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【朗読】立原道造「かなしいまでに」

Hideo Saito
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*朗読のテキストは岩波文庫版『立原道造詩集』に準拠しています。

かなしいまでにとほくを見て
眼よ おまへは泪をひたかくしてゐた

明るい雲の流れる街に
ボロの軒下を拾つて歩き
おまへはひとをさがしあぐんだ
つれなかつたひとを

耳よ おまへのなかに老いたかなしみが
潮騒をうたひ とほい靄の夜をささやいた

夕暮れて 夕暮れは汚れた城のやう
荒れた草生にひとを待つてゐた
おまへは 来ないひとを
足音を

ながいこと さうして私はさまよつた
驢馬の歩みよりまだ愚かしく
私は さうして ほほゑむだ

耳よ 眼よ
私は さうして ほほゑむだ
かつて愛したものの形は消えるまで

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