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【MMPI研究】MMPI-2に学ぶ妥当性尺度 ~妥当性尺度の基本(トレーニングスライド前半)

 「MMPIでMMPI-2を使う」ことを目指して学んでいます。「MMPI2(by1)」計画と呼んでます。その学びの一端をシェアしたいと思います。本ノートはMMPIヘビーユーザー向けです。
 以下は、MMPI-2トレーニングスライド、なるもの。今回は前半。妥当性尺度の基本について。
 検索すると結構でてきます。出所もミネソタ出版とか心理検査会社のPearsonclinical社です。かなりオフィシャルな見解なのでしょう。
 MMPI2(by1)計画には、「解釈テキストがほしい!」と考えて探していたら行き当たったものです。これが、現行のMMPIユーザーにとっても、以下の視点はとても有益です。現在入手可能な日本語のテキストの中でも、以下のようにスマートにまとめているのはなかったように思います。本質的にはMMPIもMMPI-2も同じ要素があります。妥当性尺度はバージョンが改まってもその本質と使い方はかわりません。まさにMMPIのアドバンテージ。

1,妥当性を評価するのはなぜ重要か 
・特定の状況下で、印象管理や歪みはよく起こる   
ー高額な治療を探す  
ー雇用上の選別  
ー障害の評価  
ー人身傷害  
ー法廷命令による評価  
ー責任能力  
ー情状酌量  
ー心神耗弱による無罪  
ー拘留 

2,MMPI-2妥当性尺度のアドバンテージ 
・ 自己報告の正確性に関する情報が提供できる 
・歪みの程度を示すことができる 
 – 一次元の展望が提供できる 
 – 同一状況下でのMMPI-2を受けた他者との比較、もしくは症状と行動の自己報告がどれくらいゆがんでいるか?
•歪みや印象管理のタイプの特定
•実際の尺度解釈は、正確に臨床状態を報告している人から集められた情報に基づく
 ― 実際の尺度に基づいたMMPI-2 により、臨床上の推論が信頼あるものになる

3,プロフィールの妥当性への脅威
・非内容ベースの妥当性のない回答
無回答
  – 空白のまま、もしくは、「はい」「いいえ」の両方をこたえる
ランダム回答 
  – 意図的なランダム回答
  – 非意図的なランダム回答
    » 読みの困難
    » 理解力
    »混乱
とらわれ回答 
  – 黙従 Yea-Saying
  -反-黙従 nay-saying

4,プロフィールの妥当性内容への脅威
 – 内容ベースの妥当性のない回答 
過剰報告 
 – 兆候や症状がない報告、もしくは重度の症状による歪みがない報告で「わるくみせる」
 – 意図的 
   » 誇張 vs 虚言 
 – 非意図的 
   » 強い苦悩と援助要求 
過少報告 
  – 「よく見せる」もしくは防衛性
  – 意図的 
    »最小化 vs否認
  – 非意図的 
    » 自我防衛 
    » 社会的望ましさ 

5,MMPI-2での妥当性アセスメントプロトコル
     脅威             尺度(→MMPIで近い尺度)
非内容ベース  無回答            CNS(?)
       ランダム回答         VRIN (  →CLS )
       とらわれ回答         TRIN ( →TPer)
内容ベース   過剰報告          F,Fb,Fp,FBS
       過少報告           L,K,S

http://images.pearsonclinical.com/images/assets/mmpi-2/2_MMPI-2_Validity-Scales.pdf
より(拙訳)

 いやはや、すごいですねえ。少しコメント添えます。
 まず冒頭スライド1の「印象管理」、これはちゃんと心理学用語ですね。

「印象管理」
特定の他者がなんらかの対象に対して抱いた印象を,コントロールしようとする個人の行動。印象操作ともいう。人は怒りを感じていなくても,自己の威厳を示すために攻撃的なふるまいをしてみせることがある。これは,社会的行動は欲求や情緒の素直な表出としてではなく,他者への効果を計算したうえで制御された目標志向的行動とみなすこともできる。印象管理とは,こうした観点から社会的行動の心理的プロセスや機能を理解しようとする立場であり,従来,社会心理学が扱ってきた諸問題に関して新たな理論的解釈の枠組みを提供している。(以下略)

https://kotobank.jp/word/%E5%8D%B0%E8%B1%A1%E7%AE%A1%E7%90%86-2099713
より

 印象管理によって、結果がかわるぞ、という知見はMMPIならでは、でしょう。代表的なのが人事評価とか入社面接。こういう状況下だったらだれだって「よくみられるような」態度をとります。それが回答に影響するんですね。いわゆる「受験態度」。
 整理の仕方がぼくとしてはとてもすっきり理解しやすくていいです。「内容ベースcontent-base」「非内容ベースnon content base」は、項目内容を基礎とした反応かそうでないか、という視点でしょう。それを上位概念として、それぞれ非内容ベースは「無回答」「ランダム回答」「とらわれ回答」。内容ベースは「過剰報告」「過少報告」としています。ざっくりとらえれば、MMPIのLFKの逆V字パタンは「過剰報告」、V字パタンが「過少報告」。「とらわれ回答」の「黙認Acquiescence(yea saying)」「反・黙認counter-Acquiescence(nay saying」も心理学用語。(APAのサイトにのっています。yea saying https://dictionary.apa.org/yea-sayin  nay saying https://dictionary.apa.org/nay-saying) 

  「なんでもはいはいってこたえちゃう(yea saying)、なんでもいやいやいっちゃう(nay saying)」と理解しています。(なお原文はFIxed responding。
fixed「固定された」。とらわれ、としてみました)

  そして最後の一覧が、各妥当性尺度が、妥当性を脅かすどの「脅威」を、測定しうるか、を示しています。なるほど。MMPIをお使いの方も、VRIN→CLS、TRIN→TPer、としてみれば(多少難ありですが)、同じ視点でみることができます。来るべきMMPI-2に備えることができますし、あらためて妥当性尺度を検証してみなおすことができるでしょう。


 


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