もし、本格的に秋春制が導入されたらアマチュアや学生のサッカーはどうなるのだろうか?ということをざっくりとシミュレートしてみました、というお話

突然ですが、ACLの決勝って2月からGWに変更されてたんですね?Jの日程が出て、初めて知りましたよ。まあ以前からの既定路線とは思っていましたが、これは完全にAFCはUEFAにスケジュールを合わせに行ってますね。というのも、23年のACLは9月開幕5月閉幕という欧州CLとほぼ同じ日程になりましたから。おそらく代表のスケジュールもUEFA寄りの日程になるのはほぼ確実でしょう。
それを見込んで昔からシーズンの秋春制への移行のタイミングを図るべく、協会主導でいろいろと議論が交わされてましたが、皆さんよくご存知の通り雪国と言われる北日本や日本海側のチームの扱い等の問題で一向に議論が進まなかったのが現状です。しかし、ACLの日程が完全に「秋春制」に移行してしまった以上、遅かれ早かれそれに準ずるしかないと個人的にはそう思うのです。
とはいえ、私も雪国チーム(札幌)のサポでもあるので、秋春制への移行には賛成ではなかったのですが、実は今は考え方が変わりました。秋春制とは言っても、ヨーロッパでもウインターブレイクや冬の移籍期間があるわけで、日本でよく指摘されている「真冬にシーズンはできないだろう」という論点も、このウィンターブレイクをうまく使えばそこそこやれるんじゃないの?という発想になりました。つまり「今のタイムテーブルを変更せず、開幕閉幕の時期だけをずらせばいいのではないか」ということです。
まあ、たしかにJリーグはそれでも全然問題ないと思うのです。というか、逆に代表やACLのスケジュールに合わせる方が選手補強や強化、あるいは代表のスケジュールも、さらには海外組と国内組とのコンディションの齟齬も少なくなり、秋春制にした方がなにかとメリットが多いと思われます。そういう意味でもアジアのスケジュールが変わる以上、Jリーグもそれに合わせることにそう大きな問題はないでしょう。
しかしJリーグのような、商業ベースであったり代表を視野に入れたサッカーというのは全体のほんの数%しかなく、それ以外はアマチュアベースであったり、または学生のサッカーが大多数を占めるのです。特に日本の学校のタイムテーブルが4月始業3月終業という以上、8月9月をスタートするタイムテーブルを導入しようとすると、そのタイムテーブルとは全く真逆となってしまうのです。その齟齬をどうやって埋め合わせるのかという問題が発生しますし、そもそもJレベルでも問題となった雪国のリーグやチームが秋春制に切り替えたとして、果たして今までのようにちゃんとリーグを運営していけるのでしょうか?という疑問にぶち当たります。
ということで、今回はその辺りをざっくりですが、シミュレートして考えてみようと思います。

JFLは意外といける?地域リーグは?

まずはJFLから。JFLについて考えないといけないのは、開幕と閉幕の時期をどうするのか?ということです。通常、3月に開幕して前期6月末くらいに終了。1週間のインターバルを挟んで後期がスタート。7月下旬から約1ヶ月程度のインターバルがあって、閉幕は11月の下旬から末となっています。前期は特に問題ないかと思うのですが、後期についてはいつ始めるかによっては真夏の暑い時期に試合を組まないといけなくなります。7月8月を避けた上で仮に日程を組んでみます。2023年は9/3が9月の第1週となるので、そこから15節(15節)となると12/10が最終節となります。さすがにちょっと厳しいですね。でも現在のJFLは8月の第3週から再開しているので、それに合わせて組んでみると8/20から15週先は11月第4週である11/26となり、ちょうどいい日程になります。仮に予備の日程を挟んだとしても12月第1週なら試合をするにもギリギリ大丈夫でしょう。あとは、春先と秋の後半の試合を東北などの降雪地帯での試合を避けて、逆に夏場は九州など暑い地域の試合をできるだけ減らして、選手の負担を軽減させる配慮をすればなんとかなるのではないでしょうか。これならJFLは、仮に秋春制になったとしても日程は組めそうですね。

しかし、問題はそれより下のリーグ、地域リーグです。地域リーグはJFLのようにそう簡単にはいきそうな気がしないのですが…。まあ、とりあえずはシミュレーションしてみましょう。
現状のリーグ戦。各地域によって参加チーム数やレギュレーションが違うのですが、秋春制で影響を被ると思われるのは北海道と東北の2地区ではないでしょうか。もちろん降雪地帯を含む北信越や中国も影響を受けるでしょうが、前述の2地区と比べるとまだ小さいと思われるので、その2地区の日程がうまく組めれば他の地区も問題ないでしょう。ということで、北海道と東北の日程のシミュレーションをしてみます。
まずはレギュレーションの確認から。北海道リーグは8チームのホームアンドアウェイ開催の全14節。東北リーグは通常は10チームの同じくホームアンドアウェイの全18節。で、今からシミュレートする日程は、出来れば前期と後期の間にうまい具合にウインターブレイクを挟みたい。それに叶うような日程が組めるのなら、多少の不平不満はあるでしょうが秋春制に移行できるのではないでしょうか。ということで、実際にシミュレートしてみます。
まずは東北。現状、開幕は4月の第3週辺りから10月初旬くらいまでの日程となっています。しかしこれは、あくまでも現在のタイムテーブルに添ってのものですので、現実的にいつまで試合が可能なのか?を推測ってみます。参考にするのは同じ東北地区の東北地区大学リーグの日程です。ここ2、3年はコロナの関係で変速となっていますが、通常ならば11月の第2週から3週くらいまでは開催しています。これを参考に11月第2週までに「前期」日程を、翌4月第3週から「後期」日程をそれぞれ開始と終了に設定してシミュレーションしてみます。
まず、前期に当たる秋の日程から。仮に11月第2週をリミットにして逆算をしていきます。2023年の11月第2週が11/12なので、その日を第9節に設定してそこから連戦で日程を組めば、第1節は9/17の9月第3週となり、ちょうどジャストな日程になります。問題は秋の時期には国体(来年から国民スポーツ大会)と全国社会人サッカー大会の日程が被ることです。ただ国体、いやスポ体(う〜ん、やっぱなんかしっくりこないな…笑)の成年男子が今後成年女子と隔年開催となるので、スポ体開催週を丸々空けるのが得策なのか?と個人的には思うのです。なので、現在設けられている国体用の空きの週は割愛することにします。さらに全社にしても本格的に秋春制になってしまうと、この時期に拘らなくても良いのではないか?ということにもなるかも?と想定されるわけですが、これはあくまでも国体、いやスポ体のリハーサル大会なので、やはりこの時期に開催すべきでしょう。
ということで、全社は今まで通り10月の第2週か3週に組まれると想定しておきましょう。ということで、ここに全社開催のための1週分、さらに天皇杯が10月あたりに入ってくる可能性を考慮してもう1週、合計2週のインターバルを設けておくのがいいでしょう。仮にそうなっても9月の第1週からのスタートになるので、そんなに問題はないでしょう。もう1週、あるいはギリギリ2週後ろに伸ばしても仙台や福島なら試合は出来るので、ホームゲームの調整をしたり、集中開催なども可能なので秋はなんとかなりそうですね。
続いて後期日程。4月の第3週ということは、2024年のカレンダーでは4/21になります。GWの連休中の祝日にもう1節組み込むことにすると、6月第2週の6/9が9週目、つまり第18節になります。こちらも1週前倒しにして、仙台か福島開催にしてしまえばさらに日程の都合もつけやすくなります。そうすれば、なんとか秋春制に合わせたスケジュールは組めそうです。
この要領で北海道もシミュレートしてみると、北海道は東北より前後期2週ずつ少ない全14節で、東北よりも秋春とも2週から3週くらいそれぞれ短いイメージです(大学リーグも5月初旬から10月末くらいまで)し、集中開催も秋は帯広、春は室蘭か苫小牧(もしくは札幌開催も可能?)ならば、さらに各1週づつ前後ずらせるでしょうから、秋のスタートと春のラストを東北と同じにしておけばおおよそ問題ないのではないでしょうか。意外と無理なくタイムテーブルが組めてしまいましたね。北海道と東北が問題ないのであれば他の地区は間違いなく大丈夫でしょうから、大まかなリーグ日程についてはまずは問題ないでしょう。

大事なものを忘れてはいないか?

と一見何の問題もなさそうでしたが、実は密かに大問題が発生しているのです。先程、全社と天皇杯の本戦の日程についてはシミュレートの段階でちゃんと加味しましたが、それぞれの予選の日程については加味していませんでした。これはまずい、ということで予選の日程もこの中に組み入れていきましょう。
全社の予選は早いところでは6月(中国の5月は一旦無視します)から遅いところでは北海道や東北の8月中旬から下旬に行われます。大体の地域は7月開催が多いです。その日程であれば、今想定しているリーグ日程で特に問題はないでしょう。リーグ戦に予選の日程が絡む可能性がほぼなく、リーグ閉幕後のブレイク中におそらく開催されることになるでしょうから。ということて、全社予選については特に問題なさそうですね。
問題は天皇杯です。本戦の開催時期をどうするのかにもよるのですが、近年では昔みたいに「天皇杯の決勝は元日」という感じでもないと思いますし、もっというとACLが秋春開催になった以上、カップ戦の出場チームが1月に決まるというのも不自然なことになります。なので、実際に秋春制に移行するのであれば必然的に日程自体の大幅な変更は免れないと思われます。
ということで、天皇杯の日程をACLと同じ9月開幕、5月(6月)決勝と仮定してみます。ちなみに私が仮定した天皇杯の大まかに日程は、1回戦〜3回戦or4回戦までを年内に、それ以降を翌年に行うというものです。2回戦以降は平日開催でリーグ戦の日程に直接影響がないので、1回戦の日程をいつにするか?だけを考えればOKということになります。天皇杯の初戦を仮に9月第1週に設定すると、予選はそれ以前に行わないといけなくなります。必然的に8月か、7月になり全社予選の日程と被ります。まあ、ここの調整はある程度可能でしょうし、なんなら天皇杯の予選をもっと前倒しにすればなんとかなりそうかと思います。これも日程はタイトになりそうですが大丈夫でしょう、元々日程がタイトなのには変わりないですからね…(笑)

大荒れが予想される地域CL…

そして、最後に残ったのが地域チャンピオンリーグです。実はこれが一番問題で…。というのも現在のレギュレーションで認められている「全社賭け」と呼ばれる、リーグで優勝できなかったチームが全社で上位に入り、地域CL出場権を獲得するといういわゆる敗者復活制度が、日程が大きく変わることでなくなってしまう、というよりそれ自体意味がなくなってしまうからです。そうなると現状、12チーム開催にするために各地区優勝の9チームと全社上位3チーム、あるいは各地区の輪番制で3チーム追加する、今のレギュレーションを続けるのか?もしそうするのなら、残りの3チームはどうやって決めるのか?もしくは各地区優勝9チームだけのレギュレーションに変更するのか?などの問題が発生します。が、ここではあくまで「仮」ということなのでそういう細かいレギュレーションには拘らず、あくまで日程のことだけに注目して2週分(便宜上1次ラウンドと決勝ラウンドの間のインターバルをなしとします)の日程を設けることにしましょう。
東北や北海道のリーグ終了は6月の第2週なので、1週だけインターバルを挟んだとすると、6月第4週と翌週の7月第1週を地域CLの日程になります。そうすると、その後に全社予選の日程を組むことも可能になるのでこれでほぼ全ての日程が埋まったのではないでしょうか?思ったよりもスムーズに「日程だけ」ならうまく組めたように思えます。もちろん異論はあるでしょうが、みんながみんな納得できる日程など存在しないのでこんな感じのタイムテーブルを叩き台に、もし秋春制に移行した場合のアマチュアリーグのタイムテーブルを構築していく必要があるのではないでしょうか。

続いて大学や高校・ユース年代ですが、こちらは社会人と違って無理にJの秋春制に合わせなくてもいいのかな?と思います。というのも、学生の場合は年度始まりが4月で年度終わりが3月というのが制度的に変更されない限り、学生のシーズンは春秋制でも構わないと考えるのです。それに、大学サッカーだと夏に総理大臣杯、冬にインカレがあり、また高校・ユースでは夏は高校総体とクラブ選手権、冬に高校選手権があるうえ、プレミア参入戦やプレミアチャンピオンシップが行われます。それに合わせて春秋のリーグ日程もしっかり構築されてますので、シーズン自体はそのままでもOKではないでしょうか。ただ、そうしてしまうと次に記すような問題が発生してしまうのです。

選手登録についても見直す必要が…

それは、高校や大学を卒業した選手たちが卒業時期とリーグの開幕時期とのズレによる、試合出場機会の一時的消失という問題です。どういうことかというと、3月に卒業したはいいがその時期はリーグの途中、おそらく後期日程となります。チームがある程度仕上がっていたりする中に、新卒の選手が入って果たして試合に出られることができるのか?場合によれば丸々半年、棒に振ってしまうのではないか?という心配です。
これに関しては、こういうアプローチをしてはどうでしょうか。卒業してから秋の開幕までの間、学生と社会人登録の二重登録を可能にするのです。今でもJ内定者に限ってではありますが、特別強化指定選手として学生の試合とJの試合、どちらにも登録、出場が可能です。それをJ内定者以外の全ての選手にも適用すれば、仮に進路予定のチームの事情から出場機会に恵まれなかったとしても、既に卒業した学校のチームの公式戦に出場することも可能となり、その間の試合感覚や経験、コンディション調整が容易となり、その間を無駄に過さずに済みます。逆に言うと、高校3年や大学4年の秋から次のチームに登録、試合出場することも可能なので、卒業後新しいチームでのプレーにもスムーズに対応でき、個人としてもチームとしてもプラスになることでしょう。チームにとっても選手にとってもその方が都合がいいと思うのです。
もちろんこれには学生側の理解と協力が必要です。大学サッカー界はまだ比較的容認してもらえるとは思いますが、高校サッカー界は高体連の存在がある以上、そう簡単にはいかないでしょう。特にこの時期に開催される高校総体については、まず間違いなく出場は不可でしょう。しかし、プレミアリーグやプリンスリーグといったJFA主催の試合については何の障壁もなく登録可能で、出場も問題ないでしょうし、それだけでも十分ではないでしょうか。逆に、高校3年生の有望選手が「最後の選手権」への出場をを回避するというケースが出てくるかもしれません。それはそれである意味仕方ないことかもしれませんし、もっと言うと全国の大多数のサッカー部にいる高校3年生は夏の高校総体の、それも5月や6月に終わる予選で引退する事を考えるとそれもアリと捉えた方がいいのではないでしょうか。ほとんどの高校生の運動部の引退時期が夏の高校総体、もしくは夏の甲子園大会である事を考えるとサッカーの方が実はごく少数派なのです。サッカーにおいてもその時期に引退するというのが一般的となって、高校総体が「高校生活最後の大会」として盛り上がるのも悪くはないかもしれませんね。まあ、そんなことすると某Nテレさんがいい顔しないでしょうけどね…(笑)
シーズンの終了と学生選手としての終了の時期がずれるのをどう捉えるかにもよるのですが、やはり学生スポーツは学校のタイムテーブルを重視したうえで、個人として次のステージにどのように進んでいくのか、という選択の余地を残す方がいいかな?と思います。今年の選手権で話題となった神村学園の福田くんのように高校卒業と同時に海外、しかも有名クラブと契約するような選手が今後も現れるかと思います。その時に「日本の学校は4月始業だから…」とか「選手権があるからチームに合流するのは来年まで待って」とかも言ってられなくなると思うと、どちらにも対応できるような制度にしておく方がいいのではないでしょうか。

秋春制は全然不可能ではない、かも…

以上、もし今後Jリーグが秋春制に変更となった時、大きく影響を受けるであろうJFL以下のアマチュアと学生サッカーの日程などについてざっくりですがシミュレートしてみました。冒頭にお話ししました通り、秋春制と言っても単純に開幕と閉幕の時期を入れ替えれば可能じゃないかと思ってはいても、実際Jリーグ以外のカテゴリーにもその暴論が通用するのかちょっと自信がなかったのです。今回、実際にシミュレートしてみて感じた事は、なんとなくですが実現可能なレベルなんじゃないかという結論に達しました。それが可能になった要因として考えられるのは、人工芝グラウンドの普及によって今まで雪国では冬の間は屋外で練習できなかったという常識が、雪かきさえ出来れば屋外での練習も出来なくはない環境となった物理的変化要因、Jリーグ以前の日本リーグ時代に大多数を占めていた企業チームが激減した代わりに、企業の枠に捉われないクラブチームがアマチュアチームの大多数を占めるようになった社会的変化要因、さらに高体連チームにも枠を広げたJFA主催の公式戦の増加に伴い、高体連とJFAのどちらの公式戦も選択できるようになった選手、指導者(場合によれば保護者)たちの心理的変化要因の3つの変化要因が挙げられるのではないでしょうか。
そしてこれらの変化要因がいずれも一気に押し寄せてきたのではなく、どれも長い時間をかけて徐々にサッカー界に浸透してきたものであり、そしてそれらが全体的に浸透してきた今まさに、新たな変革の時がやってくるのかもしれません。そしてその大きな変革が、もしかすると実は案外すんなりと受け入れらるかもしれません。急激な変革は大きな反発や軋轢を生みます。そのような変革も時には必要でしょうが、出来ればそんな軋轢を生じさせるような無理な変革は避けたいものです。そんな軋轢を生じさせてしまうくらいの大問題であり、にもかかわらず長年に渡って議論されているようで実はあまり深く議論されていなかったようにも思える秋春制。私自身「秋春制はある種の『宗教論争』」という持論者であるので、秋春制について頑なに拒絶感を抱く方も多いことは十分に承知しています。しかし今回やってみた日程のシミュレーションや卒業後の登録問題、さらにさまざまな環境や社会的な変化要因などを通じて、改めてじっくりと秋春制と向き合い「秋春制も意外とありなんじゃね?」とちょっとだけでも思ってもらえたら嬉しいです。

おそらく、遅かれ早かれ日本のサッカーカレンダーが秋春制に変わるのは間違いないと思います。その時、少しでも心理的障壁を低くしておくことが大切ではないかと、そう思うのです。

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