中学のころから髭が濃く、口髭が青くなるのが悩みだった。いや、もしかしたら小学校高学年のころからかもしれない。

「髭濃くね？青くね？」

友人の些細な一言に傷つきやすかった思春期真っ盛りのあのころの僕は密かに計画を立てていた。

”高校生になったら髭を伸ばす”

この計画は高校に通い始めたからと言ってすぐに実行できたわけではない。

そう、たらないのだ”髭”が

「あ～～濃い濃いやだやだ髭濃いね。」と何度も何度も言われ続けていた髭も、いざ伸ばしてみるとショボショボすぎて腹が立つほど情けなかったのだ。

僕の顎は芝生になれなかった

しかしそれでも諦めずに頑張っていると、少しずつではあるが密度が上がってきているのを自分でも実感した。

完全にシェーバーのおかげだ。実は中１から使っている。

そして、満を持して高1の終わりくらいから顎髭だけを生やし始めた。もちろん髭なのですぐに生えそろうわけではない。

僕はついに顎髭を剃るのをやめたのだ。

校内に髭の生徒は3、4人しかいなかったので予想以上に羨ましがられた。
女子はどう思っていたかわからないが（死ぬほど気になってた）「良いなあ！髭濃くて！」とうらやましがる男子生徒があとを立たず、密かに震えていたのをよく覚えている。

マネをし始めてショボショボの髭を生やす輩まで現れた。

「おまえの顎はそんなもんかぁ」

心の中では完全に見下していた。

僕より髭が濃いゴリラみたいなやつもいたが彼はゴリラ枠なので関係ない。初めて髭でヒーローになれたと思っていた。

髭というただのコンプレックスがやっと自分の体の一部になったような…そんな感覚だった

……

そして、33歳になった今「ひげこい」という名前で活動をしているのだが

「ひげこいさん意外と髭濃くないですよね」

とよく言われる。

ひげこいです。