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魅力的な人にリーダーに「なってもらう」という発想が必要だ

 とてつもない人間的魅力を持つ人と出会えるのは幸せなことだ。そういう人との出会いが「人を尊敬する」という感覚を教えてくれる。そして「自分は自分らしく生きれば良い」という気持ちにさせてくれる。

 そういう人は少ないながらも、確実に存在している。彼らが組織のリーダーになったら、その組織は強い。しかし、そういう人がリーダーにならないという現象が起きている。組織が大きくなるほど、立場が上になるほど、この傾向は強くなっているのだ。

リーダーになるべき人が、リーダーになろうとしない。これは裏を返せば、リーダーになるべきでない人がリーダーになるということでもある。これは下で働く人間である私たちにとって深刻な影響をもたらす。なぜこのようなことが起きているのだろうか。

かっこいい先輩

 かつて民間企業で営業マンだった時代、驚異的な人的魅力を持つ先輩がいた。どれくらい素敵な人か、ぱっと思いつくだけでもこんな感じだ。

・努力家
→ 楽しんでいるように見えるくらい努力を惜しまない。努力を隠さず、ひけらかしもしないで、当然のことのように話す。この人がこんなにやっているんだから年下の自分もがんばらなきゃ、と自然と思えてくる。

・有言実行
→ 〇〇がんばる、といったことを数年後も本当に続けている。

・基本が笑顔
→ 目上なのに話しやすい。基本が笑顔なのでまじめな時とのメリハリがある。そして笑顔が超さわやか。

・話がうまい
→ コミュ力の極み。話が面白いのに、こっちの話も聞いてくれる。

・上司とのコミュニケーションもうまい
→ 目上の人ともメリハリつけて絶妙な距離感でコミュニケーションが取れる。当時はわからなかったけど、今はそれがどれだけすごいことかわかる。

・運を持ってくる
→ 先輩が同行してくれた日、普段全く話してもらえないお客さんと、初めてしっかりと仕事の話ができた。先輩はそれを笑顔でほめてくれたのを今もはっきりと覚えている。

・外見までかっこいい
→ 顔立ちもかっこいいが、髪形や服装もおしゃれで、声もかっこいい。

 いわずもがな、営業マンとしての成績もよく、社内の誰からも好かれている。あっという間にこれだけ書き出せるくらい魅力があるというのは改めて驚異的だ。こんな人が組織を率いるリーダーになったら、その組織は間違いなく強くなる。こういう人こそが、リーダーになるべき人なのだ。 

リーダーの二極化

 しかし、今の日本のリーダーは二極化しつつある。
①大きな決断を避けようとする人
②人の意見に耳を貸さない人

このどちらかだ。

 あなたの所属する組織のリーダーは、どのような人だろうか。①でも②でもなく、私の先輩のような、高い人間的魅力を備えた人だろうか。

 これはリーダーを批判しているのではない。なぜならこれは、私たちが導いている、必然的なことだからだ。

私たちが作っている状況

 労働者の権利は拡張し、会社に対する不満を声に出して良いのだという雰囲気は広がっている。また、価値観の多様化により、社員の誰もが賛成する考えというものは想定できなくなってきている。つまり、リーダーが大きな決断すれば、確実に不平不満が目に見える形で出てくることになる。

 それは良いことでもあるが、副作用がある。このような状況でリーダーになろうとする人は、先ほどの①か②のどちらかになりやすいということだ。

つまり①と②に言葉を補うと、
①共感力はあるが、それゆえに不満の声を無視できず、大きな決断を避けようとする人
②人の意見に耳を貸さないくらい共感力が低いので、自分のやりたいことを押し通す人
のどちらかがリーダーになりやすいということだ。

①は「人が良い」とは言われるものの、大きな決断ができないので私たちの仕事の充実感はなくなっていく。
②はダイナミックな仕事ができるが、リーダーが専制君主化し、仕事が息苦しくなっていく。

リーダーになるべき人

 ①も②も、下で働く人間を苦しめることになる。だから
③共感力があり、人の意見に耳を貸しながら、自分のやりたいことを実現していく人
こそがリーダーとなるべきだ。これはただの理想論のように見えるかもしれない。たしかに、共感力と、自分のやりたいことをやるというのは同時実現が難しいかもしれない。

 しかしそれを乗り越えることができる、チートとも言える力こそが、「人間的魅力」である。他人から言われたら拒否反応が出るようなことでも、魅力的な人が言えばOKになる、ということは誰しも経験があるだろう。そういう超次元の人間的魅力を備えた人にリーダーになってもらうことが、私たちの仕事を充実させる大きな一手となる。

私たちにできること

 そのためにはまず、私たちがリーダーになるべき人の目に映っている景色を想像しなければならない。上の立場には①か②のような人間がいて、下の立場にはそれに不平不満をあらわにしている私たちがいるのだ。

 このような組織で、驚異的な人間的魅力を備えた人が「リーダーになりたい」と思えるだろうか。それだったら、もっと仕事が充実していそうな環境へ移っていくのが当然だろう。彼らはいつでも、どこからでも求められる人材なのだ。

 ①であれ②であれ、リーダーに変化を求めることはできない。そうであれば、変われるのは私たち自身だ。組織がやると決めたことについては、不平不満を出さずに、みんなで協力してやっていく。私たちがそういう姿勢を、リーダーになるべき人に見せることで、その人がリーダーになる土壌がようやくできるのだ。

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