神心会の最終兵器がファッションの常識を変える(無料記事) 乙女の聖典~女子こそ読みたい「刃牙」シリーズ~その18

 「お前いいかげん、『範馬刃牙』の感想書けよ」と、皆さんに思われている空気をビンビンに感じている金田です。
 それはおいといて、日本では4月1日に新元号が決まるらしいですが、私のおすすめは「克巳」です。中国の古典に由来する文字列ではないけど、「停滞をのりこえる」という意味があり、対戦相手に正中線連撃が決まったとき最強に見えそうになる(見えるとは言っていない)。
 いや私も『範馬刃牙』の感想を開始(はじ)めたいのはやまやまなんですが、その前に熱論(かた)っておかねばならぬことがある。皆さんも薄々、お気づきではないかと思う。
 そういうわけで、『バキ』全31巻+『バキ特別編SAGA』について、当連載(その10~その16)で取り上げなかった小ネタ、大ネタを改めて紹介したい。


(1)恒例・刃牙さんセクシーグラビア

 『グラップラー刃牙』時代と同じく、『バキ』全276話の表紙・扉絵は、少数の例外を除き、そのほとんどを刃牙さんが飾っている。本編では描かれない色っぽい表情、ポーズ、服装も数多く、グラビアアイドルとしての地位を不動のものにしている。連載中は、『週刊少年チャンピオン』の読者たちがさぞお世話になったことだろう。刃牙さんありがとう。
 そういうわけで、刃牙さんの赤裸々な画像が「BLか」ってぐらいあるのだが、今回も吟味に吟味を重ね、厳選して2枚を紹介したい。


  左画像は、脈絡なく刃牙さんのナウシカみがほとばしった一枚。かつて『バキ』1~3巻がウェブコミックサイトで無料開放されていたときに、何も知らずに読んでいた私を、「おっ、ケモナー系BLかな?」と、初手からぐんぐんにひきつけた扉絵だ。まあいいんだけど、刃牙さんの飼い犬という特権的な位置づけにあるムサシの立場はどうなるのか。ムサシも扉絵に描いてあげて。
 右画像は、「やるぞ」という意気込みに溢れた一枚。着衣と脱衣の境界線を越えようとしている瞬間を見事にとらえている。自信に満ちた目線は「さすがSAGAを乗り越えてきた男だけあるな」と思わせる。童貞の顔をしていた彼はもう居ない。


(2)刃牙さんのティッシュ箱の位置がリアルすぎる

 毎週の扉絵で惜しげもなくセクシーボディを輝かせるグラビアアイドル・刃牙さんだが、一方で10代の青少年らしい日常生活の様子も見せてくれている。
 衝撃の体力測定が行われた日、就寝する刃牙さんがこちら。

 このページ、読者全員がガン見したと思うが、ティッシュ箱の位置が絶妙だ。それに対して、ゴミ箱がやや遠く感じるが、刃牙さんほどにもなれば、ゴミ箱を見なくても、3ポイントシュートを叩き込むことができるだろう。いろいろな意味で「ありがとうございます」と、刃牙さんへの感謝が深まる一ページだ。


(3)愚地克巳・私服コレクション

 全国100万人のKFC(克巳ファンクラブ)の皆さん、お待たせしました。「愚地克巳・私服コレクション~TOKYO KATSUMI COLLECTION 2001-2006~」のコーナーです。
 『グラップラー刃牙』で初めて克巳が登場した時の、貴重な私服姿(1種類)は、こちらの無料記事( https://note.mu/higez/n/n5ef236c97d22 )で、また下着はこちらの無料部分( https://note.mu/higez/n/nb7fcfdd97f9b )で紹介しているので、合わせてお楽しみください。なおここでは「私服」の定義を、「道着以外」とする。

 歴史家の間ではすでに知られているが、克巳私服史は三つの時代区分に分けて考えることができる。鍵になるのは「加藤清澄と末堂厚」の存在だ。

 まずは第一期、「加藤清澄&末堂厚が病院送りになるまでの私服」

 『グラップラー刃牙』でのキャップ+ポロシャツという私服も含めて、この時期の私服コンセプトは「無難カジュアル」。おそらく、キャップ+ポロシャツ、黒Tシャツ+ハーフパンツというコーデは、「俺の師匠」こと加藤清澄のチョイスだと考えられる。ありがとう加藤! 剃ってる場合じゃないッスよ!とか言ってヒゲのまま来させた(推測)のも本当にありがとう。この克巳が出てきたときはあまりのエロかっこよさに、自分がどうにかなってしまうと思った。
 「白ジャージ上着パンツイン」については、加藤清澄が倒れた後ということもあり、やや第二期の予兆を感じさせる。私は、白ジャージはとても似合っていると思うし、おなかが冷えないように上着の裾をパンツインするのもアリだと思う。夏恵さんが裾をパンツにぐいぐい入れてくれるんだと思う。

 第二期、「加藤清澄&末堂厚が病院送りになっている間の私服」

 見ての通り、とにかくヤベェことになっている。
 ネックレス+謎レイヤードだけでもかなりのショックだったが、その傷を忘れようとしていた頃に、克巳がゴミ袋みたいな服を着て出てきたときは、さすがの私も神心会にメリケン粉を撒いて放火しそうになった。お前らの師範だろ! なんでそんな他人事みたいに見てられるんだ!! 連帯責任だぞ!!
 これらの服装、「適当にその辺にあるものを着た」というのであれば絶対にこうはならない、つまり克巳が「選び抜いてあえて着ている」とワカるので、しんどさが限界を超えてくる。私などは、この画像を見つめすぎたせいで、だんだん慣れて「アリかな」とも思えてきた。こんな犠牲者をこれ以上、増やしてはいけない。

 第三期、「加藤清澄&末堂厚が復帰した後の私服」


 おそらく加藤か末堂のどちらかの意識が戻り、克巳のファッションに指導を入れ始めたと推測できる。「無難カジュアル」復活だ。ありがとう神心会。この服装のおかげで、ドイルも素直に敗北を認めることができた。
 刃牙さん入院時にかけつけた克巳の、黒上下に関しては、急に呼び出されたために、加藤&末堂の指導が行き届かなかったのだと思う。パジャマじゃないんだから、上下で同じ色のものを着るな。いや、マジでパジャマ(上着パンツイン)という可能性まである。あと、このページの男たちが全員、かなり着こんでいるのに、梢江さんだけ夏気分を出して、季節感を狂わせるのをやめてほしい。


 こちらも第三期。道着の下に長袖Tシャツを着ていて、「どうしたの?」「寒いの?」と心配させる場面もあったが、最後の最後に、キャップ+パーカーで「無難カジュアル」完成。ありがとう加藤。ありがとう末堂さん。ネックレスとゴミ袋の服は燃やしてくださ……いや、私にください。
 
 克巳の私服をいじりすぎではないか、という批判があるかもしれないが、マジでこんな服(ネックレスとかゴミ袋の服)着てる人、他にいないんですよ。そういう意味では板垣先生に特別に愛されているし、「天才ともてはやされて育った二代目」としてのキャラが立っている。私はすでにこの私服センスも含めて克巳を愛しているので、このゴミ袋みたいな服を見かけたら、買ってしまうと思う。加藤と末堂よ、そこに居合わせたら、私を殴って止めてくれ。 


(4)愚地克巳・甘党確定の瞬間

 愚地克巳といえば、「独自の私服センス」だけでなく、「甘党」というキャラづけが存在する。そんなエピソードなかっただろ……と訝(いぶか)しんでいる方は、次の証拠資料を見てほしい。ゴミ袋を着た克巳を人前にさらしつづけるのは辛いが、歴史家の間では有名な場面だ。

 まず右ページ1コマめの、カップ、ミルク(小容器)、砂糖(取っ手付き容器)についてよく記憶してほしい。そして左ページ2コマめの克巳を見てほしいが、明らかにミルクの容器ではなく、取っ手付き容器を傾けている。
 つまり、砂糖を、スプーンを使わずに容器から直にザバァーッと、飲み物に注いでいるのだ。手に負えないほどの甘党確定の瞬間だ。

 人はこの資料を見て、「作画ミスだな」(※板垣先生はミルクを入れているつもりで左ページ2コマめを描いたが、右ページ1コマめをアシスタントが描いたため、容器の取り違えが起きた)と、冷静に判断するかもしれない。しかし古来、綸言(りんげん)汗のごとしという。すでに描かれたものは取り消せない。ミスだろうと誤植だろうと、『バキ』の世界では、「克巳が飲み物に砂糖をドバァーッ」とやる場面は、『ジョジョの奇妙な冒険』第一部における「何をするだァーーッ」と同じで、起こってしまったのだ。

 これを私たちは真摯に受け止め、克巳について「甘党なんだな」「いつも容器ごと、砂糖を注ぐんだな」「刃牙さんばりに、砂糖水を飲んでるな」と、まずは受け入れるべきだと思う。私に関しては、もうこの作法も含めて克巳を愛しているので、何事もなかったように受け入れた。ただ、ゴミ袋を着た克巳が、偉そうな口をきいたり、砂糖をドバァーッと注いだりするのを目の当たりにしてしまった鎬昂昇さんは、申し訳ないけど、ちょっとこの1時間ほどの記憶を失くしてほしいと思っている。


(5)刃牙さんの乳首はいつから生えてきたか問題

 最後に、「刃牙」シリーズを通しても最重要と言える、この論題に迫りたい。
 皆さんもご存じの通り、『グラップラー刃牙』時代は一例を除き、男性の乳首が描かれていなかった(一例については上でも挙げた無料記事 https://note.mu/higez/n/n5ef236c97d22 を参照のこと)。しかし『バキ』ではいつ頃からか、男性の乳首が描かれることが増えてきたことに、お気づきの方もいると思う。
 
 今回、「刃牙」シリーズにおける「男乳首表現」という人類共通のテーマについて、刃牙さんの乳首を中心に検証していき、出現の時期を『バキ特別編 SAGA』(初出は2002年5月)であると特定したいと思う。
 
 早速だが、こちらが刃牙さん初の「乳首出現シーン」だ。

 右画像、刃牙さんの脱衣シーンで、うっすらと乳輪のラインが現れている(一度コピーしてスキャンしていますので、わかりづらい画像ですみません。各々、手元の『SAGA』でお確かめください。)。左画像では乳首の存在までわかるように二重丸で描かれており、刃牙さんが乳首へのかすかな刺激によって敏感に感じている様子が描写される。
 ご存じの通り、この後の「刃牙」シリーズでスタンダードになっていく乳首表現は、右画像のような「細い線で乳輪を描く」もの、私が提唱している専門用語で言えば、「スタイリッシュ悟空」である。

 『バキ』本編で刃牙さんの乳首が初めて描かれるのは、やや遅れて、2002年9月のことになる。

 左画像は『バキ』通常版16巻に収録されているが、雑誌初出は2002年9月5日となる扉絵で、「乳輪の中にトーンを貼る」表現での乳首が初めて描かれる。右画像は、2002年9月30日発売の『バキ』通常版14巻の表紙で、カラーで刃牙さんの乳輪が初めてそれとわかる濃い色で塗られる(これも一度カラーコピーをしてからスキャンしているため、わかりづらくなりました。14巻表紙は各々ご確認ください。また、もしかしたら14巻の表紙になる前に、『週刊少年チャンピオン』などで先に掲載されていた絵かもしれませんが、これについて調べきれませんでした。)

 『SAGA』から、この二つの乳首出現まで、つまり2002年6月から9月までの間、本編の刃牙さんに乳首が描かれなかった、というわけではなく、単純に、刃牙さんが脱衣して胸をあらわにしているシーンがない。よって本編での乳首出現は、表紙と扉絵が初出となっている。
 表紙・扉絵でなく、マンガ部分で刃牙さんの乳首が描かれるのは、『SAGA』以降で刃牙さんが初めて服を脱いだ場面、つまり『バキ』通常版18巻の「病院だよゥッッ」シーン(雑誌初出2003年3月6日)になる。

 とはいえこの後も、乳首表現がすぐに定着するわけではなく、刃牙さんが裸で、乳首が見えていてもおかしくない場面でも、乳首が消えてしまうことが多い(たとえば『バキ』通常版16巻の表紙)。この時期の乳首描写は安定していない。
 刃牙さん以外の男性キャラクターの乳首については、『バキ』通常版23巻、大擂台賽のビスケット・オリバ脱衣シーン(雑誌初出2004年2月5日)あたりから描かれ始めるが、これも、同じキャラクターでも消えたり現れたりする。刃牙さんと同じで、なかなか乳首描写が安定しない。板垣先生の中でも、乳首に関して迷いがあったのだろう。

 以上のように、「刃牙」シリーズで「男の乳首が現れた時期」は特定できたと思うが、「男の乳首が見える角度と明るさならば、だいたい描かれる」ようになるまでは、『範馬刃牙』での乳首表現の定着を待たなければいけないだろう、というのがここでのひとまずの結論だ。今後の研究成果を待ってほしい。グラップラーの皆さんからの、「この時期ではないか」「金田が指摘しているページよりも前に、あったよ! 男乳首が!」というご意見も歓迎だ。

※「刃牙」の男乳首表現については別稿も予定しています。お楽しみに!

***

 これまで熱論(かた)りそびれていた、『バキ』5つの小ネタ・大ネタ・乳ネタ、いかがだっただろうか。「刃牙さんはともかく、克巳に偏りすぎでは?」と思った方がいるかもしれないが、今回とりあげた2つのネタだけでも、他のキャラクターとは鮮度が違うし、注目せざるを得ないことが明らかだと思う。伊達に、登場した瞬間にラガーメンを半殺しにしたり、ドリアンに半殺しにされたりしていない。そんな、桜にさらわれちまいそうなところも含めて、来年度も克巳を愛でていきたいと思う。皆さんも、私のことはいいので、克巳の応援をよろしくお願いします。

※次回の「乙女の聖典」更新は4月1日または2日の予定です。ちょっとしたビッグ?ニュースも予定しています。

※よろしければ「スキ」を押してみてください。ランダムで「刃牙」に関連する言葉が出てきます。セルゲイが出たら今日の運勢は大吉です。

(おわり)(その19へつづくッッ)

(その19)(餓狼伝)板垣恵介『餓狼伝』をBLマンガだと思って読みはじめたら乙女ゲーだった

↓『餓狼伝』読んでないから興味ないよって方は…

(その22)(範馬刃牙その1)ドキッ!男だらけの最凶プリズン 囚われの美少年は甘露に濡れて 乙女の聖典~女子こそ読みたい「刃牙」シリーズ

 金田淳子マガジン【月額540円】作りました! その月に更新された有料記事を全て読めますが、これまで通り1記事100円で売っていき、月3~4記事予定なので、マガジンに登録してもお得ではないです! 斬新!


(その18)愚地克巳と別れたドイルは一日百回正拳突きの練習をしていると思った?

↓ 世界初(?)のロフトベッド礼賛記事、よかったら読んでね!(別のサイトに飛びます)
https://www.kanejun.net/entry/2019/03/19/221531

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

サポートして頂いたお金は、今後の「刃牙」研究や、その他の文献購入に使わせていただきます! もし「これを読んでレビューしろ」というもの(刃牙に限らず)があれば教えてください。

スキの力こそサンボの力だ ハラショー セルゲイ!!
76

金田淳子

金田淳子。やおい・ボーイズラブ・同人誌研究家で、フェミニスト。在野武将。共著に二村ヒトシ・岡田育・金田淳子『オトコのカラダはキモチいい』(KADOKAWA、2015年)(増補文庫版2017年)など。はてなブログもやっています。https://www.kanejun.net/
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。