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ライティング指導で見逃しがちな点

英語を教えていると、必ず学習者のライティングを添削する機会があります。その際に、何を重視するか、どのような種類のフィードバックを与えるか、等を考える必要があります。ここでは、事例を元にどんな視点でライティングの添削やフィードバックをすべきかについてまとめてみます。

どのようなフィードバックが考えられるか

I went to watch a movie. It is Slam Dank. I bought popcorn. It was a lot of fun. They are very cool. I want to play basketball more. I want to practic harder.

筆者が適当に作成

この英作文に対して、どんな添削やフィードバックが考えられるでしょうか?以下では、3点を紹介します。

視点①:正確さ

まずはじめに思いつくのは、文法や綴りのミスなどのエラーの訂正です。語彙の使い方や一部のスペリングなどが間違っています。

例を挙げると、Slam Dank は誤りで、 Slam Dunkが正しいです(dankはジメジメしたという意味の形容詞)。また、practicはpracticeが正しく、映画を見に行くはgo to see を使います。映画館で映画を『見る』はseeを使う一方、自宅のテレビやモニターで観る場合にはwatchになります。観た映画の話なので、It is Slam Dunk. よりは It was….と過去形にすべきでしょう。これらを修正すれば、文法・語法的にはエラーのない英文になります。

正確さを高める訂正フィードバック

フィードバックのやり方としては赤字で直接指導者が訂正、全体を書き直してモデル文として示す、赤線を引いて気づきを促す、観点を明示して生徒同士でのピアフィードバック&リライト活動、などが考えられます。

しかし、これだけでよいのでしょうか?文法・語法にばかり気を取られていると、重要な点を見逃しがちです。視点①のみでは、ライティングをまるで文法テストとして扱ってしまっています。一文一文は正確でも、文章としては、もう一歩欲しいことに気づきます。

視点②:文のつながりとまとまり

この英作文は、致命的文法ミスがありません。正確さのフィードバックは不要なほどです。しかし、内容をよく見てみると、文と文とのつながりや、文のまとまりがかなり弱いことがわかります。

文と文とのつながりは、結束性(cohesion)とも呼ばれます。前の文の内容を受けて次の文が繋がっていっていることを示します。また、文のまとまりは、一貫性(coherence)とも呼ばれます。全体として話題が逸れ過ぎることなく、収まっていることを示します。

つながりの問題点

I bought popcorn. It was a lot of fun. They are very cool. 

3-5文目

3〜5文目だけを抜き出すと、違和感が際立ちます。4文目I was a lot of fun. の It が映画を示しているはずなのに、その直前で現れているのはポップコーンです。また、4文目のTheyが唐突に現れています。意味を少し考えれば理解出来なくはないですが、もっと繋がりを意識した代名詞(it や they)の使い方をすべきです。

まとまりの問題点

文章全体をマクロな視点で見ると、3文目のI bought popcorn. だけが浮いてしまっています。映画館でポップコーンを買って映画を観たのでしょう。しかし、4〜7文目では、映画を観ての感想が書かれており、食べ物の話はやや話題から逸れている印象を受けます。

つながりとまとまりを高めるフィードバック

以上の点を踏まえてフィードバックとしては、代名詞が何を示しているのかを問いかける、赤線を引いて気づきを促す、代名詞の説明と指導を直接行う、観点を明示して生徒同士でのピアフィードバック&リライト活動、などが考えられます。元の文を活かして、The movie was a lot of fun. The characters are very cool. などと書き換えたモデル文をフィードバックするのもいいでしょう。ポップコーンの話は必要か?と尋ねるのも有効です。

しかし、これだけでよいのでしょうか?もう一点、重要な点を見逃しがちだと思います。

視点②:内容の充実

最後の点は内容です。どこで映画を観たのか、誰と観たのか、映画のどの場面が印象に残ったのか、なぜもっとバスケ練習したくなったのか、等を読む側としては疑問に感じ尋ねてみたくなります。また、何か表現しきれなかった思いが背後にあるはずです。

フィードバックとしては、Can you tell me more about this? という方向性の発問をしたいです。Where? Why? で問いかけたり、Did you go to the movie with your friends? Which part was the most exciting? などヒントとなる表現を使って、より内容を引き出すための質問を尋ねることは、内容の質を高めライティングの動機づけも高められる一つのフィードバックになります。

まとめ

ライティング指導での視点を、事例をもとに考えてみました。兎角、添削では文法的正確さに意識が行きがちです。つながりやまとまり、内容の質に関しては、見逃しがちだと思います。

文法間違いの指摘ばかりで学習者がやる気を削がれるということがないように、学習者の表現したいことを汲み取るようなフィードバックも大事ではないでしょうか。

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