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赤木リツコという激ヤバ女について

TV版エヴァで感覚的に一番好きな話が13話というか、これだけでも映画として成り立つのでは...という点でもしかしたら一番見返しているかも知れません。

長年考えた理由は
①(私自身も母と確執がある為)リツコに自分を重ねている
②唯一使徒に対して人間の智慧で勝つ
③リツコとミサトの大学時代の面影が窺える

この3点点なんですよね。

赤木リツコはエヴァで一番ヤベー女だと思ってます。アスカも母親に固執していますが、リツコはより複雑な理由で固執してます。純粋に母としてキョウコを求める無垢なアスカと、「科学者としては尊敬していたが、女としては憎んでさえいた」と吐き捨てるリツコ。これはただの推察ですが、リツコはかなり幼い時から祖母に預けられていた。優秀な科学者として自分よりも研究に生きる彼女を、リツコはそれなりに尊敬していたのでしょう。ですが、リツコはかなり頭もよく勘も鋭い女性です。かなり早い段階で、母がゲンドウと男女の仲だと悟ったのでしょう。それまで母は私より研究を取った、それは人類の為だと思うことでなんとか納得しようとしていたのではないでしょうか。しかし、悲しいことにリツコは自分が捨てられたのは見ず知らずのそれに他に家庭がある男の為だった。潔癖そうなリツコですから親の性的な面や声色に対して嫌悪もしたでしょうし、それまで納得していた孤独に対して裏切られた怒りや絶望もあったでしょう。かなり早い段階から母親に対する愛憎を根元にして、またはそれを反面教師にするようにしてリツコのアイデンティティは形成されたことが予想されます。

誰よりも冷静沈着でクールな科学者、ですが最後は愛した男と一緒に死ぬという「女過ぎる女」の一面を見せてくれます。

しかし、リツコは本当にゲンドウを愛していたのでしょうか?ナオコが自殺した後に、ゲンドウが愛人兼手駒の後釜としてリツコに近づいたのは容易に想像出来ます。

リツコも敬愛する母親の死に、愛人関係であったゲンドウが無関係だとは思って居ない筈です。恐らくは嫌悪と憎しみと、何故母こんな男を愛したのか。何故こんな男の為に自分は捨てられたのか。そうしたいくつもの疑問を解決したい。知りたいという欲求に抗えなかったからではないかと思うのです。

常識的に考えれば自分の母親の愛人に自分もなるというのは、かなりのタブーに近い気がします。擬似的な近親相姦と云っても良いくらいの悍ましさです。

ですが擬似的な近親相姦に争いつつも抗えなかった女が他にも居ます。加持リョウジに自分の父親を重ね、それが恐ろしくなり離れたミサトです。結局彼女は根元的な欲求を満たしたいが為に、代償行為としてまた加持リョウジと寝ます。加持リョウジも頭が悪いわけではありません。ミサトが自分を父親代わりにセックスしているという事実は分かっていた筈です。当初はセカンドインパクトにより傷を負ったもの通しの慰め合いくらいのつもりだったのではないでしょうか。それでもなおミサトという人間をミサトとして認識し、一人の女性としてそれなりに愛し抜いてていた加持は、三人の中では割と一番真っ当な人間のではないかと思います。

まあ、そう云った理由でリツコとミサトは親との擬似的な近親相姦を望んでいたのではないかと推察します。だからチグハグに見えても根っこは同じなのでウマが合うというか...でもこの辺りが原始的な禁忌感に繋がる為、エヴァの大人キャラクターがあまり好かれてない原因かも知れませんね...なんつって。

13話の最後「本当、母さんらしいわ」と言いながらリツコは立ち上がり、場面フレームから消えて断絶されるように物語は終わります。

彼女の中では未だ母は生きており、というかマギになったことで永遠の存在、それこそ彼女の中では神に等しい存在になったのだと思います。そして、あれだけ憎んでいた母と同じ女に成り果ててしまった。母と同じ辛酸を舐め苦痛を知り、ユイの肉体であるクローンレイ達を爆破して破壊する...まるでレイの暴言に殺された母親の仇のように。

マギになりナオコがリツコの中で永遠になったように、ユイが初号機に溶けサルベージ不能になったことでゲンドウの中では永遠になってしまった。神格化されたとも言えるかもしれません。ユイについてはエピソードが少ない為パーソナリティを考察するのは難しいですが、冬月やマリが惹かれていることからも天然で人タラシ的な、悪く言えば魔性的な面があったのかもしれません。そういった面もあり、唯一無二の存在だったのでしょう。ナオコにしろリツコにしろ、本当の恋敵は既に自分達とは違う次元にいる。勝てん。だから母は絶望し身を放り投げ、娘はせめてもの復讐に空っぽの肉体を破壊し心中を迫る...。

皮肉なことにこの女丸出しのリツコを止めたのが、ナオコの女の部分を司るマギだったのはとても悍ましく上手い構成だと思います。

長々と書きましたが、何が言いたかったかというと「エヴァで一番ヤベー奴は赤木リツコ博士です」ということです。

残念ながら私の大好きな13話はエヴァの戦闘シーンも無かったことから視聴率も低く、恐らくは作中でもあまり印象に残っていない話かもしれません。

ですが、思春期にこれを見て「赤木リツコってなんてヤベー女なんだ!!!」と雷に打たれてからずっと13話だけを繰り返し見ているヲタクも居るんだぜ...ってコトです。

お借りしました↑
本当はサーバーがズラッと並んでるような感じの画像が良かったんですが、作中で高速タイプしてたからこれで良いかなって。

追記(10/27)
リツコは科学者てして母を尊敬していた、それは紛れもない事実です。敬愛する相手に近づきたい、もしくは同じになりたい...同一化したいという願望からゲンドウの愛人になったのかもしれない。

母を愛していたが、娘としては愛人の二の次で愛されなかった。だから母が愛した男と寝ることで擬似的に母になり、自分の満たされない感情を埋めようとした...?といえ考え方も出来ます。

それは新劇場版で、特攻する加持リョウジに着いて行きたかったミサトを止めた理由が「既にお腹の中に子どもがいた」=ミサトは母親だったから。母を愛し、母を失い、また母になりたかったリツコは、妊娠し母であるミサトを大切な友人であるがそれ以上に死なせるわけにはいかなかった...とか。考え過ぎですかね。こうして見るとリツコも他のチルドレンと同様に母という絶対的な存在に運命を翻弄された、非常に可哀想で、非常に人間臭いキャラクターだと思いませんか?

あまり印象に残らないかも知れませんがリツコの何気ない仕草やセリフは彼女の繊細で複雑な、クールに見えて人一倍情熱の強いキャラクター性が見えてくると思います。

シン劇場版ではそういった場面があまり無いというか物分かりし過ぎているので、ぜひテレビシリーズを見て下さい🙇‍♀️

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