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ラ クレリエールの料理集 vol.12

東京・港区白金のフレンチレストラン「ラ クレリエール」のオーナーシェフ、柴田が日々、何を考えているかを綴ります。
2020年10月にスタートした連載「ミシュラン三つ星レストランへの挑戦」では、柴田の料理人人生を振り返りつつ、なぜ今ミシュラン三つ星に挑戦するのかを綴りました。そして今度は「クレリエールの料理」を切り口に料理人として、シェフあるいは経営者として、考えていることや思っていることをお伝えしたいと思っています。

今までの連載「ミシュラン三つ星レストランへの挑戦」はコチラからどうぞ
 → 第一章 レストランのシェフになる
 → 第二章 プロの世界へ
 → 第三章 「料理長」を見据えて
 → 第四章 レストラン ラ クレリエール
 → 第五章 オーナーシェフの「仕事」
 → 第六章 ミシュラン三つ星を目指す

「料理集」のバックナンバーです。
 → 「ラ クレリエールの料理集1(第一皿~第五皿)」
 → 第六皿 パロンブのロースト
 → 第七皿(résumé)仔羊のロースト トリュフのソース

第7皿(recette)仔羊のロースト トリュフのソース

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【材料】(2人分)

リムーザンの仔羊:骨付き400g
<準備のロースト用>
バター:40g
オリーブオイル:適量
タイム:適量
ローズマリー:適量
にんにく:2片(青森産の大きなもの)
<ロース仕上げ用>
バター:40g
タイム:適量
ローズマリー:適量
塩:適量
<アバラ仕上げ用>
揚げ油(こめ油):適量
クミンパウダー:適量
<かぶり仕上げ用>
塩:適量
コショウ:適量
グリーンマスタード:適量
<ソース>
水:適量(骨が被るくらい)
香味野菜:適量(水の量に合わせる)
ソースペリグー:適量
<ガルニチュール>
ジャガイモ(インカのめざめ): 200g
バター:500g
塩:総量の1%
生クリーム:少量
トリュフのみじん切り:5g
ハーブ入りサラダ用のハーブと野菜:適量
キノコ(2種類):適量
塩コショウ:適量
オリーブオイル:10cc
エシャロット:適量
にんにく(すりおろし):適量
ブールノワゼット:適量
トリュフの千切り:2~3g

【作り方】

<仔羊の準備>
1.仔羊は、キャレダニョー(フレンチラムラック)の状態に捌く。
2.1.を2人前ずつに切り分け、バター、オリーブオイル、タイム、ローズマリー、ニンニクと共にローストする。
3.焼き上がりを一度ダイニングに運んでお客様に見せした後、提供前に「ロース」「アバラ」「かぶり」の三つの部位に分け、それぞれ仕上げる。
<三部位の仕上げ>
A.ロース
(1)フライパンにバターを溶かし、タイム、ローズマリーを加えて加熱する。
(2)バターの泡が小さくなってきたらロースを入れ、くるくると回しながら温度を上げていく。
★この過程でバターの風味を肉に移す
(3)焼きあがったら塩で味を調える。
B.アバラ
(1)骨1本ずつに切り分け、200℃くらいの温度で揚げる。
(2)香ばしい色になったら取り上げてクミンのパウダーをふる。
C.かぶり
(1)塩コショウで味を調えてグリエする。
(2)焼きあがったら、ひと口大に切り分け、表面にグリーンマスタードを塗る。
<ソース>
4.リムーザンの仔羊の骨を香り良く焼き上げたら水を注ぎ、香味野菜と共に4時間ほど煮る。
5.シノワで濾してから煮詰め、味を調える。
6.ソースペリグーを作る。
7.5.と6.を合わせてソースにする。
★冬場のフランスの羊には、ジュのソースよりバターを使ったコクのあるソース
<ガルニチュール>
8.ジャガイモ(インカのめざめ)のピューレを作り、トリュフのみじん切りを加えて仕上げる。
★ジャガイモのほかに、トピナンプールやゴボウ、サトイモでも
9.ハーブ入りサラダを作る。
10.キノコをソテーし、エシャロットとブールノワゼットでコンフィしたにんにくと和える。
★キノコは、フランスのピエブルー、ジロール、もしくはヒラタケ、マイタケなど
<盛り付け>
11.ジャガイモのピューレの上に(A)(B)(C)を盛り付けた上にトリュフの千切りを乗せ、ハーブ入りサラダとキノコのソテーを添え、7.のソースをまわしかける。

柴田の工夫

ルセットの中の★は、その工程でのポイントです。一般的なものもあれば、僕自身の経験の中で見出したものもあります。お料理はちょっとした工夫で仕上がりがガラッと変わったりするので、参考にしてみてください。

最も気をつけているは、やはり火入れです。フランスの羊は「ちゃんと火を入れる」ことが大事。セニャンよりア・ポワンです。一方、日本やオーストラリアの羊の場合は、火を入れた後に「落ち着かせる」ことで最良の焼き上がりに仕上げます。どちらの場合も、お肉の内部に肉汁がしっかり回っている状態をどう作るかが最重要ポイントで、食べる瞬間に向けて焼き上げのタイミングを合わせていきます。そうすることで、お客様がナイフを入れる瞬間まで肉汁は肉の中に閉じ込められ、ひと噛みごとに肉の旨みが口の中に広がるのです。

「リムーザンの羊」とお話していますが、僕は産地には特にこだわりはありません。産地よりも、誰がどのような環境でどのように育てているか?どのような環境で生きてきたものを誰がどのように獲ったか?そして、“食材”としてどのように店まで届くか?ということの方が気になりますし、大切だと考えています。
ちなみに、クレリエールで仕入れているのは“Le Baronet(ル・バロネ)”と名付けられたI.G.P.認定の仔羊肉。リムーザン地方でも起伏が激しく雨量も豊富で牧草地に最適とされるミルヴァツ自然公園付近で、獣医とも密に連携をとりつつ常に最高の状態を保って育てられているのだそうです。

冬のフランスの羊は、トリュフと合わせてコクのあるソースで食べる“冬のごちそう”。今回ご紹介した「仔羊のロースト トリュフのソース」は、トリュフの最も美味しい時期が終わるまで、だいたい3月の第2週くらいまでお出しする予定です。
春になったらシステロンの羊をお出しするので、今回のリムーザンの羊との違いをお楽しみいただくのも面白いかなと思います。本当に全然違いますよ!
機会がございましたら、ぜひお越しくださいませ。

※仕入れの関係でご提供できない場合もございます。
 お召し上がりご希望の際は、ご予約の折にその旨をお伝えいただけると幸いです。

次回は、「常陸牛のウデ肉の赤ワイン風味」をご紹介する予定です。

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このnoteを初めて読んでくださった方へ
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はじめに初めまして。ラ クレリエールの柴田です。
白金でフレンチレストランのオーナーシェフをしています。
2020年のコロナ自粛の間、レストランのあり方や自分が今後進むべき道など色々と考えました。その中で「ミシュランで三つ星を獲得すること」を一つの指標として強く意識するようになりました。
そして、どのようにすれば三つ星を獲得できるのか、三つ星にふさわしいと皆様から認めていただけるのか、日々、考えたことや行動したことを記録に残そうと考えました。
ご興味を持っていただけたら幸いです。

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