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Ep17 リチャードとハロウィーン

ハロウィーン?!・・・アメリカの祭りなんて!カボチャとか、お化けとか、素朴なことはいいことだ。だがな、因縁や執念に満ちたイギリスの祭りにはかなわないぞ。そうやって祖国の弟分の文化を一笑に付すリチャードなのである。

1605年、ガイ・フォークスという男があることをした。イギリスでは、今も彼にちなんで、秋深くなると、その祭りを催すのだそうだ。「何をした人のお祭りなの?」えっ、ほんとっ?!「テロリスト」らしい!

カソリックの宗派の存続を巡る、そんな時の権力争いに端を発し、このガイ・フォークスなる男、時の国王、ジェームズ一世の屋敷に大量の火薬を仕掛けた!・・・が、裏切り者が存在するのが世の常。タレコミ屋によって、彼は国王の爆殺未遂で捕まり、拷問にかけられ、そののち処刑台から飛び降りて首の骨を折って死ぬという、なかなかの壮絶な一生を送ることになる。

11月5日の今日はその記念日なのだそうだ。ガイ・フォークスを模した人形のてっぺんに据え付けた火薬をバババババンッッ!!!と炸裂させ、ガイ人形が燃え尽きるのを楽しむ。そんな、火薬陰謀事件なる史実を再現し、イギリス人は今でも、王政の安泰を祝うのだそうだ。

宗派をめぐって国王を殺そうとしたガイ。そして、宗派を守ったことで、今でもガイを見せしめのように、お祭りにしている国。自分の使命が果たせなかったのに、名前が語り継がれてしまうのは困ったものだ。「あいつはnice guyだ」などの言い回しで使うguyという言葉は、このガイ氏が起源だという説もあるらしいが、残念ながら彼はunlucky guyになってしまったのだけれど。

リチャードはそんな話をひとしきり終えた後、脳梗塞の予防だ、と言って、大量のカラフルな薬を、コカコーラゼロで飲み込んだ。こちらのold guyは、あまり細かいことは気にするタイプではないらしい。

画:久保雅子 www.masakokubo.com/

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