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こじらせEpisode3:「推しと私と接触イベント

「対面イベント開催決定!!」

多くのオタクが心躍るだろうこの響き。
対する私はこの文字並びを見るやいなや
画面を閉じる。

対面イベントがすこぶる苦手なのだ。
とは言っても、全部の対面イベントが
嫌な訳ではない。「推し」だと無理なのだ。

分かりやすい例を出すと、好きなバンドの
対面イベントやオンライントーク会は平気。
好きな芸人さんのお見送りイベントも平気。
むしろテンションが上がるし、
ラジオネームとかで覚えてくれてたら
最高に嬉しくなるし、オイシイ。

問題はそれが「推し」になったときだ。
俳優さんとか、ボーイズグループとか、
自分の乙女心が芽生えるほど無理になる。

自分でもその理由は分からないけど、
とにかく対面イベントには参加しない!と
決めていた私の元に先日、あるグループの
対面イベント告知が届いた。
それも好きなメンバーがやってくる。
遠渡遙々やってくる。自分がどうして対面
イベントが苦手なのか知る機会になるし、
友達に背中を押されたこともあって、
行ってみることにした。

行ってみた結果、数日推しと距離を置いた。

もちろんめちゃめちゃ格好良かった。
肉眼で見たはずなのにキラキラエフェクトが
掛かっていたし、同じ人間か疑ったし、
返答がフワフワしていたのも尊かった。

でも「もう行かないだろうな…」と思った。
そう思った要因を考えたとき、私が対面の
イベントが苦手な理由が分かってきた。

①そもそも認識されたくない

オタクが担降りするときによく聞く理由の
1つに「意外と〇〇だった」がある。
意外と気が強いとか、意外と塩対応とか。
それは、オタクが作り出した理想の推しと、
現実の推しにギャップが生まれて起こる
バグみたいなものだと思う。

でも、それは推し側にも十分起こり得る
バグだと思う。きっと推し側も、
「自分のファンはこんな感じかな?」という
イメージを少なからず持っているはず。
対面イベントに行ってしまうことで、
推しの中にあるそのイメージを元に
「思ってたよりレベル高い!」とか
「あ~…俺のファンこの感じか…」みたいな
答え合わせが行われてしまうのが嫌なのだ。実態を知らない方がお互いに幸せだと思う。
ラジオネームとか、アカウントアイコンとか
そこから連想されたイメージみたいな
想像上の一番美化された何のプラスも
マイナスもない状態をずっと保っていたい。
これを言うと、「そんな見てないよ!」と
言ってくれる子もいるけど、記憶に残る・
残らないにかかわらず、たった一瞬でも、
実態として認識されるのが嫌なのだ。

「推しは見たい。
 だけど推しの目には入りたくない。」

これが叶う特典会があれば良いのに!

②周りの目が怖すぎる

これは、特典会が苦手なオタクが思うこと
あるあるじゃないだろうか。
会場に入った瞬間から同担チェックが
あちらこちらで行われているように感じる。
一歩踏み入れた途端、頭の先からつま先まで
見た後、スマホに視線を戻されるあの恐怖。
何にか分からないけど謝罪しそうになる。
特典会は、CDを買った分だけ周回できるため
大量にCDを買ったオタクは整理券を束で
持っている。それはもうお金持ちが持ってる
札束のごとく手でぺちぺちして待っている。
始まる前から萎縮してしまうあの雰囲気。
クラスカースト頂点にいる女子グループに
打ち上げの会費を徴収しに行くときくらい
心がキュッとなる。話したらめちゃめちゃ
楽しい、優しい、気さくみたいな人も
もちろんいるだろうけどそもそも話せない
あの空気感、特典会ならではだと思う。

③おどつく自分のキモさに耐えられない

これがデカすぎる。始まる前からそわそわと
何を伝えよう、インパクトを残したくない、
でもスカしてるみたいにならないように
応援してることは伝えておきたい。

そんなことを考えて思考をぐんぐん回す。

回していざ自分の順番が近付くと飛ぶ。
予定してた内容が全部飛ぶ。
「えっと、」とか「あのー」とかどもって
尺を取ってしまうあの瞬間の自分が
キモすぎて、キラキラした人の前でキモさを発揮した自分が無理すぎて耐えられない。

④なぜか生まれる罪悪感

特典会がスタートして推しの元へ近付く間、
色々な考えが頭を巡る。

「何週も回ってきたら怖いって思うのかな」
「回転寿司のように流れてくるオタクに
 ずっと100で対応するの疲れないかな」
「この数時間のために飛行機移動大変だな」
「ていうか何話そう」
「あのお姉さんめちゃめちゃ可愛いな」

そんなことを考えながらいざ推しの前。
笑顔でお話しして手を振ってくれる推し。

「本当に存在してる」「顔が良すぎる」

そんな感動の気持ちがひとしきり通り過ぎ、
次は拗らせ思考が押し寄せてくる。

「こんな時間に仕事をさせてしまっている」
「息つく間もなくこれが3部続くのか…」
「営業スマイルさせてしまって申し訳ない」

突然現実的な思考がなだれ込んできて、
「CD購入を建前に推しの時間を買っている」ということに急に罪悪感が生まれてくる。
何か悪いことをしている気分になってくる。
もちろんCDは売れた方が良い。
特典会は販促のためのイベントでもある。
それに、特典会にドキドキしている友達には
「可愛いな」「気持ち伝わるといいな」と
思う。レポを見て私までにやけてくる。
だけど、それがいざ自分になると話は別だ。
自分がお金で人の時間を買うことに
めちゃめちゃ負い目を感じてしまう。


キラキラ輝く推しの日常にほんの一瞬でも
自分が映り込みたくないし、私の日常に
推しが溶け込むなんておこがましい。
拗らせオタクには一方的に見させてもらう
ライブが丁度良いのかもしれない。

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