)。金持ちの階級は固定化し、成り上がりは厳しいのでフロンティア感はないですね。ただ、田舎よりは自由ですよ。しがらみが少ないので。
【江永】 あー。……それはそれとして、 日本で(問題含みな意味でも)「フロンティア」感のある事柄としては、満蒙「開拓」や北海道「開拓」が挙げられると思いますが、北海道はSFやセカイ系とつながりがありますね。もっとも、北海道と言っても地域による差異の方が大きいのではないかという点に留意もすべきでしょうが。例えば「要塞シリーズ」といった架空戦記物で知られる荒巻義雄や『最終兵器彼女』の高橋しん、またケンジ・シラトリが北海道出身で、あと評論家では藤田直哉もそうでした。同じく北海道出身の評論家、岡和田晃が、北海道とSFというテーマで大部の論集をまとめています。
【暁】 そういう切り口もあるんですね。本土から離れた外部として、沖縄が舞台だと洒落にならないから、北海道になってるのかなと一瞬思いました。

■最後に、次回の課題本を決めましょう

【暁】 次の本、どうしますか?リベンジで『ヒトの目 驚異の進化』にしますか?
【木澤】 でもハヤカワ2連続だと媚びていると思われそうですね
【ひで】『統治と功利』が手元にあります。多分この読書会で薦められた本ですね。
【木澤】 それムズいですよ。『積ん読こそが完全な読書術』はどうですか?
【江永】 『読んでない本について堂々と語る方法』の内容をフランス文学研究から別のものに置き換えつつ、アップデートした感じの本ですね。
【暁】 読書猿さんの『問題解決大全』、はハウツー本なので微妙かな? 新書だと『ケーキの切れない非行少年』、『女性のいない民主主義』とかが手元にあります。
【江永】 鈴木大介『老人食い』。不道徳な経済学をやったのなら老人食いもいいかも。
【ひで】 今回の読書会がアウトプット寄りになってしまったので、もうちょっとインプット寄りの本にしたいですね。
【暁】 良いこと言いますね。その方向性で良いと思います。
【木澤】 『脳の意識、機械の意識 脳神経科学の挑戦』っていう本があるんですが、これは新書なのに内容が厚いですよ。要するに脳科学・神経科学における最新の知見をだしつつ、機械に意識を置けるのか、って話をしている
【ひで】 『機械との競争』はどうですか?
【木澤】 それ絶版になってますね
【江永】菅付雅信 『動物と機械から離れて』っていうのが気になってました。Wiredのノンフィクション連載の書籍化ですね。編集の方が色んなひとたちに話を聞いている。
【木澤】 一周回って『暗黒の啓蒙書』とか
【ひで】 これは6月かな〜。
【江永】 アントニオ・ダマシオ『進化の意外な順序』
【木澤】 ダマシオですか。認知心理学系の本だと、スタニスラス・ドゥアンヌの『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』も面白かったです。

【暁】 みんな意識の話が好きですね。僕も好きですけど。皆さんの意識への関心はどこからですか? 僕は生きていることに疲れてしまったので、理想のご主人さまに仕えて自分の意識を失った状態が幸せなんじゃないかと思っています。だから意識を失いたいんですよね(中々巡り会えないので、募集した方がいいのかなと悩んでいます)。
【木澤】 先ほども話しましたが、意識はもうオワコンになりつつあるのではないかと密かに思っていて。意識のなくなったゾンビたちによる革命を望んでいます。
【暁】 なんか木澤さんの革命するゾンビの話は、大槻ケンヂの『ステーシーズ:少女再殺全談』みたいな世界観でいいですね。面白い。
【江永】自由意志を想定する左派は右派と変わりない反動だみたいな主張もありますしね(以下の江川隆男発言参照。『「三つの革命」とは何か 鼎談:佐藤嘉幸×廣瀬純×江川隆男』)。
【ひで】 いやでも、今こそベルサーニの『親密性』を読みたいです。
【暁】 では、『親密性』で確定で良いですか?
【木澤】 よいでしょう
【江永】ああ、テンション上がってきた!
【木澤】 下手したら次回で最終回になるかも。大炎上して。
【ひで】 こわ〜

 というわけで、次回はベルサーニ『親密性』読書会を行います。果たして最終回になってしまうのか!?お楽しみに!


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