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#ロンドンのウソつき 「キッカケ」 No.14

小説 #ロンドンのウソつき 「キッカケ」 無料連載中です。

最初から読んで頂ける方はマガジンにまとめていますのでNo.1からどうぞ。


#ロンドンのウソつき 「キッカケ」 No.14


いつも通り、母親と父親と共にテレビを見ながら晩御飯を食べている。
バラエティ番組ではお笑い芸人が次から次へとコントやネタなどを披露していた。

そんな芸人たちのネタを横目に僕は少し急ぎながらご飯を食べた。
番組の途中であったけれど、食べ終わった食事を片付けて先にリビングを立った。

「いってきまーす。」

まだご飯を食べている両親を背中に僕は家を出た。

今日は吉野家で続けていた深夜のアルバイトの最終日だった。
今日の朝に買った差し入れのお菓子を冷蔵庫から出して家を出た。
しっかりとした作りの手提げ袋で受け渡されたワッフルは、上等な雰囲気がしてアルバイト最後の感謝を気持ちを伝えるには良いお菓子だなと思った。

僕は真っ暗な夜の中、家を出て自転車を出した。

昼間とは違って少し静かになった街を爽快に自転車を漕いだ。
今日のアルバイトを終えたらあと4日後にはイギリスへ出発する予定であり、心が常にウキウキしていた。

「お疲れ様でーす。」

僕は3人くらいお客さんが入っている吉野家の中に入り、軽く挨拶をして控え室へ入った。

偶然なのかワザとなのか、よく分からないけれど今日の深夜のバイトは店長と一緒だった。

「お疲れ様!」

控え室はすでに店長がデスクで事務作業をしていた。
25歳で僕より3歳年上の若い男性が店長だった。
ヒョロッとした細い体であまり目を見て話さない人。でも仕事の効率が良くてアルバイトを通じていろいろと作業のコツを教えてもらった人だった。

「これ、今日最終日なんで皆さんに差し入れです。2年間お世話になりました。」

そう店長に伝えて用意していた差し入れのワッフルを渡した。

「おー、ありがとう。いいの?こんなにいっぱい。ワッフル??」

店長は差し入れのワッフルが入った手提げ袋の中を覗きながら言った。

「こちらこそ、谷山くんにはお世話になったし感謝してるよ。いろいろ助かったよ。」

「ロンドン留学するんでしょ?良いキッカケだと思うし頑張ってきてね。応援しているよ。」

店長は僕の目を見ないでワッフルを取り出しながら言ってくれた。

そして店長は僕がアルバイトの面接に来た当時、第一印象で採用を決めてくれていたこと。
お正月もクリスマスもバレンタインも、みんなが嫌がる日の深夜もシフトに入ってくれてすごく有り難かったことなどを話してくれた。

そんな店長の話を聞いて、2年間ここでアルバイトを頑張ってきて良かったと思った。

僕は改めて店長にお礼を言ってすぐにロッカーで着替えを済ました。
オレンジとネイビーのユニフォームを着るのも今日が最後だと思うと少し愛おしく思えてきた。

着替えて自分の荷物をロッカーに入れると、すぐにお店の中に入って引き継ぎを進めた。
僕と交代で仕事を終えたスタッフさんが「今までありがとう!」と言ってくれた。

ワッフルは事務室のテーブルに箱を開けた状態で置かれ、店長の綺麗とは言えない字で “ 谷山くんからの差し入れです。ご自由に取ってください。” とメモ書きも添えて置かれていた。


「いらっしゃいませー!」

晩御飯として来店するお客さんや、飲み会終わりのほろ酔いで入ってくるお客さんなどで、引き継ぎ早々に忙しくなった。

「並一丁!」

僕が牛丼の並の注文を受けて、店の後ろで牛丼を作る店長に伝えた。

「並一丁!ありがとうございまーす!」

店長の復唱が聞こえた。
今日の店長の声は、なんだかいつもより声が大きくて特別な感じがした。

夜がだんだんと深くなっていきながらも、僕は最後のバイトを楽しんでいた。

続く

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