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【映画感想】ジョン・ウィック:コンセクエンス

ジョン・ウィックシリーズ4本目、たぶん完結編にあたるであろう最新作「ジョン・ウィック:コンセクエンス」を観てきたよー。

コンセクエンス(consequence)とは、好ましくない「結果」「結論」を意味するとのこと。果たしてジョン・ウィックシリーズはどのような結論に辿り着くのか。

ネタバレ込みで感想を記していきます。

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ジョン・ウィック:コンセクエンス

簡単なあらすじ
ヤベえ組織『主席連合』に反逆の意志を示したジョン・ウィックは、主席連合の新たなトップであるグラモン侯爵に命を狙われる。グラモン侯爵は、ジョンの旧友であり、盲目の殺し屋であるケインを呼び寄せる。

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大事なこと

この映画にストーリーも糞もありません。
更には169分(2時間49分)という狂った上映時間。

ちなみに上映時間が長いでお馴染みの指輪物語/ロードオブザリングの1作目が178分である。指輪物語では、膨大なファンタジー世界の歴史を描き、長い旅の始まりから、ガンダルフの爺さんが化け物を道連れに崖から落ちたり、人間の仲間が指輪の魔力に魅了されて裏切りそうになったり、敵の軍勢と戦った末に裏切りかけた人間が死んだり、と盛り盛り盛り沢山な内容だったが

ジョン・ウィックは

自分にたてつく組織のボスを殺す

この1行で内容の説明が終えれてしまうぐらいなのだ。じゃあ、どんな約3時間なんだというとアクション!アクション!アクション!更にダメ押しのアクション!である。

観てる内にスクリーンの中で疲弊するキアヌとおなじく、観客である私も疲弊しているのを感じたほどだ。でも最後まで駆け抜け切ったのはお見事だよ、ほんとキアヌと一緒にトライアスロンでもしてる気分だった。

そんな本作なので、諸々のツッコミを入れながら感想を記すが、ツッコミなんてそも野暮なのだということは百も承知です。水を差す脳のリソースを余らせているようでは駄目だ、キアヌに正拳突きしてもらって空っぽにした方がいい。

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2023年現在、59歳になるキアヌ。
スクリーン内で大暴れする姿は、ほぼ還暦とは到底思えない。

本作は3部構成というべきか、物語の進展とともに舞台は『日本の大阪』『ベルリンのクラブ』『パリ』と歩をすすめていく。

まずは大阪から語りたい。

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なぜ舞台は大阪になるのか、というと

大阪コンチネンタルホテルの支配人であるコウジ(真田広之)がジョンの旧友で、主席連合から匿ってくれるからだとか

ここで登場する真田広之にやけに既視感があると思ったら

ブレットトレインの時と大差ないビジュ過ぎる。
海外の想像しやすい、アイコン的な日本人像って令和になってもこうなんでしょうね。

大阪は見所が多かった。
いかにも外国人が想像する、過去未来あらゆるアジア文化が融合したサイバーな日本。キルビルの頃から何も成長していないのは清々しい。

NYのコンチネンタルホテルは、ありとあらゆる銃器が保管されていたが、大阪は違う。だってジャパンだもんとでも言うつもりなのだろうか、刀は百歩譲って飲み込むが、弓矢と手裏剣は前時代過ぎるだろ。

しかしいざ戦闘描写になると、敵味方ともに装備の防弾性能があまりにも高く、銃弾はいとも簡単に弾いてしまう。防弾スーツを着用している相手には銃器は牽制の手段でしかなく、決め手は近接戦闘で隙をつくり、頭や首にドンッというスタイルになる。

銃だろうと弓矢だろうと、そこに大差はなく感じてしまったのでこれはこれでいいように作用してると感じました。

ちょい役ではあったが存在感抜群の用心棒のお相撲さんは、ドラマ『サンクチュアリ聖域』の静内役で驚いた。

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最強の刺客、盲目の殺し屋ケイン(ドニー・イェン)の演技は最高だった。盲目である、という説得力にあふれる挙動と、でも強いという説得力に溢れていた。

盲目ならではの、ピンポンの仕掛けも笑えたし、座頭市にも程がある仕込み刀による殺陣も最高。少し過剰過ぎる決めのアクションもフィクション過ぎないほど良いバランスだった。

ただジョンとの戦闘シーンで、結構近い距離で相対しているのに、ジョンの気配に気づかず「死んだか?」と尋ねるのは笑ってしまった。「目が見えない代わりに聴力がすげーのが盲目キャラの鉄板だろ」と思わずツッコミたくなった。

激しい銃撃戦の後の「死んだか?」という流れだったので、銃声の影響で一時的に聴力がさがったから…みたいな演出があれば、ケインの強キャラ感を維持できたと思う。

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ベルリンのクラブでの戦闘は正直そこまで真新しいものはなかったかなぁ。そもそも戦闘シーンにいくまでの間が正直眠たかった。これは物語性がない故に致し方ないと思う。

ただクラブのオーナーである中ボスの格闘アクションはビビらされた。

中ボス キーラ・ハルカン

かなりの肥満体なのだが、驚くほど機敏に動いていた。華麗な回し蹴りをした瞬間、鉄拳6のボブみたいだった。

しっぽを巻いて逃走、からの戦闘という流れだったので「まさかコイツが動ける訳ないよな」と思わせてからのドカンにまんまとやられた。

こちらのタネは単純で肥満体は特殊メイクだそうだ。とはいえ、着ぐるみを着て動き回るようなもんだろう。ベルリンの一番の見所は間違いなく彼の戦闘描写だろう。

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ベルリンで大義名分をつくったジョンは、ついに本丸である主席連合のボスであるグラモン侯爵と決闘の約束を取り付ける。

ここらへんの話から、裏社会では面子や筋といったものの優先順位がかなり高いとわかる。まるで日本のヤクザみたいだなあと感じた。

パリは最後の舞台にふさわしく、アクション盛り沢山だ。隠れ場所から決闘の地、サクレ・クール寺院に向かうまでの道中は最高最高最高最高でした。

ただジョンに一言いうとしたら

決闘場所指定できたんだからもっと近いところにしとけよ、わざわざ遠いところ指定したら道中苦労するの目に見えてるじゃん

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決闘の内容が定まってすぐ、グラモン侯爵はジョン・ウィックの懸賞金を上げ、彼の居場所をアナウンスする。

パリ中の殺し屋たちが思い思いの銃を手に取って準備するシーン、銃好きな人は何度でも見返したくなるんじゃないかな。加えてここで登場した装備がジョンに奪われて使い倒されるってのもよかった。

確かに敵側の武器でしかなかった場合は露出がちょっとしかないもんね、楽しめないもんね。

建物内での銃撃戦は、マリグナントで出てきたような天井から俯瞰したカメラで映されており、さながらゲーム感覚の映像体験だった。全体の動きが見えるので誰がどのように索敵してどの射線から身を隠しているのか、というのがよくわかるのがグー。

肝心の銃撃戦からは離れた絵になるので、本来であれば迫力が減少するであろうはずが、『ドラゴンブレス弾』と呼ばれるクソ派手ショットガンをぶちかましまくるので快感が半端じゃなかった。

天井からの俯瞰ショットで、近接戦闘しちゃうと対象が離れているから、なにしてるかよくわかんなくなっちゃう&とはいえみんなの防弾性能が超高いから通常の銃撃ではトドメにならない、、、の解決策にもなってるドラゴンブレス弾、いいアイデアですねー。

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建物をでた後は、車に、バイクにといったライドアクション。運転しながら銃を拾ったり、敵を中心にグルグル走り回りながらの銃撃など、四作目にきてもフレッシュなライドアクションを見せてくれて嬉しい限りっす。

たーだ次のブンブン走り回る車両を縫っての戦闘シーンですよ。

バタバタ人が死んでるし、人身事故が起きまくってるのに、なんで誰も車を停めないんだよ笑!!昔のゲームですが、マリオカート64でレースと関係ない車両が走り回ってる車道がサーキットになっているステージがあったのですが、そんな感じっすね。

ジョン一人に対して、敵は無尽蔵に湧いてくるという状態。

もちろんジョンはとんでもなく強いんですが、真正面からぶつかれば無理じゃね?という疑問へのアンサーとして「室内戦」であったり「車道」という限定的なシチュエーションですよ。

ジョン・ウィックというキャラの格を下げずに、ファンタジーとリアルの境界線をうまくついてくれる。あ、でも流石に車に跳ねられすぎだと思います。思わず数えてしまったんだけど5回ぐらい跳ねられてたよね?

受け身とか特殊な装備とかでどうにかなるレベル超えてるよね。
跳ねられる度に笑っちゃいました。

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そしてもうすぐ目的地であるサクレ・クール寺院というところで立ちふさがるわ222段の階段。

あのさあ

なんで決闘場所指定できたのに、こんな過酷な場所選んだの?
ジョンってアホなの?

当たり前ではありますが、階段には銃器を持った敵がいっぱい。下から上へ向けた画角の映像が続くんですが、これが過酷さ・遠さみたいなんを感じさせてくれてましたね。

ほんでもうすぐゴールってところからの突き落とされての階段ごろごろ落ち。もう爆笑ですよ、シアターには10人も入っていませんでしたが笑いが聞こえましたもん。

ええー、こんなに苦労したのにこんなに転げ落ちて…ああでも踊り場で止まるか、って止まらなーい!!まだいくのえええ!!!って

ここだけ見返させてくれないかな映画史上最も長い階段からの転げ落ちるシーンじゃないでしょうか。

その後のケインとの共闘展開は熱いし、なによりケインのアクションがキレッキレでしたね。切り伏せた相手を駄目押しとばかりに二度三度サクサクサクッと串刺しにするのは、シリーズ通してジョンが行うダブルタップ(二度撃ち)のようで

二人が旧友であることや、同じく凄腕の殺し屋であることを表現しているようで良かったっすね。腑に落ちるっていうのかな。

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苦労の末に辿り着いたサクレ・クール寺院。
ここで行われるは、先ほどまで共闘していたケインとの銃を使った1対1の決闘…こんなもんどっちか死ぬしかないじゃーん、という展開。

まあここらへんはあんまり語ることないかな。

あー、強いていえばジョンを執拗に追いかける賞金稼ぎのノーバディですよ。彼は何か強い目的意識をもって、大金を稼ごうとしているんですよ。一般的な大金ではない、とんでもない大金を狙っているんですが

その目的が何か、少しでいいから描写して欲しかったかな。道中で、明らかにジョンを殺せたのにあえて見逃して泳がせることで、グラモン侯爵との交渉して懸賞金をつり上げたりするのも

いまの金額では足りない…何故なら俺は○○がしたいから

といった描写があれば、よりキャラへの理解が深まったかな。大金を手にして殺し屋稼業をリタイアしたい愛犬家ノーバディと、一度は殺し屋稼業をリタイアしていた愛犬家のジョン、というシンクロ感はわかりやすかったんだけどね。

あとあれだけ無茶な交渉をふっかけておいて、結局ジョンを殺さずにノコノコと最後の決闘の場に顔出してましたが

普通グラモン侯爵にぶっ殺されるんじゃないの?
決闘の結末がアレだったからいいけど、場合によってはふっつうにぶっ殺されてただろ。どういう心情なん。

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物語の結末。

そのまんま受け取れば、ジョンは死んだんでしょうが、あの世界観とジョンの不死身ぶりを思えば、死んでませんでした!も全然あり得ますよね。なんなら裏社会と完全に縁を切る為に、墓までつくって社会的な死を偽装した、なんて想像もできる。

ですが、私は死んだと思ってます。

冒頭で死なないと終わらない、とハッキリ言われていたし、ジョンの行動は明らかに「死に場所」を探していました。改めて殺し屋をやめ、ただの一般人として生きるとしても、亡き妻との思いでのつまった家は爆破されてますからね。

旧友の手にかかって死ぬなら本望でしょう。
いつもならフラつきながらすぐ立ち上がるジョンですが、立ち上がる理由がもうなかった。ここまで走ってきた彼の物語はここで終えていい、と思いました。感動っす。

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エンドロールを観ながら、いろいろと思いを巡らせてハッとしたのが

コウジの娘・アキラですよ。

「あの女、めちゃくちゃ最新鋭っぽいボディスーツ着てた癖に普通の銃弾で脇腹撃ち抜かれてた」とか

「目の前でケインに親父ぶっ殺されて怒ってたけど出てこなかったなぁ」とか思ってたらおまけ映像ですよ。

まあそりゃそうなるよね。ジョン・ウィックは1作目は復讐の物語でしたが、その後は暴力が引き起こす因果を示すような話に思います。暴力をふるったものは暴力という形で報いをうける。

それは裏社会からの離脱を果たしたケインも例外ではなかったということですね。暴力反対!フィクションの中で楽しみましょう!

改めてジョン・ウィック最高!

みんな観てね!!

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