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偏執的作家論

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偏執的作家論1  『団鬼六①』

鬼六さんに初めて注目したのは、74年、歳月社で「幻想と怪奇」の続行が決まっての編集会議の折、荒俣・鏡両氏が「面白い本が出ているよ」と「SMキング」を取り出したからだ。  そこには「団鬼六責任編集」と表紙に仰々しく書かれていた。もちろん「奇譚クラブ」や「SMセレクト」などで、小説には接していたが、「鬼プロ」というプロダクションを立ち上げ、雑誌を出版して編集までするというのは、作家像とは違う驚きと同時に親近感を持った。  それと、その情報をもたらしたのが、SMとは縁もゆかりもなさ

偏執的作家論1  『団鬼六②』

ソープ酒盛り事件を皮切りに、鬼六さんは「困ったちゃん」に変貌していった。 それは、第一次接近遭遇の時には私は25、6歳の若造だったが、この時には31歳で様々な苦難を乗り越えてきていたから、「こいつには無茶振りしても大丈夫だな」と変な信用を得てしまったのではないだろうか。  ある時には急に電話があり「明日の2時に来てくれ」と言う。私は2冊の雑誌の編集長だった。隔週で1冊を作っているのだから、大変に忙しかった。しかし当時は団鬼六の名前の載っていないSM誌は売れない、と言われていた